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民・維の安保対案 かみ合う議論聞きたい

 民主党と維新の党が、安全保障関連法の対案として、旧周辺事態法の改正案など3法案を衆院に共同で提出した。

     昨年9月に成立した安保関連法との最大の違いは、自衛隊による米軍への後方支援を定めた旧周辺事態法の見直しにあたって、地理的な制約を維持していることだ。

     安保関連法は地球規模で米軍などへの後方支援を可能にしたが、民主、維新の対案は朝鮮半島や台湾海峡の有事を念頭に、あくまでも日本周辺での後方支援にとどめたうえで、支援の内容を拡充している。

     民主は「専守防衛に徹し、近くは現実的に、遠くは抑制的に、人道支援は積極的に、との姿勢を具体化した法案だ」と解説する。

     この対案に続いて、両党に共産、社民、生活を加えた野党5党は、安保関連法は憲法違反だとして、廃止法案を衆院に共同で提出した。

     憲法の恣意(しい)的な解釈を土台にした安保関連法は、数多くの問題を抱えている。ただ、法律を廃止するだけではなく、国際情勢の変化に対応するため、地理的な歯止めを維持したうえで、旧周辺事態法の改正など必要な安保法制の整備をすべきだ。

     その意味で、民主が維新とともに対案を出したことは、遅きに失したとはいえ、一定の評価をしたい。

     しかし、これで十分とは言えない。集団的自衛権の行使について、民主の考えがはっきりしない。

     民主は昨年4月に「安倍政権が進める集団的自衛権の行使は容認しない」との党見解を出している。集団的自衛権の行使について、必ずしも全否定はしていない。では具体的にどうすべきかというと、党内では整理がついていないように見える。

     維新は、昨年の国会では、グレーゾーン事態の対処法案を民主と共同で出したのに加え、単独で集団的自衛権に関わる対案も提出した。維新の案は、安保関連法の「存立危機事態」に基づく集団的自衛権の行使を認めず、個別的自衛権の定義を広げたものだった。

     民主と維新は、集団的自衛権に関する問題でも共通の案ができるよう、協議を重ねるという。一致点を見いだし、全体像を示してほしい。

     昨年の国会は、集団的自衛権をめぐる憲法問題での対立が先鋭化した結果、幅広い論点が未消化のまま終わった。今年に入って、北朝鮮による核実験や事実上の長距離弾道ミサイル発射など、日本周辺の安全保障環境は動きが急だ。

     与党は、野党の対案を審議しない方針だ。だが、むしろ与野党で安保政策の共通基盤をつくる契機にすべきだ。与野党の議論がかみ合えば、国民の理解ももっと進むだろう。

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