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人を強制的に幸せにするデザインとインターフェース

最近よく考えることに、人間を強制的に幸福にするユーザーインターフェースは作れないか、という着想がある。100万ユーザー級のアプリのUI改善に何本か関わった結論として、単に使いやすいインターフェースや、KPIアゲアゲの設計とかに飽きた。

むしろ統計、認知心理学、脳科学、行動経済学などをフル活用して、デザインで強制的に幸せを生産できないだろうかと考える。

幸せは生産できるか?
アメリカの哲学者、ウィリアム・ジェームズの言葉に、「私達は幸せだから笑うのではない。笑うから幸せなのだ」というものがある。日本にも類似の表現として、「笑う門には福来る」という諺がある。

両者で注目したいのは、因果関係の方向だ。どちらも方向として、「笑う」→「幸福」という因果関係を説いている。「幸福」→「笑う」ではない。

実は最近の脳の研究によると、とりあえず口角を持ち上げれば、人間の脳はドーパミンを生産するのだという。脳と行動は双方向に影響しあうので、口角をあげるだけで脳が反応するのだ。その瞬間の気分は関係ない。つまり強引に笑顔をつくらせれば、幸福(少なくとも幸福の一部は)生産可能なのである。この現象については、行動経済学でノーベル賞をとったダニエル・カールマンも著書で扱っている。

ちなみに、この分野には「ボトックス注射で顔面を弱く麻痺させ、しかめっ面を作れなくすると、被験者は幸福度が上昇する」というとんでもない研究もある

もし笑顔で幸福が生産できるならば、笑顔を作らせればよい。だが人間に強制で何かをさせるのは難しい。そこで、ユーザーインターフェースの出番となる。日常生活における手続き(インターフェース)の中に、「口角を釣り上げる」という動作を反復的に埋め込めばよいのだ。毎日何かを使うだけで、自然と人間は幸せに導けるのではないかという仮説が立った。

スマイル認証
たとえば、スマホのユーザー認証を「スマイル認識」に切り替えたらどうなるだろうか? 日常でスマホをアンロックするたびに笑顔を作らせるのだ。こうすることで、無意識のうちにユーザーの幸福度をあげることができる。繰り返すが、このときユーザーの感情や満足度は関係ない。とりあえず口角をあげさせとけば、後から幸福や感情はついてくるのである。ドラッグなど使わなくても、脳はハックできるのだ。

同様のアプローチとしては、笑顔でアラームを止める目覚まし時計や、スマートミラーなども有効かもしれない。スマイル割引やクーポンなども考えられる。

この分野は、業界的には未開拓ゾーンなので、自分の今年のテーマにしてみようかなと思う。 この分野がユートピアに続くのか、ディストピアに続くのかはわからない。幸福は義務です。市民、あなたは幸福ですか?