安倍政権が企業向けの政策減税を充実させた14年度と、民主党政権だった12年度を比べると、主な優遇措置で企業が手にした減税額は2倍強の1・2兆円に達していた。

 朝日新聞社の調べで、そんな実態がわかった。政権は15年度から法人税の税率引き下げへとかじを切り、その財源を確保しようと減税措置の縮小・廃止に取り組んでいるが、「まずは企業を潤してデフレから抜け出す」という政権の基本姿勢が改めて裏付けられた。

 調査の手がかりとなったのは、租税特別措置(租特)透明化法に基づいて政府が毎年度作成し、国会に提出している報告書である。

 数百ページから、年によっては1千ページを超える報告書には、租特を認められた法人数や適用件数、減税額がまとめられている。業種や企業規模ごとのデータのほか、上位10社の個別金額も記されている。

 租特は実態が不透明で、だから一度始めると既得権化しがちだと指摘されて久しいが、民主党政権が制定した透明化法が風穴を開けたのは確かだろう。

 しかし、具体的な企業名は伏せられ、アルファベットと数字のコードが載っているだけだ。朝日新聞社は企業の財務データと照合して数社の名前を特定したが、企業名も公表すべきだ。

 なぜ匿名なのか。

 「企業の投資戦略に影響しかねない」「減税へのやっかみから投資自体がしにくくなる」。そんな理由が語られているようだが、いま一つわからない。公表されるデータは過去の投資に基づく減税額だし、経営に後ろめたさがないのなら、正々堂々と優遇措置を受ければよい。

 あるいは、政党への政治献金と結びつけて見られるのを恐れているのか。設備や研究開発への投資、賃上げなど、様々な促進減税が導入されてきたが、減税分を負担するのは国民だ。納税者が求めているのは個々の政策目的の実現である。減税で浮いた資金を政治献金に回すという、政策をカネで買うような行動ではない。

 情報公開の大切さは言をまたない。

 実際、国が出す補助金では交付先の企業名の公表が進んでいる。やはり民主党政権が導入し、安倍政権も力を入れている「行政事業レビューシート」。各省庁が作成し、事業概要や補助金額とともに具体的なおカネの流れを示す点が特徴だ。

 減税も一種の補助金だ。予算と税制で対応を変える理由はない。