2016.02.22 13:00
各人が1年を通じて「これは一番面白かった」と思うWeb記事を紹介しながら、次の人へバトンを渡し、最も輝いていたWebコンテンツを決めるアワード「ハイパーリンクチャレンジ2015 ※リンク先は結果発表ページ」。ありそうでなかったこの企画を立ち上げたのは、それぞれがライターもしくは編集者としてWebコンテンツの制作で活躍する藤村能光氏(サイボウズ式)、佐藤慶一氏(現代ビジネス)長谷川賢人氏(北欧、暮らしの道具店)、鳥井弘文氏(灯台もと暮らし)の四氏だ。この四氏にアワードの結果を振り返りつつ、今後のWebメディアの展望を語って頂いた。
このメンバーで新宿のとある居酒屋で飲んでいて、盛り上がったことがきっかけで発案されたという「ハイパーリンクチャレンジ2015」には一つの明確な問題意識がある。
「なぜWebコンテンツには、アワードは存在しないのか?」というものだ。
居酒屋での談義のあと、その翌朝には長谷川氏が書き上げていたという企画の開催趣旨には次のような言葉が綴られている。
日々膨大に消費されるWebコンテンツのうち、価値あるものの作者は報われるべきであるし、後世にも残しておきたい。企画サブタイトルの「孫まで届け」には孫正義さんまで参加してくれたら嬉しい、孫の代まで読まれていきたい、参加していただいた方に"ソン"はさせないという気持ちが込められているのだとか。
【左から】藤村能光氏(サイボウズ式)、佐藤慶一氏(現代ビジネス)長谷川賢人氏(北欧、暮らしの道具店)、鳥井弘文氏(灯台もと暮らし)
もともとトークイベントを介して知り合いだった藤村氏と長谷川氏が、コンテンツ論を語り合うべく、飲み会の席に誘ったのが佐藤氏と鳥井氏だった。この発案の元になった飲み会では、キュレーションメディアについて語り合う延長線上で、「Webコンテンツのアワードをやるべきだ」という話になったそうだ。
翌日には長谷川氏が企画の叩きをまとめ、鳥井氏のブログから実際に企画が始動した。日頃、自身がWeb業界に身を置く彼らはそれぞれ企画を始めるにあたってどのような課題意識を抱えていたのだろうか。
藤村能光氏が編集長を務める「サイボウズ式」は「新しい価値を生み出すチーム」のための、コラボレーションとITの情報サイト。
長谷川賢人氏が編集チームに所属する「北欧、暮らしの道具店」。北欧のライフスタイルにインスパイアされ、そのスタイルの本質を自分たちらしく表現した雑貨などを取り扱うECサイトでありながら、読み物も充実している。
昨年11月27日から12月20日までの約一ヶ月の間で310件のエントリーがあったという。推薦する記事に加え、自分が書いた記事も紹介するため、単純計算で620記事分が票として集まった。
企画が始まり、バトンが着々と回されていく中で、主催メンバーの印象に残る出来事がいくつかあったという。その一つが、ちょうど企画が始まってから一週間が経過し、周りに伺いを立てたり、知人を優先して紹介するようなムードがにわかに立ち込め始めていた矢先に長谷川氏の目に止まったツイート。はせおやさい氏による次のものだ。
ハイパーリンクチャレンジ、広がって行く中でいろんな人が書いてるのすごく面白く読みつつ、「その記事、はてブやシェア数が1桁だったとしても推薦しましたか?」っていうのと、「その記事、媒体の中の人と知り合いでなくても推薦しましたか?」は聞いてみたい気がしてきた
— はせ おやさい(GORGE.IN) (@hase0831) 2015, 12月 4
藤村氏が印象に残っている出来事として挙げたのは、美容師の木村直人さんにバトンが回って以降、美容師の界隈で一気にバトンが拡散したことだった。
事実、最多得票を獲得したのは木村直人さんがPOOL MAGAZINE(プールマガジン)に寄稿した「単純に考えて「毎日やってる人」にちょこっとやったくらいで勝てるわけないだろう。という話」という実体験に基づいた記事だ。
メディア別の得票結果でも「POOL MAGAZINE」は3位にランクイン。1位は「オモコロ」、2位は「デイリーポータルZ」だった。どちらもWebメディアとして10年以上運営され、ファンも多い王道中の王道。この結果を審査員はどう見たのか。
長谷川氏が必ず読んでしまうコンテンツとして挙げた、『デイリーポータルZ』の平坂寛氏による記事。長谷川氏いわく「自分が絶対に知らない魚を釣って、食べて、教えてくれるだけで、人生が広がった気になる」。(写真は「深海魚「サケガシラ」を食べた」より)
近日公開予定の後編では、メディアの属人性の重要性が増していく一方、広告や情報の流通経路に変化が起きつつあることが語られる。今話題のnote課金の話や、「ハイパーリンクチャレンジ」の総括から2016年以降のメディア動向を探っていく。
SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。『SENSORS』や『WIRED.jp』などで編集者/ライター。これまで『週刊プレイボーイ』『GQ JAPAN』WEBなどで執筆。東京大学大学院学際情報学府にてメディア論を研究。最近は「人工知能」にアンテナを張っています。将来の夢は馬主になることです。
Twitter:@_ryh
SENSORS Managing Editor
PR会社勤務ののち、かねてより旅行でよく訪れていたロサンゼルスに在住。帰国後、福岡やシンガポールのラジオDJ、東京でのMC・ナレーター、ライターとして等の活動を経てメディアプランナーとして活動中。また、タレント・企業トップなど個人に特化したPR・ブランディングにも携わっている。
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