コンテンツを軸に、見込み顧客を惹きつけ、さらに獲得したリードを育成、顧客化支援までの一連の流れを支援するソリューションを提供する、米・HubSpot。現在、全世界で1万8000社の企業に導入されている(2015年12月現在)。今夏、東京オフィス開設も決まっている、同社のJeetu Mahtany氏とJulie Hogan氏 にインタビュー。彼らが提唱するインバウンドマーケティングの概念について、またこれからの日本市場での戦略について聞いた。
購買者が自らを「Educate」する時代
——HubSpotでは企業が一方的に情報を発信する、従来型のマーケティングとは異なる思想「インバウンドマーケティング」という概念を提唱していると聞く。「インバウンドマーケティング」とは、具体的にどのような考え方なのか。
日本でも「インバウンドマーケティング」という言葉が認知されつつあるが、訪日観光客を対象としたマーケティングという意味で捉えられていると聞く。私たちが提唱するインバウンドマーケティングとは、従来のプッシュ型の「アウトバウンド」と言われるマーケティングと真逆に位置する概念だ。BtoCでもBtoBでも購買者が商品・サービス購入に際し、ネット上で自ら情報収集をする時間は長くなる一方だ。ブロードバンド環境の整備、スマホの浸透で、この傾向は今後も増していくだろう。
こうした環境では企業の一方的な発信では、なかなか振り向いてもらえない。現在、購買者の意思決定の5割以上は自ら得た情報を吟味、検討することで意思決定を下した購買活動と言われている。能動的に情報を収集し、得た情報で自らを「Educate」し、購買の意思を固める現代の購買者に対しては、インバウンドマーケティングが有効である。
——従来とマーケティング環境が変わってきているということか。
アウトバウンドのマーケティングが中心となっていたネット浸透前の社会においては、より多くの発信力を持った広告予算の多い、大企業が絶大な力を持っていた。しかしインバウンドマーケティングが主流となる世界では、中小規模の企業でもアイデアとコンテンツ次第で、大企業にも勝てる時代になっている。購買者が自ら必要とする情報を検索、収集する現代においては、購買者にとって適切なコンテンツを提供できなければ、予算を持つ大企業も立ちいかない状況に陥ってしまう。
商品を中心にするのではなく、あくまで購買者を中心にするのがコンテンツマーケティング、インバウンドマーケティングの基本だ。購買者が持っている課題を把握し、その課題を解決するためのコンテンツを企画・提供する。そしてコンテンツを通じて、購買者が惹きつけられ、さらに購買の意思決定を自ら進めてくれるように仕掛けていくものだ。課題の内容はもちろん、その課題を持つ人のペルソナを理解することも重要で、そのためにはHubSpotを介して収集できる、データの分析も欠かせない。
ここで言うコンテンツとは企業側の視点ではなく、購買者側の視点に立ち、彼らにとって以下に役立てるかを追求したものでなくてはならない。HubSpotはユーザーがどのようなキーワードで検索し、サイトを訪れたのか。どんなコンテンツが閲覧されたのかなどコンテンツの効果を検証し、購買者の求めるコンテンツが何か。マーケターの理解を支援するツールを提供している。HubSpotを使うことで、マーケターはコンテンツマーケティングの教育を受けることができる。私たちは単にHubSpotというツールを売りたいわけではない。このツールの浸透を通じて、マーケティングそしてビジネスのありようを変えたいと考えている。
従来型のオフラインのプロモーションを中心としたマーケティングでは、多額の費用が投じられても、効果が可視化できず、またデータを得ることもできなかった。インバウンドマーケティングはコンテンツを通じて、マーケターが一人ひとりの購買者のデータを得られるようになっている点で、大きく異なる。
コンテンツの種は、社員の中にある
——インバウンドマーケティングでは大量のコンテンツが必要になるのではないか。
コンテンツをつくること自体は決して難しいことではない。購買者の課題を解決するコンテンツは社内に眠っている。マーケターが購買者の課題を把握し、その課題を解決する答えを持っているのがセールス部門か、カスタマーサポート部門なのか、商品開発部門なのか、を適切に判断する方が難しく、そこにマーケターとしての経験が求められる。
単に購買者の課題に応えるだけでは、コンテンツマーケティングの可能性を十分に活用できているとは言えない。例えば、一人の購買者の課題に応える様子をネット上で見せることで、同じような課題を持つ他の購買者も惹きつけることができる。コンテンツの内容に加え、その見せ方にもアイデアが必要だ。
——今後の日本市場でのビジネス展開は。
私たちは日本の市場を大変重視している。2016年の夏には東京に日本オフィスを開設の予定だ。日本にオフィスを構えることで、私たちも日本のマーケターの課題を把握し、その課題に応える新しい解決策やノウハウをこれまで以上に多く提供できるようになると考えている。
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