今の介護保険制度の課題を話し合う厚生労働省の審議会が始まった。年内に議論をまとめ、来年の通常国会に制度見直しのための法案を出す予定だ。

 厚労省が検討課題に挙げるのが、介護の必要度が低い軽度の人向けの生活援助サービスを介護保険から外すことや、利用者の負担を引き上げることだ。

 高齢化に伴って年々増え続ける介護の費用の伸びを抑え、保険料の上昇を抑えたい。そんな考えからだ。

 だが、制度を見直すたびに、介護保険が使いにくくなっている、と感じている人は少なくないのではないか。今年度も「要支援」の人向けの訪問介護やデイサービスが市区町村の事業に移り始め、一定所得以上の人の利用者負担が1割から2割に引き上げられたばかりだ。

 サービスの縮小や負担増を繰り返し、家族の負担が増すことになれば、「社会全体で介護を支える」という介護保険の理念や制度への信頼が揺らぐことにならないか。そのことにも十分留意する必要があるだろう。

 審議会では、軽度の人の中には生活援助サービスがなくなるとむしろ状態が悪化しかねない人もいて、逆に介護費用が膨らむ恐れがあるとの懸念も出ている。市区町村の事業へ移された要支援向けサービスの現状や影響も検証しながら、実態に即した議論を求めたい。

 同時に、サービスの縮小や利用者の負担増という、いわば部分的な手直しでのやりくりは限界だとする指摘もある。だとすれば、制度の支え手を増やすなど、抜本的な見直しの議論も避けて通れないだろう。

 介護保険料の負担は現在、40歳からになっているが、対象年齢を引き下げるかどうかも、長年の懸案だ。

 「若い人には介護は実感されにくい」として、親の介護を意識し始める40歳を目安として制度がスタートしたが、現実には若年認知症の親の介護に直面する20~30代もいる。

 一方で雇用環境が変わり、若い世代に経済的に苦しい人たちが少なくない現状で、新たな負担を求めることができるのか、という慎重論も根強い。

 障害者福祉との関係をどうするかも大きな議論になる。

 サービスを縮小するのか、広くみんなで支える制度にするのか。給付と負担のバランスにどこで折り合いをつけるのかに、誰もが納得できる答えがあるわけではない。

 さまざまな課題をみんなで共有し、丁寧に合意をつくっていくしかない。