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【社説】

英国とEU 残留は欧州安定のため

 欧州連合(EU)は英国が残留条件に求めていた移民対策などの改革案で合意し、EU離脱の是非を問う英国民投票が六月に実施される。欧州の結束と安定のため、ぜひにも踏みとどまってほしい。

 合意した改革案は、移民への社会福祉を制限し、子どもが母国にいる移民への子ども手当は母国の物価水準に合わせて支給することを認めた。

 金融政策に英国など非ユーロ圏諸国が不当を表明できるとしたが、拒否権は認めなかった。

 移民を送り出している東欧諸国は改革案に難色を示したが、最後は英国残留最優先でまとまった。

 英国はEU加盟国ながら、ユーロにも、出入国審査を免除し合うシェンゲン協定にも加わらず、一定の距離を置いてきた。

 EUの東方拡大(二〇〇四年)後、新加盟国ポーランドなどからの移民が増加し、雇用不安が高まった。

 ユーロ危機対応に巻き込まれたことやEUの規制への不満も根強く、EU離脱を求める世論が強まった。昨年五月の総選挙でキャメロン首相は、EU離脱の是非を問う国民投票実施を公約に掲げて勝利した。

 EU残留を訴える首相に対し、閣内からも異論が続出、ロンドン市長も離脱を支持し、世論は割れている。

 EU離脱による英経済への影響は甚大だ。EU域内の貿易は無関税だが、離脱すれば、英国からの輸出品には関税がかかる。英ポンドの大幅下落予測もある。

 EUの存在意義は経済面だけではない。二度の世界大戦を経験した欧州は、戦後七十年を経た今も、平和と安定を保っている。EUが共通外交・安全保障を掲げ、戦火を繰り返さない努力を続けてきたからこそだろう。一二年にはノーベル平和賞を受賞し、国際的な評価も受けた。

 首脳会議や閣僚会議を通じ、加盟国間の意思疎通ができていることも強みだ。アジアなど他地域の先例ともなる、多国間の枠組みともいえる。

 イラン核開発制限合意をはじめとする外交でも、英国は独仏とともに欧州を代表し、存在感を発揮してきた。英国を欠いては、EUの力は大きくそがれる。

 EU加盟に伴い国の主権の一部を放棄することに、不満はくすぶり続けるだろう。しかし、欧州のみならず国際社会の安定に果たす役割の大きさを、誇りとともに思い起こしてほしい。

 

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