一票の格差の是正を迫られている衆院の選挙制度改革を、どう進めるか。きのうの大島理森衆院議長による各党見解の聞き取りで、仕切り直しの各党協議が動き始めた。

 過去3回の衆院選は、いずれも最高裁に「違憲状態」と判断された。選挙区によって一票の価値が2倍以上も異なる不平等を正すため、いまの国会で必ず制度改正をやり遂げなければならない。

 それには各政党、とりわけ最大勢力の自民党の責任は重い。

 今後の焦点は、都道府県の間の人口比に応じて定数配分を見直す「アダムズ方式」をただちに採用するかどうかだ。

 有識者による調査会が1月に衆院議長に出した答申は、アダムズ方式による定数配分の見直しと選挙区6、比例区4の定数削減などを求めた。

 これを受けて自民党がまとめた案は、まずは都道府県内の選挙区割りの変更にとどめ、都道府県をまたぐ定数配分の見直しと削減は2020年の大規模国勢調査以降に先送りするとの内容だった。

 こうした後ろ向きな案に批判が高まると、安倍首相は先週の衆院予算委員会で「20年の国勢調査まで先送りをすることは決してしない」と述べ、今月中に発表される15年の簡易国勢調査を受けて定数削減に踏み切る考えを示した。

 首相が主導して前に進めたようにも見える。だが、当初案があまりに消極的だっただけのことで、首相が胸を張るほどの話ではない。

 自民党の谷垣幹事長はきのう、首相答弁に沿った削減を議長に表明した。ところが今回はアダムズ方式による「7増13減」とはせず、議員1人あたりの人口が少ない県の定数を減らす「0増6減」を提案した。これでは最高裁に速やかな撤廃を求められた「1人別枠方式」が実質的に残ることになる。

 政権党として、無責任な対応と言わざるを得ない。

 定数削減に反対の共産党や社民党を除き、公明党や民主党などは答申の受け入れを表明した。政党間協議で結論を出せずに有識者調査会に委ねた経緯を踏まえれば、当然の態度だ。

 アダムズ方式が完全なやり方ではないにせよ、自民党がただちに導入に応じれば、おおむねの合意は形成できる。

 自民党が否定的なのは、より多くの現職議員が定数減の影響を受けるからだ。

 自ら約束した身を切る痛みを引き受け、合意につなげる。これこそ政権党の責任である。