アルツハイマーの爆心地”青斑核”が、認知症治療に革命を起こす1/1

アメリカでも日本でも、アルツハイマー患者は年々増加しています。高齢者の大きな死亡原因のひとつとされているアメリカでは国立衛生研究所が多額の資金を投入して研究を進めてきました。そうした中「青斑核」と呼ばれる脳幹の一部分に注目が集まっています。

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アルツハイマーの爆心地を、「青斑核」に特定

530万人が罹患しているとされ、高齢者の3人に1人の死因がアルツハイマーなどの認知症で死亡しているアメリカでは、アルツハイマーは特に「早急になんとかするべき深刻な病気」です。

アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health.NIH)が資金を提供するアルツハイマー研究の結果、アルツハイマーを引き起こす脳における正確な部分が特定され、認知症治療を巡る研究が熱を帯びています。

その部分とは「青斑核(せいはんかく。locus coeruleus)と呼ばれる脳の小さな領域で、遅発性のアルツハイマーにおいては最初に影響を受ける部分、いわばアルツハイマーの”グラウンド・ゼロ(爆心地)”と言える部分です。

神経伝達物質「ノルエピネフリン」

青斑核は、脆弱ですが非常に重要性の高い部分で、最新の研究では、若い時と比べて高齢者における認知機能の維持に大いに関連しています

脳幹にある小さくて青いこの部分は「ノルエピネフリン(norepinephrine)を分泌します。
ノルエピネフリンは心拍数、注意力、記憶力、認知機能などを調節する神経伝達物質です。

脳の細胞や、ニューロンは脳の大部分を通じる枝状の「軸索」を形成しており、血管を活発に調節しています軸索は細胞から単体で発達し、その後側枝を出し、さらに末端付近では終末側枝を出して枝分かれしています)。
南カリフォルニア大学レナード・デイビス校の老年学者マラ・メイザーによりますと、青斑核は脳機能と深い相関関係にあるので、他の部分と比較した場合、毒素や感染症の影響をより受けやすい部分でもあります。

アルツハイマーの病原「タウ」は青年でも持っている

メイザーによると、青班核は、タンパク質のもつれとして時間をかけて広がり、後年アルツハイマーの明確な兆候となる「タウ病原(tau pathology)が、脳内で最初に現れる部分でもあります。

タウは現在、アルツハイマーの主要原因物質と考えられているタンパク質です(「タウ仮説」)。

同志社大学の井原康夫教授が発見したもので、それまで顕微鏡で脳の萎縮などの変化としてしか捉えることができなかったアルツハイマーは、「分子レベルの変化」として明らかになりました。

誰もがアルツハイマーにはなるわけではないが、青年期の患者の検死結果を見る限り、ほとんどの人にはタウ病原の兆候がある

メイザー

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アルツハイマー患者の脳組織。ピンクの矢印がタウです。(出典元)

青班核は確かに、「刺激物の影響を受けやすい敏感な部分」ではありますが、ここから分泌される「ノルエピネフリン」が、アルツハイマーの症状を予防します。

ラットとネズミを使った実験では、ノルエピネフリンは炎症や様々な神経伝達物質による刺激など、神経細胞を殺してアルツハイマーを加速させる諸所の要因から神経細胞を守っていることが確認されています。

ノルエピネフリンを分泌するには

ノルエピネフリンは、仕事でプロジェクトの諸問題の解決法を模索したり、クロスワードに挑戦したり、習得困難な楽器を演奏したりと、精神的に難しいことへのチャレンジに集中している時に盛んに分泌されます

病原に侵されても、教育や素晴らしいキャリアを持つことで高齢期の認知的な予備領域を生み出したり、脳の生産性を効果的に上げることができます。

人生を通して、常に新しいこと・ものに興味を持ち、常に難しいタスクに着手し続けていると、青班核のノルエピネフリン分泌システムが活性化されて認知機能領域を保ち続けられます。

メイザー

睡眠時間が少ないと、青斑核の脳細胞が死ぬ

2014年3月のペンシルヴァニア大学の研究結果で、青斑核にある神経細胞は起きている時間が長くなればなるほど(睡眠時間が少ないと)死ぬことがわかりました。

「ストレスコントロール」を担う神経細胞ですので、数が減ると精神的パニック状態に陥る危険性があります。

さらに、オックスフォード大学の研究結果では睡眠時間が少ない人は徐々に大脳皮質が萎縮していくことが明らかになり、60歳以上の高齢者の脳年齢には、睡眠時間が大きく関与していることがわかっています。

Study: Sleep Loss Kills Brain Cells, Triggers Alzheimer’s(1:04)

本記事振り返り

・遅発性のアルツハイマーの爆心地が「青斑核(せいはんかく)」と呼ばれる脳の小さな領域だということが分かった。この部分は、高齢者における認知機能の維持に大いに関連している。

・2014年3月のペンシルヴァニア大学の研究結果では、青斑核にある神経細胞は睡眠時間が少ないほど死ぬことがわかった。

・「ストレスコントロール」を担う神経細胞なので、数が減ると精神的パニック状態に陥る危険性がある。60歳以上の高齢者の脳年齢には、睡眠時間が大きく関与している。


【参照】

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