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瞑想
Meditation
英語版最終改訂年月(翻訳時):2010年6月
瞑想は補完代替医療(CAM)における心身療法の一つです。現時点では通常医療の一部とはみなされていない、さまざまな医学・医療ケアシステム、施術および製品を総称したものです。補完医療は従来の医療と併用されており、代替医療は通常医療の替わりとして用いられています。瞑想には様々な種類があり、その多くが古代宗教や精神的伝統に由来します。通常、瞑想する際には、特定の姿勢や精神統一法、雑念に対する開放的な態度といった特定の技法を用います。瞑想を行う理由は様々で、平常心や身体的なリラックス感を高める、精神的なバランスを改善する、病気と向き合う、全般的な健康状態を高める、などが挙げられます。ここでは瞑想の概略として背景を説明しましたが、さらに詳細な情報を提示していきます。
キーポイント
- 人々は様々な健康上の理由から瞑想を行います。
- 瞑想中に体内でどのような変化が生じるのか(健康上の影響があるとすれば、どのようなものであるか)は完全には明らかになっていません。瞑想の効果、作用、そして瞑想療法の高い効果が期待できる疾患や症状に関する研究が行われています。
- あなたが行っている補完療法をすべてのかかりつけの医療スタッフに伝えてください。健康管理のためにあなたがどんなことをしているのか、すべて話しましょう。それによって連携のとれた安全な治療が受けられるでしょう。
はじめに
「瞑想」という言葉は、マントラ瞑想、リラクゼーション反応、マインドフルネス瞑想(呼吸法に焦点を置いた瞑想法の一種で存在への「気づき」を高めるために編み出されたもの。健康増進のためのストレス軽減および感情のコントロールを目的としています。)や仏教の禅といった一連の技法を指します。これら瞑想法の多くは東洋の宗教または精神的伝統から発祥し、技法は何千年もの間、世界中の様々な文化圏で利用されてきました。今日では、本来の宗教や文化的範疇を超えて、多くの人が心身の健康と幸福のために瞑想を利用しています。
瞑想では、精神統一法を学びます。ある種の瞑想法では、思考や感情、感覚に意識を集中し、それらを無評価に観察することを生徒に教えます。この技法により、落ち着きや身体的なリラックス効果、精神的なバランスが高まると考えられています。瞑想療法により、感情や思考との関わり方を変えることができます。
瞑想法の多くには、次の4つの要素が共通しています。
- 静かな場所
- 通常、瞑想はできるだけ気が散らない静かな場所で行います。これは特に初心者において重要です。
- 特定の心地よい姿勢
- 瞑想療法の種類にもよりますが、座る、横になる、立つ、歩行などの姿勢を取りながら瞑想を行います。
- 精神統一
- 通常、精神統一は瞑想法の一部です。例えば、瞑想ではマントラ(特別に決められた単語または語句)、物体、または呼吸の感覚に集中します。瞑想の種類によっては、何であれ意識の主体を占めるものに注意を集中します。
- 開放的な態度
- 瞑想中の開放的な態度とは、雑念に判断を持ち込まず、あるがままに去来させます。集中力が阻害されたり注意力が散漫になったりした場合は、瞑想者はそれを抑え込まず、やさしく集中していたものに戻ります。瞑想法によっては、思考や感情を「観察」することを学びます。
CAMにおいて瞑想は心身医療*の一種として利用されています。通常、心身医療は次の2点に重点を置いています。
*心身医療:脳、心、身体および行動の相互作用に注目した医療で、心を利用して身体機能に影響を与え、健康増進を図ります。瞑想やヨガなどがこれに該当します。
- 脳あるいは心、それ以外の身体、そして行動との間に生じる相互作用。
- 感情、心理、社会、精神、行動に関する因子が健康に対し、直接的にどのような影響を与えるか。
米国における健康のための瞑想の現状
2007年に行われた、米国成人23,393人を対象としたCAMの利用に関する米国政府調査では、回答者のうち9.4%(2000万人以上に相当)が過去12カ月間に瞑想を利用していました。比較対象として、2002年に実施された同様の調査では7.6%(1500万人以上に相当)でした。2007年のCAM利用に関する調査では9,417人の小児も対象としており、1%(725,000人に相当)が過去12カ月間に瞑想を利用していました。
瞑想は、次のような様々な健康上の問題に利用されています。
- 不安感
- 痛み
- うつ病
- ストレス
- 不眠症
- 慢性疾患(心臓病、HIV/AIDS、がんなど)およびその治療と関連している可能性のある身体的または心理的症状。
瞑想は全般的な健康増進のためにも利用されています。
瞑想療法の例
マインドフルネス瞑想と超越瞑想(またはTM)は共通点の多い瞑想法です。NCCIHが支援する研究プロジェクトでは、この2種類の瞑想法を研究しています。
マインドフルネス瞑想は仏教の重要な要素です。マインドフルネス瞑想に共通する技法の一つでは、瞑想者は体内に出入りする呼吸の流れの感覚に意識を集中するよう教えられます。瞑想者は今経験していることに反応したり判断したりせず、注意集中することを学びます。これは、日常生活において瞑想者が思考と感情のバランスや、受容を高めるのに大変役立つと考えられています。
TM法はヒンドゥー教に由来します。この瞑想法ではマントラ(静かに復唱する単語、音、または語句)を用いて心に入り込む雑念を追い払います。TMの目的は開放された気づきの状態に達することです。
瞑想の効果について
瞑想療法は、身体に変化を及ぼすことが明らかになっています。研究者らは、瞑想中に体内で起こっていることがさらに解明されれば、瞑想が奏効する可能性のある疾患や症状を特定できるのではないかと期待しています。
ある種の瞑想は自律(不随意)神経系に作用します。この神経系は多数の器官や筋肉を支配しており、心拍、発汗、呼吸、消化などの機能を制御しています。この神経系は大きく2種類に分けられます。
- 交感神経系は身体の運動をつかさどります。ストレスを感じると、「闘争・逃走反応」を生じます。心拍数と呼吸数は上昇し、血管は収縮します(血流量を低下させます)。
- 副交感神経系は心拍数と呼吸数を低下させ、血管を拡張させ(血流量を増加させ)、また、消化液の分泌を促進します。
ある種の瞑想には、交感神経系の働きを抑制し、副交感神経系の働きを促進する作用があるかもしれないと考えられています。
ある研究分野では、精巧な装置を用いて、瞑想が脳機能の有意な変化に関連しているかどうかを研究しています。研究者の多くが、様々な瞑想の効果により脳機能の変化が起きていると考えています。
また、瞑想の効果は注意力の向上によって得られている可能性もあります。注意力は日常作業の遂行や感情のコントロールに関わっているため、他にも瞑想の効果が認められるかもしれません。
2007年にNCCIHの助成により実施された科学論文のレビューでは、瞑想が健康上有益と考えられる変化に関連している可能性を示唆するエビデンスを見出しました。しかしながら全面的に支持する結論には達しませんでした。レビュアーらは、確実な結論を導くためには、今後、さらに厳密な研究を行う必要があると述べています。
副作用とリスク
瞑想は健康な人には安全であると考えられています。特定の精神疾患を有する人では稀に症状を引き起こし悪化させることが報告されていますが、この問題については十分な研究がなされていません。身体的制約がある人は、運動を伴う一部の瞑想に参加できないこともあります。精神的あるいは身体的な健康状態に問題がある人は瞑想療法を開始する前に医療スタッフと話し合い、瞑想インストラクターが病状を把握できるようにしておきましょう。
瞑想の利用をお考えの方に
- 通常医療の治療の代わりに瞑想を利用する、または、病的疾患について医療機関を受診することを先送りにするために、瞑想を利用しないでください。
- あなたが検討している瞑想インストラクターの訓練歴や経験について調べましょう。
- あなたが関心のある健康状態に対する妄想の効果に関して、研究論文を探してみてください。
- あなたが行っている補完療法をすべてのかかりつけの医療スタッフに伝えてください。健康管理のためにあなたがどんなことをしているのか、すべて話しましょう。それによって連携のとれた安全な治療が受けられるでしょう。
医療スタッフに補完療法について話す際のポイントについては、NCCIH’s Time to Talk campaignをご覧ください。
【補足】
NCCIH’s Time to Talk campaignの翻訳サイトは以下を参照してくださいNCCIHによる研究助成
NCCIH(国立補完統合衛生センター[米国])による援助を受けた最近の研究には、次のようなものがあります。
- 高齢認知症患者の介護者のストレス緩和
- 更年期女性におけるホットフラッシュの回数や重症度を軽減
- 慢性背部痛の症状を軽減
- 認知能力(注意力、集中力および優先順位決定力)を改善
- 喘息の症状を軽減
参考文献
Sources are drawn from recent reviews on the general topic of meditation in the peer-reviewed medical and scientific literature in English in the PubMed database, selected evidence-based databases, and Federal sources.
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さらなる情報
■ NCCIH 情報センター
NCCIH情報センターは、NCCIHに関する情報、および科学論文・医学論文の連邦データベースの公開や検索などの補完療法に関する情報を提供しています。情報センターでは医学的なアドバイス、治療の推奨や施術者の紹介は行いません。
Toll-free in the U.S.: 1-888-644-6226
TTY (for deaf and hard-of-hearing callers): 1-866-464-3615
Web site: nccih.nih.gov
E-mail: info@nccih.nih.gov
■ PubMed®
国立医学図書館(NLM)[米国]のサービスであるPubMed®には、公表文献の情報および(ほとんどの場合)科学・医学雑誌の論文からの短い要約が掲載されています。
Web site: www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed
■ NIH Clinical Research Trials and You(NIHクリニカル・リサーチ・トライアル・アンド・ユー)
国立衛生研究所(NIH)[米国]が開設したウェブサイトです。一般の人々に、臨床試験の重要性や、どうすれば臨床試験に参加できるのかを知ってもらうために開設されました。サイトには、臨床試験に関する質問と回答、臨床試験の情報を探す方法(ClinicalTrials.govなどの情報検索サイトやその他の情報源)、臨床試験に参加した人の体験談などが掲載されています。臨床試験は、病気を予防、診断、治療するうえで、よりよい方法を見つけ出すために必要な試験です。
Web site: www.nih.gov/health/clinicaltrials/
監訳:伊藤壽記(大阪大学)、大野智(帝京大学) 翻訳公開日:2014年3月28日
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