皆さん、猫はお好きですか？
今回は生きた猫ではなく、猫を題材にした創作物、
「猫アート」の世界をご紹介します。

猫アート専門のギャラリーには、
猫好きによる猫好きのための作品が展示されています。
作家の元祖ふとねこ堂さんです。

元祖ふとねこ堂「猫はフォルム自体がきれい。描きあがると楽しくなって、もっと次も次もという感じで描いてしまう。」

今日は、猫ものづくしでお送りします。

まずは、和装小物の根付。
根付とは、江戸時代からある手のひらサイズの装飾品ですが、中でも猫をあしらった作品は人気の的だといいます。
こちらは、恵比寿（えびす）様になった猫。
大好物の鯛（たい）とかけて、その心は･･･おめでたい！

根付専門店の店主、橋本達士さんです。

橋本「根付はとても遊びの要素が強い。根付の遊びと猫がよく遊ぶというところが、うまく合わさっている。」

遊び心が詰まった傑作。
怖そうな顔ですが、よく見てみると･･･
頬（ほお）も鼻も耳も、みんな猫！
１８匹の猫を使って、猫の顔を表しています。
こんな凝った仕掛けが楽しいのです。

１つ目のツボは、
「猫に遊び遊ばれて」

根付師の小野里三昧さん。
緻密な彫りと独創的なアイデアで知られています。

小野里「猫は何かしてあげたくなるようなキャラクター。」

猫には作り手の自由な想像が膨らむ余地があって、遊び心を生むのですね。

着物デザイナーの城田由紀子さん。

城田「猫のもっているフォルム、神秘性、柔らかさ、躍動感。家の中であの四つ足が軽やかに飛んだり、歩いたりっていうのを見るのがとても好きなんです。」

城田さんの自信作一式です。
肩口に、ちょうちょうを追いかけて今にも飛び降りようとする猫。
すそには、地面から飛び上がるもう一匹。
猫のしなやかな動きを捉えています。
帯には手まり、帯留には鈴が配され、まさに猫づくしの一着です。

猫アートプロデューサーの木村慎一さん。
こだわっているのは、人に化けた猫たち。

木村「猫の顔の目鼻のバランスが、人間に近いんですね。なので、自分の思いを入れやすいというのは非常にあると思うんです。」

一方こちらは、猫アートを集めている、松川みどりさんです。
コレクションは３００点を超えるといいます。

松川「一目見たときから、何か惹（ひ）かれるものがあって。」

松川さんが、出会った瞬間くぎづけになったのが･･･

フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」が弥勒菩薩（みろくぼさつ）の猫に化けたという不思議なオブジェです。

２つ目のツボは、
「猫が化けた自分に出会う」

人形作家の小澤康麿さんです。
小澤さんはかわいい猫の作品で数々のヒットを飛ばしてきました。
しかし、もの足りなくなって作り始めたのが、怖い顔をした化け猫だったといいます。

小澤「ものを作るということは、自分を形作るところがあると思う。自分の中にある負の部分、怖い部分。それを猫に表現できたら。」

小澤さん作の魔性を秘めた三毛猫です。
猫が時折見せる野性やこの世のものではない怖さ。
人はそこに自分自身の心の奥を垣間（かいま）見るのでしょうか。

江戸時代の浮世絵師、歌川国芳の代表作の一枚。
幕府の禁令で、贅沢（ぜいたく）な着物をきた役者絵を描けなかった国芳は、猫に反骨精神を託し、役者の顔を猫に変えて、お上に一泡吹かせました

江戸風俗研究家の篠原知子さん。

篠原「猫独特の、中に野性を秘めている部分と、国芳の、俺は負けないよという部分が絵にも表れている。」

漫画家、水木しげるさんの「猫娘」といえば、今や誰もが知るキャラクター。
しかし、最初は、ねずみや魚を見ると不気味な猫娘に変身してしまう少女の暗く悲しいストーリーだったのです。

かつて、水木さんの創作を手伝っていた、評論家の呉智英さん。

呉「世の中には救いのないものがある。それがかすかに生きていけるのは異界、異なった世界であるという、そういう気持ちがあったと思う。」

猫娘には、水木さん自身の思いが重ねられていたのかもしれません。

９月末、愛知県瀬戸市で開かれた
「来る福招き猫まつり」を訪ねました。
写真家で、日本有数の招き猫コレクター、板東寛司さん。

板東「猫って、ちょっと神様じゃないかなと思うときがある。そういうところから招き猫が生まれて、民間信仰として招き猫が愛されてきた。」

３つ目のツボは、
「猫が運んだ八百万の福」

招き猫の移り変わりをひもといてみると･･･
幕末の頃、浅草で売り出された丸〆（まるしめ）猫が、招き猫の始まりといわれています。
丸く〆るとは、お金持ちになるということ。
最初は金運を願った素朴な縁起物でした。

昭和のはじめ、歴史を変える猫が現れます。
芸者姿にすてきな笑顔の縁福（えんぷく）猫。
通称、芸者猫といわれています。

芸者猫を作ったのは、河村目呂二。
戦前に活躍した彫刻家で、みんなから「猫の先生」と呼ばれていました。

長野県軽井沢町にある、河村目呂二が暮らした家。
出迎えてくれたのは、目呂二のひ孫にあたる、内山舞さんと夫の朋彦さんです。

内山舞「（目呂二は）猫の自由な部分だけではなくて、人にこびない姿をも愛したいと。自分ではできない姿を猫に見て、そこに羨ましい憧れをもっていた。」

芸者猫以降、招き猫に幸福への思いを込めた作品が作られるようになったといわれています。

広島県尾道市。
「猫の細道」と呼ばれる路地に、石の置物があります。
「福石（ふくいし）猫」と呼ばれています。

作り手の園山春二さんです。

園山「（この丸い石をなでると）心臓にいちばん近いところに、この冷たさと柔らかさが伝わって、気持ちがすうっと落ち着くんですよ。」

猫が運ぶさまざまな福。
次はあなたの街へやってくるかもしれません。