山本一郎です。どこの世界も薬物関連は怖いですね。
ところで、先日AppBank社の元役員木村さん(仮名)が引き起こした横領事件と、それに関する調査報告書に木村さんが上申した内容を受けて「恐喝 3,000万円~3,500万円」と記されていることで、AppBank社取締役就任中の木村さんによる暴力団への資金提供が強く疑われた件について、AppBank社の決算会見では報道陣から質問が集中し、釈明が行われました。
【修正あり】AppBank社、元役員の横領金の流出先に「暴力団関係者」の疑い 調査報告書に記述せず(ヤフーニュース個人 山本一郎 16/2/6)
【追記あり】AppBank社への公開質問状(暴力団がらみ)(ヤフーニュース個人 山本一郎 16/2/8)
アップバンク、見えない「横領疑惑」の真相意気消沈の宮下社長、饒舌だった廣瀬CFO(東洋経済オンライン 16/2/18)
「追加費用が発生しない」ということは、組成されていた社内調査委員会で追加調査をしないという意味であろうという風に受け止められます。
この問題について、内部調査委員会は追加調査をすることなく打ち切って刑事告訴し、捜査機関に任せると決算会見の中で廣瀬光伸専務CFOの口により明らかにされております。要するに疑惑を自ら解明する気もなければ、然るべき措置を講じて得られた情報を整理して株主や市場関係者に説明責任を果たすつもりも無い、ということはよく理解できます。
しかしながら、この当時のAppBank社取締役の個人事業に関する経歴はAppBank社の上場目論見書の役員経歴欄のところに何ら記載はありません。また、開示版の調査報告書でも、木村さんが話をしたと見られる事実関係について取り上げていない、もしくはまったく意図を斟酌していないであろうと見られ、この内部調査委員会で言う「不正調査のプロ」がどうしてそのような見落とし、あるいは意図的に記述を省いたのかは気になります。
木村さんは確かに暴力団関係者ではなく、堅気の個人事業者であったため経歴を自己申告されておらず、上場審査などの経歴チェックにおいてはっきりとはリスクを認識できなかった、ということなのでしょうか。
木村さんについていえば、AppBank入社前は北区赤羽を中心とした”個人事業”を営んでおられ、調査の結果、木村さんの事業のケツモチとしてある特定団体との関わりがあったとの情報を得ています。当該団体はその後覚醒剤取引に関する事件での摘発などにより衰亡するのですが、赤羽地区でのこの団体の後がまに他の特定団体下部組織が進出してきており、こちらの新しいほうの団体が木村さんの横領事件との関わりがあるという情報もあります。この特定団体は09年と12年から13年にかけて、複数の上場企業への恐喝容疑で書類送検されており、いわゆる経済事犯をお家芸としている人たちでもあります。
この特定団体に関わる方面を知っていれば、上場企業への恐喝や、いわゆるゴミ株の増資詐欺事件、上場廃止銘柄に深く関わった人物など目白押しであって、当時取締役だった木村さんやAppBank社が上場企業としてこれらの人脈に関わっているのかどうか、調査委員会からの聞き取りや上申書の内容にある「恐喝」の内容が注目されますのは当たり前のことです。
関係者への調査をまとめますと、当時”事業”を一時期軌道に乗せた木村さんや個人で共同経営していた人物たちは、仕事柄暴力団関係者との係わり合いを持ちつつも商売に才覚を発揮したちょっとした有名人であって、人間関係的にも廃業後の足取りについて追われていたと見られます。木村さんは暴力団関係者ではなく堅気の人物ですが、これらの事業をやる上で係わり合いを持たなければ営業をやっていくことができない仕事であった、ということです。
いわゆるハコ乗りや企業恐喝に近しい人脈が多数AppBank社の問題の周辺におり、当時AppBank社に食いついていると発言していた人物がいたことまでは、相応の調査を行えば簡単に辿り着くはずです。恐喝の内容の是非や信憑性を確認する上でも重要な観点です。木村さんがこれらの人物に資金を流したと断定することは一連の聞き取り調査だけでは難しいとしても、関与についての調査はするべきです。これらの人物への接触もなしに、調査委員会は「恐喝の事実関係には信憑性が乏しい」と判断したとすれば、横領の手口だけ明らかにして背後関係はさほど問わないという「結論ありきの調査」でしかなかったとしか思えません。
一部の関係者によると、瓜生糸賀法律事務所が告訴代理人として木村さんを地検が挙げる算段を始めたとのことですが、この手の話はいくら準備しても「相談しました」「はい、じゃあ摘発します、身柄押さえます」とすぐにはならないケースもあり、その間に木村さんの身に何かあると洒落ではすみません。速やかな対応が望ましいでしょうし、真相の解明はきちんと実施して欲しいと願います。
そもそも木村さんをなぜAppBank社の会計責任者にして一人で出納担当させていたのかという経営管理上の点もありますし、まだ売上がそれほどでもなかった時代に、3年間で1億4,000万円もの資金が横領されて誰も気づかなかったこと、それも、税務調査で数日間の反面調査を入れただけであっさりと露顕するような代物を「エクセルシートの改竄があったから」という理由で”経営陣が見抜くことが困難な犯行”と結論付けた調査報告書は大丈夫なのかと思うわけです。
それでも、調査委員会がこの問題を追いたくないということであれば、自社の当時の役員が暴力団関係者に資金を預けていたことがすぐに判明してしまうと、漏れなく監理ポスト入りしてしまい、悪くするとそのまま上場廃止になることを恐れて時間稼ぎをしたいというだけではないかとも邪推される事態です。創業者を含む上場時点株主のロックアップ解除期限は4月中であり、そこまで告訴もせず実態解明も行わないで、過去に遡って決算修正をしましたということでお茶を濁している、と批判されても仕方がありません。
これらの横領や暴力団関係者への資金融通の疑いを見抜けなかった専務CFOの廣瀬光伸さんという御仁については社内事情もかなりあります。その中でも強く懸念されるのはAppBank社社内でのパワハラ問題です。これについて、私の質問に対してAppBank社は公式の回答として「指摘頂いた内容に関し個別具体的な相談等に至ったような事実が無く、会社として具体的に認識していない」とのことで、パワハラ問題があったという認識がないとされています。そうですか。
しかしながら、調査の結果得られたAppBank社の内部文書および証言によると、2013年在籍していたある事業の幹部社員だった人物が、業務上の問題で廣瀬さんに激詰めされ、この廣瀬さんの暴言を理由として鬱の症状を起こして病状をAppBank社管理部に相談、休養ののちそのまま退職をされている経緯があるようです。
また、最近退職に追い込まれた創業来の幹部については、この廣瀬さんから「二度とこの業界で仕事をできないようにしてやる」「家族を末代まで呪う」などの暴言とともに社としての改善を依願していたものの、好転の兆しが見られないとして代表取締役の宮下さん、担当取締役の村井さんにも相談をしていた経緯も明らかになっています。
複数のライターや動画撮影スタッフによると、業務上無関係な廣瀬さんが自分の机にやってきて意味の乏しい説教を長時間にわたって行うなど、職掌上の問題を多数抱えていると証言しています。このあたりは、会社にとっての「指導」や「教育」、あるいは「組織の引き締め」と見るのか、受け手の心情としてパワハラであるものと認定するべきかは分かれるところですが、この問題について、会社が具体的な事案として認識していないというのは不思議なことです。
複数の関係者が、この廣瀬さんのパワハラに対し直接社長の宮下泰明さんや、マックスむらい(村井智健)さんに対して個別に相談、改善を依頼したものの、結局この宮下さん、村井さんは廣瀬さんのパワハラに対して事態を改めさせることができず、逆に宮下さん、村井さんの離席中に高圧的な発言を社員や外部スタッフに続けてきたとの関係者の証言もありました。
さらには、一部ではセクハラ紛いの行為も散見され、その組織的な対処を行うために会議が繰り返されている一部始終も議事録やサマリーとして残っています。パワハラやセクハラなどは、今回の横領などには直接の関係はもちろんないものの、なぜこれだけの横領が見抜けなかったのか、社内のコンプライアンスが機能していない現れのひとつであることは間違いないと思います。横領や恐喝紛いだけでなく、パワハラ問題も噴出して幹部社員の流出が続いているのだとするならば、上場企業であるAppBank社のコンプライアンスについて重大な懸念が持たれかねないことは言うまでもありません。
もしも公平な場面設定で村井さんが動画で私の懸念に答えていただけるのであれば、私は喜んで資料もって収録に同席のためお伺いいたしますので、ご検討賜れますと幸いです。
その際は、コメント欄のNGワード登録や都合の良いコメントの承認や削除といった編集権を行使されないことや、公平な司会者その他がいると嬉しいですね。
よろしくお願い申し上げます。