米中対立の「水位」が、にわかに上がっている。主な原因は、南シナ海と朝鮮半島である。中国は、「アメリカがアジアにもNATOを築こうとしている」と猛反発している。
中国が西沙諸島にミサイル配備
まずは、南シナ海の問題から見ていこう。
2月16日、FOXニュースが、「中国軍が2月に入って、南シナ海のパラセル(西沙)諸島にあるウッディー島(永興島)に、地対空ミサイル8基を配備した」と報道した。2月3日と14日に撮影した島の衛星写真を公表したため、説得力があった。
このミサイルは、昨年9月3日に北京で行われた抗日戦争勝利70周年軍事パレードでお目見えした、射程200kmの「紅旗9号」だという。
米右派のFOXニュースには、CIAやアメリカ軍などがしばしばリークするので、今回もそうした流れの可能性がある。米政府の右派系は、煮え切らないオバマ大統領の対中政策に、イライラしているからだ。
実際、2月17日、来日中のハリー・ハリス米太平洋軍司令官は、怒りをあらわにした。
「習近平主席は昨年9月の訪米時、オバマ大統領に『南シナ海を軍事拠点にする意図はない』と述べた。だが今回の件は、習近平主席が約束を守れないリーダーだということを示している」
このところにわかに反中的発言を始めたケリー国務長官も、「中国が軍事化を進めていく証拠が頻繁に出てくるのは深刻な問題だ」と述べた。
日本政府も、菅義偉官房長官や中谷元防衛大臣が、「現状変更を試みる動きは看過できない」と、中国を非難した。
防衛省は、統合幕僚本部創設10周年に合わせて、母親が日本人であるハリス司令官を訪日させるのに全力を挙げてきた。そのタイミングでFOXニュースが出たので、渡りに船とばかりに、中国の脅威をアピールしたのである。
防衛省は2月16日にも、「15日に対馬沖で、外国の潜水艦が浮上しないまま領海のすぐ外側の接続水域を航行しているのを、海上自衛隊の護衛艦『あさぎり』とP3C哨戒機が確認した」と発表。中国の脅威を示唆している。