弁護士が教える、不倫の慰謝料を請求するための10か条

夫(妻)が浮気した。
結婚生活の中でこれほどつらいことはありません。
不倫や浮気は時には家庭生活の崩壊をもたらすほど深刻な問題です。
こうした不倫や浮気で問題になるのは、やはり「慰謝料」ということでしょう。
お金で全てが解決するわけではありませんが、不倫をした配偶者や不倫相手にきちんと責任をとらせるために、しっかりと、そしてできる限り多くの慰謝料を勝ち取りたいと思うのは当然のことです。
しかし、慰謝料も法律的な根拠に基づいて請求していくものですし、相手方と交渉し、場合によっては裁判を起こして請求することも考えられます。
その慰謝料をしっかりと確保するためには、きちんとした方法やポイントを押さえておくことが必要です。
この記事では、そうした方法やポイントを10か条挙げましたので、この10か条をきちんと押さえ、慰謝料を確保するようにしましょう。
目次
- 第1条 とにかく冷静に
- 第2条 証拠を確保しよう
- 第3条 なるべく早く専門家に相談しよう
- 第4条 不倫相手の身元を調査しよう
- 第5条 「相場」なるものにこだわるな
- 第6条 どのような事情が慰謝料の算定で考慮されるか意識しよう
- 第7条 落としどころを決めよう
- 第8条 離婚を考えている場合は、離婚の条件と合わせて考えよう
- 第9条 子どもに対する配慮を忘れずに
- 第10条 自分の意見と気持ちをしっかり伝えよう
第1条 とにかく冷静に
まずはとにかく冷静になること。
単純なことですが、これが不倫(浮気)と慰謝料の問題で最も重要なことです。
将来を誓い合った伴侶に不倫をされ、悲しみや怒りでいっぱいになる気持ちはよく分かります。
しかし、そこであまり感情的にならず、冷静さを保ってください。
怒りのあまり逆上して相手に暴力を振るってしまったり、証拠を破損してしまったりと、冷静さを失ってしまったばかりに誤った行動に出てしまう方が大勢いらっしゃいます。
怒りにまかせて配偶者や不倫相手に対して暴力や脅迫じみたことを行えば、場合によっては重大な違法行為、犯罪行為となり、慰謝料を請求するはずが逆に支払う羽目になったり、あるいは証拠を壊してしまうようなことになれば、将来裁判になった時に証拠が無いばかりに不倫の事実を認めてもらえず泣き寝入りすることも考えられます。
とにかく冷静になること
常にこれを意識して問題に取り組んでください。
第2条 証拠を確保しよう
第2条から具体的な方法について説明しますが、まずは証拠を確保して、きちんと不倫の事実を証明できるようにしてください。「何となく怪しい」とか「勘でわかる」という程度ではダメです。
どのような証拠をどのようにして集めたらいいかについては、下記のURLの記事を参照してください
慰謝料は相手に対して根拠を示して請求し、また裁判で請求していくときも、証拠によって具体的な不倫の事実を立証していく必要があります。
まずはきちんとした証拠を押さえていくことが大事です。
逆に言うと、こうした証拠が無いまま配偶者や不倫相手に問い詰めたり慰謝料を請求したりしても、シラを切られてしまえばそれまでです。
今後相手は警戒して二度と尻尾をつかませないでしょう。そうなると不倫の証拠を押さえることはほぼ不可能になります。
まずは証拠を押さえることが不倫の慰謝料を請求する第1歩となります。
第3条 なるべく早く専門家に相談しよう
証拠を押さえたら、なるべく早く弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。
慰謝料の請求は、相手と交渉したり裁判で訴えたりして請求していくものですから、どのような手順で請求していくか、どのくらい請求するか、(手持ちの証拠や事実関係から)そもそも法的に慰謝料を請求できる事案なのか、もろもろ専門家のアドバイスを得るようにした方が良いでしょう。
第4条 不倫相手の身元を調査しよう
(1)不倫は、法律的には「共同不法行為」といって、基本的には浮気をした配偶者と不倫相手が共同で違法な行為をしたということになりますので、もちろん不倫相手にも慰謝料が請求できます(但し、後記の通り例外があります)。
しかし、不倫相手がどこの誰かがわからなければ、慰謝料の請求のしようがありません。
また、不倫相手には慰謝料を請求せず、単に配偶者だけに慰謝料を請求する場合でも、相手の名前や住所、職場が分かっている方がより説得力が増し、有利になります。
(2)ではどうやって不倫相手の身元を調べていくかというと、まずは浮気の証拠にそうした情報が載っていないかチェックします。例えばラインやメールに相手の顔写真や名前等があるかどうかです。
手持ちの証拠では相手の身元が分からない場合は、興信所に依頼して調査することになります。
ただし、必ず調査が成功するとは限りませんし、調査方法や時間によっては高い費用がかかることも考えられます。
手持ちの証拠や現在の状況から、どこまで不倫相手の情報を調べられそうか、その点も一度興信所で相談してみることをお勧めします。
(3)なお、不倫相手に慰謝料を請求する場合ですが、不倫相手が例えば配偶者から「未婚者だ」と騙され、それを信じてしまったことにやむを得ない事情がある場合は、不倫相手にはそもそも「不倫」であるということについて故意も過失もないので、法的に慰謝料を請求できませんのでご注意ください(配偶者には請求できます)
第5条 「相場」なるものにこだわるな
(1)慰謝料を請求する上で最も気になる点は、「どのくらいの金額がとれるか、相場はどのくらいか」ということだと思います。
しかし、慰謝料とは、その名の通り、精神的苦痛に対して「慰」め、「謝」るためのお金ですから、法律や裁判において明確な基準があるわけではなく、いろいろな事情を考慮してケースバイケースで決まります。
裁判を通さず当事者同士で交渉して決める場合はなおさらそうです。
有名人の不倫問題のように何億円という慰謝料が支払われる場合もあれば、数万円程度で収まることもあります。
ですから、厳密な「相場」というものは存在しません。
(2)ただ、不倫による慰謝料の支払いが命じられた過去の裁判例はたくさんあり、それらによると、だいたい50万円~300万円の金額の場合が多いと言われています。
したがって、法律家の間では、非常に漠然としたものですが、そういった意味での裁判上の「相場感」というものは存在します。
しかし、そうした裁判例もあくまでのその事案限りの判断ですから、自分の場合も同じ結果になるとは限りませんし、しかも上記の通り、やはり幅があるので、具体的に「○○円」と想定することもできません
また、これはあくまで判決で命じられる場合の話しですので、裁判を通さずに当事者間の交渉で決める場合は、過去の裁判例にあまり捉われることなく決めることもできます。
ですので、こうした裁判例も重要な点ですが、それだけにこだわり過ぎるとかえって適切な解決が出来なくなりますので、相手に対する請求金額や最終的に応じる金額を決める際の考慮事情の一つとして留めておくのが良いかと思います。
第6条 どのような事情が慰謝料の算定で考慮されるか意識しよう
(1)慰謝料を請求するときは、単に金額だけを示すのではなく、根拠や理由を示さなければいけませんので、どのような事情が慰謝料の金額に影響を与えるか意識し、それに沿って理由を構築する必要があります。
第6条で、慰謝料は「いろいろな事情を考慮してケースバイケースで決まる」と説明しました。
では、具体的にどのような事情が考慮されるかというと、これもケースバイケースですが、一般的には、以下のような事情が考慮されます。
①不倫が始まった時の夫婦関係
②子どもの有無、年齢
③不倫の内容、期間
④不倫発覚後の状況
⑤不倫によって夫婦及び子供に与えた影響
(2)まず、①不倫が始まった時の夫婦関係ですが、これは夫婦関係が円満だったか、破たんしていたかということです。
なぜ不倫が許されないか、なぜ慰謝料の原因になるかというと、一言でいえば、それによって夫婦関係を破たんさせたからです。
とすれば、不倫が始まった当時、別の原因ですでに夫婦関係が破綻していたような場合はそもそも慰謝料の原因にはなりませんし、破たんとはいかなくとも冷却していたような場合も、結果的に不倫が夫婦関係の破たんに与えた影響は少ないと言えるので、それだけ慰謝料の金額は少なくなります。
次に②について、一般論ですが、子どもがいない夫婦より子どもがいる夫婦の方が、不倫によって被る家庭環境の被害が大きいと考えられるので、慰謝料の算定に影響を与えます。
次に③の不倫の内容、期間も重要な要素となります。不倫の期間や回数が大きければ大きいほどより違法性は強い不倫となるので慰謝料は増額する要因となります。
内容で見ても、例えば数時間程度ホテルで過ごすよりかは、何泊か一緒に旅行に行く不倫の方が強い態様の不倫ということになり、慰謝料が大きくなる原因となります。
そして④不倫発覚後の状況も問題になります。不倫が発覚した後も、特に大きな問題になることなく長期間過ごした場合や、配偶者が謝罪しそれを受け入れた等の事情がある場合は、慰謝料が小さくなる原因になります。
また、配偶者や不倫相手に対して違法行為や嫌がらせを行った場合にも、当然慰謝料は少なくなります。
第1条「とにかく冷静に」を思い起こしてください。
最後に⑤ですが、これはまさに「不倫によって夫婦が、家庭がどのくらい被害を被ったか」ということです。
その被害は人によって千差万別でしょうが、裁判上は「別居に至っているか」「離婚問題に発展しているか」という点が重要視されているようです。
別居や離婚に発展している場合は、より被害が大きいということで慰謝料が多くなる原因になります。
(3)さて、以上述べた事情はあくまで、慰謝料額を多くするか少なくするかという抽象的な考慮要素であり、○○の事情があれば○○円増額するとか、公式があるわけではありません。
ただ、上記のような事情が重要な考慮要素になることを意識することで、ご自身が慰謝料を請求する際、より説得力のある理由付けができますし、専門家に相談する際も上記のような事情を中心に話していけば、その専門家もより的確に事案を把握し、適切なアドバイスをしやすくなります。
第7条 落としどころを決めよう
いざ、相手に対して慰謝料を請求する際、最も悩まれる点は「いくら請求するか」「どのくらいの金額で応じるか」という金額の問題だと思います
第5条で説明したように、慰謝料は相場があるわけではなく、様々な事情を総合的に考慮して決められますので、幾らくらいが妥当な金額かは、極端な話、訴訟を提起して判決が下って見ないことにはわかりませんが、ご自身の純粋な気持ちとして「幾らなら納得できるか」という落としどころを決めておくと良いと思います。
もちろん、こちらは被害者ですから、「取れるだけ取りたい」と思うでしょうし、中には「1億円貰わないと許さない!」と思っている方もいるでしょう。
しかし、あまりに法外な金額を想定しても、相手が応じる可能性、あるいは判決で下される可能性は低いでしょう。
さらに仮に判決で命じられても、相手が従わなければこちらは強制執行しなければいけないわけですが、当然お金が無い相手に対しては幾ら強制執行しても無駄に終わってしまいます。
ですから、基本的にはご自身の純粋な気持ちとして落としどころを決めて良いのですが、一方では将来の裁判のことも考えなければならず、場合によっては非常に難しい判断になりますので、やはり第3条の通り、なるべく早く専門家に相談することをお勧めします。
第8条 離婚を考えている場合は、離婚の条件と合わせて考えよう
不倫が原因となって離婚を考えるに至る方も少なくありません。
しかし、離婚するとなれば、慰謝料の他に、(子どもがいる場合)親権者をだれにするか、財産分与はどちらがどちらにいくら支払うか、養育費はどうするか等についても決めなくてはなりません。
これらの問題は一つ一つは別個の法律問題ですので、将来訴訟で判決が下される場合は、それぞれの関係する法律と証拠に基づいて個別に判断されます。
しかし、財産分与や養育費は、慰謝料と同様、お金の問題ですので、裁判を通さずに当事者同士で交渉、合意して決める場合は、総合的に考慮して交渉されることが多いです。
例えば「財産分与と慰謝料を合わせて○○○万円払うけどどうか」とか、「養育費を月○○万円払うから、慰謝料は免除してくれ」というような交渉が展開されることがあります。
しかし、財産分与や養育費は、慰謝料の問題に比べれば、比較的基準が明確ですので、だいたい、どのくらいが適正額かがわかります。
そうした財産分与と養育費の適正額を前提に、「あと慰謝料としてどのくらい貰えば納得できるか」という落としどころを総合的に考えてみると良いと思います。
第9条 子どもに対する配慮を忘れずに
不倫と慰謝料の問題は、夫婦間の問題であり、当然子ども自身には何も罪はありませんから、子どもに対してなるべく悪影響のないように配慮していくことが必要です。
もちろん、不倫によって少なからず家庭環境は影響を受けるでしょうし、特に離婚ということになれば子ども自身の人生にも重大な影響を与えるでしょうから、100%巻きこまないようにすることは難しいかもしれません。
しかし、それでも、「子どもの前で不倫や離婚の話をしない」「不倫に関する証拠や書面を子どもの目に付くところに置かない」等の配慮は必要でしょう。
第10条 自分の意見と気持ちをしっかり伝えよう
最後に大切なことは、ご自身の気持ちや意見はしっかり伝えることです。
第1条で「とにかく冷静に」とお伝えしましたが、それは必要以上に我慢して言うべきことを言わない、ということではありません。
これは相手方に対しても、裁判官に対しても、そしてご自身が相談に行かれた専門家に対しても同じことです。
不倫で一番の被害者はあなたであり、慰謝料はいわばあなた自身の心の平穏のために確保するものですから、是非ともご自身の意見と気持ちをしっかりと伝えてください。