予期せぬ出来事
「私ね・・・お見合いする事になったの」
紅茶の入ったマグカップを揺らしながら、上目遣いで覗き見る。
どんな反応をするの?笑うの?気にしない?それとも物好きもいたんだなってからかうの?それとも・・・。
進められたお見合い。反対したけれど、会うだけでいいから、顔を立てて欲しいの。そう言われ、恩がある身としては断り辛く、
会うだけという事で了承した。
お陰で、お見合いの相手が誰か写真すら見ていないという有様だけど。
「奇遇だな。俺もだ」
ノートパソコンから視線を上げず、今日はいい天気だなと言うように、この男はあっさりと爆弾を投下した。
「ひ・・・蛭魔君もぉ?」
驚いて、声がひっくり返った。
「蛭魔君もお見合いするんですよ」
カタカタカタカタ。
途切れないタッチの音。何の動揺も感じられないその口調。
嘘だぁ・・・。ポツリと呟いた。
いったい、誰がこの男とお見合いをするというのだろうか?
「い・・・いつ?」
ごくりと喉が鳴る。
「来月の第一日曜」
日付まで同じなんて、何て事なの?
私は自分で驚くくらい動揺している事に気が付いた。自分がお見合いをするという事実を伝える事で、相手がどんな
反応を示すか、そんな試すような気持ちがあったのは確かで。
私の事どう思っているんだろうか?どんな反応を示すんだろうか?笑われるか、からかわれるか、気にもされないか。
それとも、行くなって言ってくれるの?
そんな事、吹き飛ぶくらい私は動揺していた。
だって、自分の好きな人が自分じゃない人とお見合いをするというのだ。自分という人間がいながら、この人は違う人と
お見合いをすると言う。
その事実に頭が熱くなるくらい怒りを覚えたが、次の瞬間、冷や水を浴びせられたように我に返った。
それについて責める理由も権利も私には無い。自分もまったく同じ事をしようとしているのだから。
卒論をノートパソコンで清書している恋人の、まったく普段と変わらない、欠伸さえしているその態度に私は何をどう、
それこそどこから質問をすればいいのか必死に頭を巡らすが、何一ついい答えは浮かんでこなかった
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アイシールド21.蛭魔×まもり
蛭魔もお見合いする話。
相手は・・・
しかし、中途半端な話ですねー(汗)
03・14
日記散文 4 いつまで続くんでしょうねぇ・・・
更新履歴 05・07・29 『嘘から出た』・『訪問者の混乱』・『極彩色の人生』
『空を見上げる』・『永遠に届かない』
いつも側に居てくれるから
「姫、失礼します」
ノックと共に入出の許可を貰ったが、セインはその扉を空ける前に、もう一度声をかけてからドアノブに手をかけた。
普段のお調子者のセインしか知らなければ、この慎重振りに驚く事請け合いだろうが。プリシラはちゃんとセインの
気遣いの深さを知っている数少ない人間だった。
「こんばんは、セインさん。もうこちらに来てしまって宜しいんですか?」
沸騰したお湯をやかんに移すと、鞄の奥にしまっておいた銀の丸缶を取り出しながらプリシラは立っているセインに
座るよう声をかける。
「いいんですよ。早く姫の顔が見たかったんですから」
言葉にする内容は普段、挨拶のように女性賛美を繰り返すセインらしいものだったが、口調に滲む想いはずっと真摯だ。
「お酒よりは美味しくないかもしれませんけど、どうぞ」
自分の故郷でよく飲まれている紅茶をカップに注ぎ目の前に差し出すと、お礼の言葉と共に受け取るセインの横に座った。
両親や兄に、良くこうして淹れたものだと思い出しながら。
暫くこの紅茶の匂いが辛かった時期もあった。生きていると信じていた人がもうこの世のどこにも居なくて、大切だった人が
自分の側を離れた。辛さに耐え切れずに一人泣いていたプリシラの、どうしても幸せだった記憶を呼び覚ます
この香りを、好きになる事は二度と無いと本気で思っていた。
「姫の淹れてくれる紅茶が、ケントと一緒に飲む樽酒より不味いなんて有り得ない。俺にはコレが一番美味いですよ」
そういって自分にウインクするセインに、プリシラは本当ですか?と疑ってみるが、その言葉を欠片も疑っていない自分が
いるのも知っていた。
もう一度この紅茶を淹れる勇気をくれたのは、もう一度この紅茶を美味しいと思えるようになったのは。
「本当ですとも。このセイン、プリシラ姫に向かって嘘などは言いません」
そう言ってカップを置くとプリシラを抱きしめた。
「姫から紅茶の匂いがします。俺は、この匂いが一番好きなんですから・・・」
良い匂いだ。そう言いながら首筋や髪の匂いを嗅ぐセインに、顔を赤くしながらもプリシラはセインの背中に腕を回し、
セインさんからお酒の匂いがします。と呟いた。
この人はいつでも自分の側に居てくれて、いつでも自分の事を見てくれていた。
ただ側にいてくれる事がどれだけ自分を救ってくれたのか、この騎士は知っているのだろうか?
「あ、すいません・・・俺まだ風呂に入ってなくて。酒臭いですか?」
そう言って離れたセインの体を追うように、プリシラは飛び込むような勢いでセインの体を抱きしめた。
「姫?」
「セインさんの匂い・・・好きです・・・」
そう言って、深呼吸をするように自分の胸元に顔を埋めて呼吸をするプリシラに、セインは本当ですねと言って
その赤い髪に口付けた。
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『ファイアーエムブレム・烈火の剣』セイン×プリシラ
その後は勿論レッツ・ゴー・ベーッド!でしょう(笑)
悲恋カップリングですが、私の包囲網にかかったからにはラブカップルになっていただきますとも。
ええ、それが何か問題でも?
03・16
春
縁側に座って柱に背中を預けている沖田の足の間に座って二人ぼうっと何を言うわけでもなく空を眺めていた。
自分の背中がすっぽりと納まる沖田のその胸の中。時たまひんやりとした空気が流れるけれど、沖田の暖かい
体温が気持ちよくて。そうしても許される境遇が心地よくて、甘えられる自分が嬉しくて、甘やかしてくれる沖田が好きだった。
小さく欠伸をする神楽に沖田は眠いのかと聞く事もせずにいたけれど、髪が引っかからないように髪飾りを外して
二つ横に置いた。
少し癖の付いた桃色の髪が広がって、沖田は痛くないように指で梳いてみた。
体を少し傾けて、鎖骨の下の窪みに頭を埋める。
何故か、不思議に納まりのいい場所。
沖田の片腕を引き込んで、抱き枕のようにして両腕を巻きつけて神楽は満足そうにため息をついた。
髪を痛くしないようにそっと撫でてくる沖田の外見よりずっと大きな手の平の感覚にうつらうつらとしながら、空気がずいぶんと
水っぽくなったと思い、眼を閉じた。
遠くで梅の咲く匂いがした。
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『銀魂』 沖田×神楽
春って空気が水っぽいような感じがしません?
02・28
それでも私は
白い霧の中。
私は前も見えない濃霧にただどうすればいいか分からずにいた。
手を伸ばしても霧は手の平に纏わりつくだけで、見渡しても一人の心細さに私は泣きそうになった。
恐怖はあれだけ経験したというのに、こんな事で泣きそうになる私にはまだ足りないというのだろうか?
ぎゅっと目を瞑ったその瞬間、強い力で手を引かれ、驚いて眼を開けばそこには一人の男の人が立っていた。
「お・・お兄ちゃん・・・」
「誇り高き間桐の人間が簡単に泣くな」
立っていた人があまりにも意外で、それ以上に言われた言葉がもっと意外で、私はただ目の前の兄を馬鹿みたいに
見つめていた。
「待ちくたびれたぞ」
待っていた?まさか・・・あの兄が私を?
「俺が死んで、次にお前が死ぬまでいったい何年経ったと思っているんだ?」
口調が生きていた頃には聞いた事も無いような柔らかさを含んでいて。
あの夜、確かに私は兄を殺して、それから何十年と兄より長く生き続けた。
「迷子になって行く場所も分からずにいたいなら、俺の手を離せばいい」
そう言って兄は私に手を話そうとするので、私は慌てて兄の手を握り返した。
ずっと昔。記憶にも無いくらいずっと昔。
でも今なら思い出せる記憶。
小さな本当に小さな子供だった私の手を、こうやって迷子にならないように引いてくれた兄の手は今のように暖かかった。
「行くぞ」
「うん・・・お兄ちゃん」
握った手に力を込めた。
たとえそれが私の都合の良い思い込みであろうと。
私が感じた罪の意識から逃げようとしている意思の弱さだとしても。
優しい兄を作り出したとしても。
実際はあの人以外に触れられたくないが為に、今まで利用していた兄をこの手で殺したのだとしても。
私は兄が好きだった。
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Fateですー。
あくまで兄弟愛。not近親相姦
慎二を誰か幸せにしてあげてぇぇぇ!(涙)
慎二のあの性格の酷さは後天的な理由が大だと思うんですが・・・。
12・15
泣かないで
「泣かないでください」
あいつがそう言うから、俺は余計泣けてくるんだ。
風が走る草原の中、フロリーナが天馬と戯れる姿を俺は崩れかけた塀に腰掛けたまま、飽きる事も無く見ていた。
「今日は本当に良い天気ですね」
眩しさに眼を細め、自分の前に立つフロリーナの元気に見えるその姿が仮初のものだと知っているから、俺は願うような
気持ちでいつも側に居たいと願うんだ。
「気分は悪くないか?」
「大丈夫ですよ」
そういって軽くガッツポーズを取るフロリーナの頬に指先を当てた。顔色の悪さは隠しようが無く、微かに黄色くなった肌や
艶の無くなってきた髪が物語る事実に俺は目を背けそうになった。
だとしても、背ける事は絶対にしてはいけない事が分かっているから、俺は歪みそうになる表情を強引にでも動かして
笑ってみせるんだ。
俺が、彼女の時間を決める権利は無い。
たとえ残された時間が少ないと分かっていても、その時間を決める事は俺じゃない。
「ヘクトル様」
そういうとフロリーナは俺の背中に両腕を回して抱きついてくるから、記憶よりうんと軽くなったその体を俺は膝の上に乗せた。
「どうした?」
流行り病だと分かった時には全てが手遅れだった。
医者から心の残りの無い様に生きてくださいと言われた瞬間を思い出し、俺は唇を噛み締めた。
「泣かないでください」
「フロリーナ・・・」
フロリーナは俺の目をじっと逸らさずに見る。あんなに気弱で頼りなかった彼女をこんなにも強く感じるのはこんな時だ。
「あなたを知らずに死んでいくのと、あなたに必要とされて残りの時間を過ごすのは、たとえその先に同じ結果が
待っているとしても私の中では考えられないくらいの差があるんですよ」
目尻にフロリーナの唇が触り、そのかさついた感触が少しだけ痛かった。
けれど、涙が出るのはその所為じゃない。
「ヘクトル様に出会えてよかった。長生きしてくださいね。それで、私が知れなかった沢山の事、天国で話してくださいね。
楽しみにしています」
そう言って、俺の目尻を指先で優しく払ってくれるフロリーナが苦しくないくらいの力で抱きしめて、楽しみにしていろよと
答えた。
「フロリーナが飽きるくらい、沢山の話をしてやる。もういいって言っても許さないからな」
「沢山、聞かせてくださいね」
そう言って笑うフロリーナに、俺は頷くと零れそうになる涙を誤魔化すように口付けた。
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ファイアーエムブレム ヘクトル×フロリーナ
いや、公式小説ではフロリーナが流行り病にかかって死んじゃうってありまして・・・。
03・18
嘘から出た
「信じられない!」
蛭魔は何回目か数えるのも馬鹿馬鹿しくなるくらい同じ台詞を繰り返すまもりを黙らせる為に、頭からシャワーのお湯を被せた。
「何するのよ!」
「お前がいつまでも煩せぇ事言ってるからだろうが。いい加減黙れ」
シャワーのコックを捻ってお湯を止めて手元に置き、まもり愛用のシャンプーを手に取ると少量のお湯と混ぜて両手を擦り
合わせる。自分の足の間に座り、背中を向けているまもりの髪に泡だったシャンプーをつけた両手を当て、指先を髪の中に
入れる。
「だって、だって、信じられないじゃない!私がお見合いするって言った時、自分もするなんて言っておいて、
言ったくせにあんな、あんな嘘」
「嘘なんざ付いてねぇーだろうが。俺も見合いするって言ったよな?その通り、見合いしたじゃねぇか」
てーか、少しは落ち着け。そう言いながら、高校の時より随分と伸びた髪の毛を引っ張らないように気をつけて指を通す。
『会うだけでいいから』
お約束のような言葉を聞きながら、蛭魔は何と言ってこの話を断ろうか考えながら机の上の見合い写真を開いた瞬間、
こみ上げてきた笑いの発作を抑える事は出来ず、遠慮せずにその場で笑い出してしまった。
着物姿ですました表情で椅子に座っているまもりを見て、きっとこの写真が見合いに使われるなんて想像もしていないんだと
思いながら写真を閉じ、断りの言葉は承諾の返事に代わった。
それから数日後、試すような口調でまもりから見合い話を聞かされた蛭魔は、まもりが帰るまでどうにか笑い出さない事に
成功したのだった。
当日の、まもりの顔を想像するだけで馬鹿笑いしそうでたまらなかったというのは、いささか趣味が悪いというものだろうか。
「だって妖一は知ってたんでしょ?お見合いの相手が私だって。知っててあの時あんな事言って」
「だから俺も見合いするって言っただろうが。大体、てめーが誰とするのか聞かなかったから言わなかっただけだろうが」
「だっ、だって・・・」
聞けないじゃない・・・そう小さく呟くまもりに蛭魔に、俺を試そうとするからだ。と言い返され、まもりはぐうの音も出ないのだった。
自分だって同じような事しようとしたくせに。と言い返したい所だが、顔も知らない見合い相手を利用して、蛭魔の反応を
知ろうとしたのは確かなので、まもりは納得いかないまでも、それ以上の文句はどうにか我慢したのだった。
「おら、河豚。シャンプー流すから眼をつぶれ」
「誰が河豚よ」
言い返すその声は、見えないと思って頬を膨らませていたまもりにしてみれば図星の一言で、いつもより力の弱い反抗だった。
それでも、背中越しに流されるお湯の温度と、足や腰に触れる蛭魔の体温を感じながら、結婚へと話の進んでいった
今日の事を思い出すと、やっぱり嬉しい結果に顔が緩んでしまうのだった。
嬉しいとは、今日はまだ言わないけれど。
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アイシールド21・蛭魔×まもり
お見合い話の続き。アリス様とくまご様の優しさに勇気を出して続きなんて書いてみました。えへ
03・19
訪問者の混乱
「ここはどこだ?」
何故こんなに頭が痛いんだろうか。血管に血液が流れる度にずきずきと酷く痛む頭を抑え、男はゆっくりと起き上がった。
途端、体中を走る激痛に思わず男は布団に蹲まった。
警戒心は当然あった。見も知らない天井が素っ気無く自分を迎え、覚えの無い家具が無愛想に自分を囲む空間で、
男は表面上はふてぶてしくも内心は驚く程の動揺を抱えていたなどと、目の前の女には知る由も無かった。
「ここは私の部屋よ」
気が付いた?そう言って女は痛む体をかばって蹲る男に大丈夫かと声をかけながら、持ってきたコップをベッドの脇に置いた。
「いったい何があったのか・・・分からないけど、あなた意識が無い状態で私のマンションの前に倒れてたのよ」
女の言葉は男には分からない意味の羅列にしか聞こえなくて、何故自分がこんな見覚えも無い場所に居るのか、それだけで
頭の中が一杯だった。
女の部屋は男の記憶にあるものと何一つ一致する物はなく、自分が一体どうなったのかどうしたのかも分からない境遇に、
男は戦々兢々としていた。
「本当は・・・すぐにでも警察呼べばよかったんだけど」
そう呟く言葉も男には聞こえていなかったようで、女は言っておいてからなんだが、聞こえていなかった事にホッとした。何故か、
男を厄介払いしたかったと思われるのは嫌だった。
何故だろう?
自問自答しても答えの無い疑問に諦めて、女はぶつぶつ何か呟いている男に目をやった。
自分のマンションの目の前で気絶していたこの男を、何故こうもあっさりと部屋に入れたのか。まったく不思議だとしか思えない。
もしかして凶悪犯かもしれないし、変質者かもしれないのに。
なのに、こうやって世話をしているなんて。
そうね、行き倒れた犬や猫と同じかしら。などと、聞いたら絶対に怒りそうな事を考えながら、鎮痛剤と水を男に渡した。
「はい、これ飲んで。朝になっても痛みが治まらないようなら病院に行きましょう」
そう言って渡されたコップと薬を見ながら、あからさまに警戒心を見せる男に、ただの鎮痛剤よと女は言う。
「鎮痛剤・・・俺の知ってるやつはこんなんじゃねぇ」
「知ってるやつって・・・一般製薬だもの。どこでもあるタイプよ。それとも今までに顆粒しか飲んだ事ないって言うの?」
「・・・ここはどこだ?」
男は手にしたコップと鎮痛剤をそのまま机に戻すので、女は眉をしかめてそれを咎めた。
「飲みなさい。じゃないと、痛いままよ。それとも、薬の服用に制限でもあるの?」
「質問に答えろ!」
聞いた事も無いような鋭い声に、女は立ち上がりかけた姿勢のまま動きを止めた。
「な・・・何よ、なんでそんな大声出すの?」
何でこんな怒鳴られないといけないのか。女は親切心でやっていた全ての事を否定されたような気がして気分の悪さを感じていた。
「答えろ・・・ここはどこだ」
それでも、腹の立つ思いをしているというのに、目の前の命令口調の男の目が不安げに揺れているのを見てしまい、
まもりは怒鳴り返そうと息を吸ったその肺の空気を仕方なくため息として放出すると、素直に男の疑問に答える事にした。
追い出すのはその後からでも出来る。
「ここは私の部屋よ。さっきも言ったけどあなたは私のマンションの前で倒れてたの」
男は卓上カレンダーを掴むと女の目の前に差し出した。
「これは暦だな」
「こ・・・・暦って・・まあカレンダーだからそうよ」
暦だなんておかしな言い方をすると思いながら、女は床に座りなおした。
「カレンダー?まあいい。それよりここに書いてある数字だが俺には2005と読めるが間違いないな」
「はぁ?」
「間違いねぇな?」
「2005年よ。今年は2005年、平成17年5月14日の、ついでに言えば酉年よ」
何か文句でもある?と言いたげにおんなは男を見るが、自分の言葉を聞いた男の表情を見て、女は驚きのあまり無意識に
少し後ろに逃げてしまった。
それくらい、男の顔は厳しいものだった。こんな評定する人間を、女は見た事がなかったくらい。
「1873年」
「え?」
男の呟いた言葉に女はつられて返事を返した。
「1873年。明治6年じゃねぇのか?」
「・・・はい?」
男の言葉に女はただ聞き返す事しか出来なかった。
05・14
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アイシールド21 蛭魔×まもり
パラレルにも程がありますね(汗)
05・14
極彩色の人生
「私、昔は本当にヒムロッチの事好きじゃなかったんだよね」
手触りの良い布地が手の平からサラサラと零れ落ちるのが楽しいのか、何度も繰り返す仕草は子供そのものだと思いながら
俺もだと返事を返す。
「特定の生徒を好意対象には見てはいなかったが、君はそれ以前の問題だ。目にあまる行動が多すぎて毎日の頭痛の種だった」
背は元々高いのでスーツが良く似合うなぁと思いながら、この服装を一番沢山見てきたけれど、これからはどうなんだろうと考える。
部屋で会う時は流石にスーツなんて着ていないけど、それでもシャツとズボンで代わり映えしない服が楽しくも何とも無い
言い切った記憶を思い出す。
「いいじゃない、刺激のある人生でさ。いつも同じだとボケるのも早いんだよ?」
誰がボケるだと?そう言って頭を小突かれ、やめてよねーと文句を言うけれど、その顔は笑っていた。
「確かに、刺激のある人生だな」
卒業式の終わり、氷室は藤井に結婚の申し込みをした。付き合うとかそれ以前の諸々の事情もすっとばして、突然のプロポーズに
藤井は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。
自分自身が信じられないような衝動的な、脳味噌を通さない、背骨の反射だけでしたようなこんな行動、きっと相手が
藤井じゃなければ絶対に有り得なかったと今でも思う。
本当に、彼女は自分の固定概念をひっくり返すのが得意だ。
「でしょ?クソツマンナイ人生送るなんて冗談じゃないもの」
綺麗に口紅が塗られた唇から歯が見えるほどニッコリと笑うと、そうだなと笑い返す氷室を見て、藤井は幸せに胸が温かくなるのを
感じた。好きになった切っ掛けはイマイチ覚えていないけど、赤点を取った自分を挑発する氷室に絶対にギャフンと言わせてやると
息巻いていた頃にはもう好きになっていた気がする。修学旅行の時に撮った写真は、今でも大事にしまってあるけれど、見せたら
何て言うかなと思うと、バリから帰ってきたらアルバムから持ってこようと決めた。
絶対にウマが合わないって思っていたのに。優しくないし冷たいし、意地悪で面白みの無い奴だと思っていたのに、補習には
最後まで付き合うし、分かるまで何度でも教えてくれ、何度も同じ事をやり直す自分を馬鹿だと呆れているだろうと聞いた時、
何度でも分かるまでやり直す君の根性にとても感心しているし、分かるまで努力するその姿勢は尊敬に値する、と言われた意外な
言葉に驚いた記憶は鮮明で。
遅くなった時は車で送ってくれて、気が付けば悩み相談や友達の話や他愛も無い会話をするまでになった頃、入学当初に
感じていた感情は、全て好意的に変わっていた。
『ヒムロッチの人生つまんないよ。私がそのクソツマンナイ人生楽しくしてあげる』
今思えば、何とも大胆で考えなしの言葉だったと思うけれど、それでも藤井は氷室にそう言った事を後悔などしてはいなかった。
「クソツマンナイ俺の人生を、これからどう楽しくしてもらえるか今から楽しみだな」
そう言って氷室は椅子に座っていた藤井に手を差し伸べた。
「勿論、腸よじれるほどよ!」
そう言って差し伸べられた手を取ると、サイドテーブルに置かれていたブーケを手に取って、では行きますかと氷室を促した。
クソツマンナイ人生が、彩り始めた瞬間。
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ときメモGS 氷室×藤井
結婚式の話ですよvvv
ひむろっちのクソツマンナイ人生は嫁さんのおかげでかなろ面白おかしくなった事でしょうvvv
05・20
空を見上げる
もうあれから5年が経ったわ・・・。
まもりは空を見ながら、星の見えない空に目を細めた。
数人の同僚達と空を眺めていたまもりの横にさり気なさを装って一人の男が立ち、その様子を隣の女の同僚がその横に居る
同僚と肘を突付きあって噂しているのを、まもりは右半分の神経で感じながら心の中でため息をついた。
「姉崎は星が好き?」
男は好感度の高いと評される笑顔を向けてくる。確かに人好きしそうな顔だと思いながらも、まもりの心は動かない。
好きな笑顔は誰にでも優しい種類じゃない。好きなのは私だけに向けられる真摯な気持ち。
「好きよ」
「俺も好きなんだ。天体望遠鏡持ってるんだけど、肉眼なんて目じゃないくらい凄い星が見れるんだ。まるで空から」
「降ってくるくらいの星ならもう知ってるわ」
そう言った自分の言葉が棘を含んでいなかったとはいえないけれど、まもりは同僚の気持ちに答える事は出来ない以上、
期待を抱かせる態度を取る事は出来なかったし、何より同僚の言う天体望遠鏡で見る星空が『肉眼なんて目じゃないくらい』だとしても、
あの時に二人で見た星空に勝るものはきっと永遠に存在しないとまもりは思っていた。
優しくなくて意地悪で、それでもいつも私の事を想ってくれたあの人と一緒に見た星空は、もう私の手には届きはしない。
恋してる。
想う度に。
あの人の意地悪な言葉も、優しくない態度も。
胸が痛くなるほど。
想われる喜びと、想う幸せを教えてくれた。
まだこんなにもあなたに恋してる。
流れた一つの星を、まもりは滲む瞳で見送った。
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アイシールド21 蛭魔×まもり
パラレルものなうえに、設定もすっ飛ばした話でもう何がなんだか(汗)
まもりは何かの理由で過去に行ってしまい、そこで出会った蛭間と、最初は喧嘩ばかりしているけれど、その内に好きに
なりはじめるといういつものパターンですわ(笑)
でもまもりは現代に帰ってきて、蛭魔と離れ離れになって・・・元ネタは『天空のエスカフローネ』ですよ
06.12
永遠に届かない
私はハンディカムを握り締め、画面に映る三人から視線を外さずに言葉を紡いだ。
「そう・・・長い、気の遠くなるほど長いタイムアウトが明けて・・・」
あんな表情・・・初めて見た。
信じられない人が、心の奥底では確かに待ち望んでいた人物がフィールドに現れた瞬間を思いだす。
蛭魔の、言い訳なんて何も出来ないと言い切れるくらいの驚いた顔。でも、誰よりもその存在を信じていたのか痛いくらい
分かるから・・・。
「ずっと止まっていた時間が」
あの日から、最後のキックから止まったままだった三人の時間が・・・。
「今、動き出しました」
ハンディカムを持つ手が微かに震え、画像が乱れるのが分かったとしてもどうしようもなくて、震える言葉のまま録音を続ける。
信じられないくらい長い時間を、それでもあの人は強く信じてきた。
きっと・・・もう望むのも無駄だと思った事だってあっただろう。けれど、誰にも触らせる事を良しとしなかったティーの存在がある限り、
あの人は武蔵君が戻ってくるのを待っていたんだって分かるから。
どうしてあんなに信じる事が出来るの?
ぽたり。
膝の上に何かが落ちた。
あんなにも信じてもらえる存在が心底羨ましかった。あの人にあんなにも望まれる事が心底羨ましかった。
きっと私は、あの人にとって少しくらい役に立つマネージャでしかない。あんなにも感情を剥き出しにするくらいの強い何かが
ある訳じゃない。
私とあの人の間には、何も無い。
「姉崎さん・・・」
「まも姐・・・」
ふと、雪光君と鈴音ちゃんの声が聞こえ、私は返事をしようと二人に振り返った。
なのに。
どうしてそんなに心配そうな顔をしてるの?私、どこかおかしいの?
武蔵君が帰ってきてくれて、本当に良かったて思ってるのよ?
本当よ。
ぽたり。
握り締めた手の甲に何かが当たった。
私は自分が泣いている事に気が付かなかった。
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アイシールド21 蛭魔×まもり
武蔵が帰ってきたシーンを読んで思った事を。
あんなにも信じられている存在の武蔵に嫉妬するまもり。
まあ、どうあっても勝てない存在ってのはいますわ。愛情と信頼の違いってのは明確なだけに割り切れないくらいの
嫉妬も感じるのだと思うのですよ
06・20