前回のつづき。
10種の食材をアルコール度数96%の「スピリタス」に二晩浸して“アルコールだし!?“を取りました。
まずは、見た目から。抽出液の色がわかるように、真横からのアングルで。
昆布。
かつお節。
シイタケ。
にぼし。
ホタテ。
ビーフジャーキー。
ミックスナッツ。
卵黄。
桜エビ。
天津甘栗。
抽出液だけをチューブに移すと次のように。左から、昆布、かつお節、シイタケ、にぼし、ホタテ。
左から、ビーフジャーキー、ミックスナッツ、卵黄、桜エビ、天津甘栗。海老色、いいですね。
原液はすべて、強いアルコール臭しかしないので、水で10倍に薄めたものをテイスティングしました(それでもアルコールは10%弱ある)。私の主観の結果(におい、味、色、総合評価)は、次の表の通り。
| 食材 | におい | 味 | 色 | 総合評価 |
|---|---|---|---|---|
| 昆布 | ◯立ち上がる昆布香 | ◯味は感じる | 透明 | ◯ |
| かつお節 | ◎強い香り | ◯後を引く味 | かなり白濁 | ◎ |
| シイタケ | ✕ごくわずか | ✕味しない | 透明 | ✕ |
| にぼし | ◯魚臭さやや強い | ◯薄い甘さ | やや白濁 | ◯ |
| ホタテ | ◯良いホタテ香 | ◯味はそこそこ感じる | ごく薄い白濁 | ◯ |
| ビーフジャーキー | △やや臭みあり | ✕味はしない | 透明 | ✕ |
| ミックスナッツ | ◎強いナッツ香 | ◯甘い、コクあり | かなり白濁 | ◎ |
| 卵黄 | △硫黄臭 | ◯控えめの甘さとコク | やや濁った黄色 | △ |
| 桜エビ | △やや不快感のあるエビ臭 | △薄い甘さ | 透明 | △ |
| 天津甘栗 | △ごく薄い | ✕味はしない | 透明 | ✕ |
香りは、水でうすめると食材独自の香りが立ち上がってきます。水抽出よりも香気成分は強めです。
味は、強い香りに隠れてわかりにくいですが、鼻をつまんで口に含むと、その独自の味が感じ取れます。全体的には弱め。
原液はどれも透明ですが、水でうすめると、白濁するものが、かつお節、にぼし、ホタテ、ミックスナッツ、卵黄でした。アルコールに溶け、水には溶けない、脂質やタンパク質成分がスピリタスで抽出されたのでしょう。その中でかなり白濁したのが、かつお節とミックスナッツでした。
単純に水割りとして飲むなら、その二つが「かつお節酒」と「ナッツ酒」として完全に成立します。とってもおいしいです。
ナッツの洋酒漬けはスイーツやパンなどに使われていたり、ナッツのリキュールがあったりするので、「ナッツ×アルコール」が合うのは当然なのかもしれません。個人的にかなり気に入ったのが、かつお節のお酒。実においしいです。今度ソーダ割りにしていただくことにします。水に溶けない白濁成分においしさの元があるのかもしれません。
食材のだしの出方は、食材の大きさや粉砕具合、またアルコールへの浸漬時間、アルコール度数などによっても変わってくるはずです。天津甘栗は、荒く砕いて漬けましたが、粉状にすればまた結果は変わったかもしれません。家庭でのお遊び実験なので、条件検討はできません。
また今回、総合評価が高くなかった「アルコールだし」は香りが強いので、仕上げの料理にちょっとふりかけるだけでもぐっと深みが出ると思います。たとえば、「ジャーキーアルコールだし」を焼き上げたステーキにかけたり、「にぼしアルコールだし」を数滴でも味噌汁にたらせば、高貴な香りが広がり、食事の満足度が飛躍的に上がるかもしれません。
純度の高いアルコールで抽出したものは、食材の香りを際立たせるための「香り仕上げ調味料」としての利用が適している気がします。
さて、この食材をほぼ100%アルコールで抽出した原液を濃縮したらどんなものになるのでしょうか?香りは全部飛んでしまうのでしょうか、味は濃くなるのでしょうか?
また次回に、つづく。