kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2016年02月21日

デマと選挙と米民主党

米民主党のサンダース対クリントンの支持者のTwitterでの戦い(情報戦)が、党首選のときの英労働党のコービン支持者対ニュー・レイバー/ネオコン支持者のそれ以上に、醜い。

個人的に、米国の政治には別に興味はないし、各政党の候補者選びの段階で国際報道するなよと思っているくらいなのだが、米国だけでなく英国のメディアも日本のメディアも大々的に取り上げるから、どうしたって目に入ってくる(今日だって、ネヴァダでクリントンがかろうじて勝ったというヘッドラインが、複数の報道機関からガンガン流れてきている)。目に入ってくれば、ある程度は気になる。そして知ったのが、クリントン陣営がばらまいている「デマ」だ。ヒラリー・クリントンの「デマ」戦術は、2008年、最終的にバラク・オバマが民主党の大統領候補に選ばれたときにもあったことで(「北アイルランド和平はあたくしがいなければ実現されなかった」というデマはまだかわいいほうで、「サラエヴォの空港に降りたったらガンマンの銃撃を受け、銃弾をかいくぐって云々」という虚偽も喧伝されていた)、そういった戦術をとるのは、別にクリントンに限ったことではないだろう。

さて、今回の発端はどなたかがRTしていたこのツイート経由で見たSnopes.comの記事。Snopes.comといえば「ネット上の不正確な噂やデマの検証」なので、民主党の中のごちゃごちゃそれ自体には関心がない私でも、ちょっと見てみようかなと思ったわけだ。その記事が下記。

Raucous Caucus
Activist Dolores Huerta sent a tweet claiming Bernie Sanders supporters shouted 'English only' at her, but witnesses gave conflicting accounts.
http://www.snopes.com/sanders-english-only-huerta/




何があったかというと、ネヴァダ州での民主党の党員集会で、Dolores Huertaという名前のヒスパニックの活動家の人(詳しいことは私は知らない。有名な人なのかどうかも知らないという程度に何も知らない)がスペイン語に通訳しようとしたら、サンダースの支持者たちが「英語だけで」と叫んだという主張がなされているが、そんな事実は確認できないという話だ。

最初にその主張をしたのはHuerta氏ではなく、America Ferreraという女優(私は知らない。名前を聞いたこともないが、アメリカでは有名な人かもしれない)。彼女が自身のTwitterのアカウントで「ドロレス・フエルタがスペイン語に通訳しようとしたら、サンダースの支持者が『英語だけで』とチャントして制止した」と述べた。それが拡散された(「騒動」が収まったあと、3000件を超えるRTを得ている)。





America Ferrera氏のツイートから1時間ほど後に、Huerta氏本人のアカウントからもツイートがなされた。これも大拡散された(RTは3000件超)。





(フエルタ氏という人は、この "Si Se Puede!" というスローガン(意味は "Yes, it's possible")を、1970年代に唱えた労働運動の活動家だということを、そのスローガンを調べて知った。なお、このスローガンは商標登録されているそうだ。)

America Ferrera氏のツイートには、今はもうたくさんの「それは嘘だ」という指摘のリプライがついているが、さかのぼると、彼女の発言を額面どおりに受け取っている反応がいくつかあることが確認できる。Ferrera氏のツイートが7:07だが、その5分後には「これはよくない。残念です」というリプライがあり、さらに7:45にはMoveOn.org(民主党の草の根組織のひとつ)が「もし報告が正確なら」という条件付きで「恥ずべきことで、まったく受容できない」と述べている。



詳しく調べようと思えばいくらでも調べられるが、あまりつっこまない。

そして、America Ferrera氏のツイートから1時間ほどあとに、「嘘です」とリプライしたのが、その場にいたErin Cruz氏。




Cruz氏のリプライのころには、「サンダース支持者がヤジってヒスパニックの活動家の通訳を阻止した」説がネットでかなり出回っていたようだ。Cruz氏のツイートのあとのやり取り。



一方で、Ferrera氏の最初のツイートから6分後には「それが事実であるというビデオはあるのか」という問いかけがなされている。が、Ferrera氏からの反応はなかったようだ(ツイートが削除されていないという証拠があれば、「なかった」と断言してよいのだが)。



Erin Cruz氏は続けて8:10に、「モデレーター(1人)が『英語だけで』と言ったが、サンダース陣営からは誰もそうは言っていない」と述べ、スーザン・サランドンなど大物のサンダース支持者にメンションを飛ばして事態を知らせている。




こうして「騒ぎ」は広まった。「サンダース支持者たち(複数)がやじった」というFerrera氏の発言が正確なのか、「モデレーター(1人)がそう発言した」というCruz氏の発言が正確なのかは、そのときの様子を録画していた映像が出てきたことで、誰でも検証できるようになった。




確かに場内は騒然となっているが、騒然としているのは「フエルタさんは中立の通訳者ではない」ということへの抗議だという。(フエルタ氏はヒラリー・クリントン支持者であることが広く知られている。)最終的には、中立の通訳者が見つからなかったので、モデレーターが「じゃあ英語だけでやりましょう」と結論を出した、ということだ。

As Sarandon correctly stated, the segment in dispute started around the 53:30 mark, when parties called for a Spanish-language translator. As she indicated, at 55:18 the caucus moderator (not Sanders' supporters) simply stated that the inability to locate a neutral translator meant the caucus would continue in "English only." At no point did any Sanders supporters appear to have refused a translator based on the fact that translation was objectionable to them; nor was "English only" used in a pejorative fashion.

http://www.snopes.com/sanders-english-only-huerta/


それを「英語だけという叫び声がサンダース陣営からあがった」としてTwitterで(現場にいなかった人々に向けて)拡散するのは、現場の状況をよく把握してもいなかったのに断定口調で書いてしまったとかいう人為的な(あってはならないような)エラーでもなければ、デマの手口そのものだ。「ヒスパニックは話をきかなくてよい」という《差別》の問題にしてしまっているのだから。

……ということをSnopes.comの記事は説明している。ここに挙げたツイートのほかにも現場にいた人の証言なども入っているので、元記事を参照していただきたい。

で、そのあと、当事者たちはどうしているか。

「デマ元」となったAmerica Ferrera氏は、誰もそんなことは言っていなかったのに、単に勘違いして差別だ、差別だと騒いでしまった状態なのかもしれないが、問題のツイートを消すでもなく、情報を修正する発言をするでもなく、単に「Huerta氏がスペイン語通訳を阻止されたと発言している」(それ自体は嘘ではない。Huerta氏の発言はあるのだから)という見出しのハフィントン・ポストの記事をRTしているだけだ。



そして、客観的な証拠となるビデオを持ち出してきた超ビッグネームのスーザン・サランドンのツイートには、こういうリプライがついている。正直、私は唖然とした。スーザン・サランドンらがラルフ・ネーダーを支持したことが、ブッシュを当選させた? ネーダー支持者は常にいて、そして物の数には入ってなかったじゃない。



さらに、BuzzFeedがHuerta氏の言い分をそのまま見出しにしている記事のフィードにも、スーザン・サランドンに対する口汚い罵倒はつけられている。




それから、スーザン・サランドンのツイートに対するリプライのこれ。さっきのチンパンジー・アバターの人もそうだが、もうこれ、何の宗教だよ、という感じ。



ていうか、スーザン・サランドンの発言を何度読み返しても、フエルタ氏のことを「うそつき」とは言ってないんだけど。

こんなふうに、本当にフエルタ氏の言っていることが単に事実に照らして正しくないことがあるということすら認められない人(フエルタ氏が「真っ黒なカラス」を「白い」と言えば、「白い」と信じるような人)にも1票はある。

選挙は「数」(多数決)だから、こういう「妄信的な信者」としか言いようのない人でも、「数」に入ってくれればいい。そういう「信者」をいっぱい抱えている活動家を自陣に抱きこむことが、候補者にとっては勝利の秘訣(の一つ)だ。

生臭い。

※この記事は

2016年02月21日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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