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入札1企業体のみ7割 指摘後も改善なし

環境省が発注した本格除染の落札状況

2012〜15年度の29件

 東京電力福島第1原発事故に伴って環境省が2012〜15年度に実施した本格除染29件の一般競争入札で、一つの共同企業体(JV)が入札して落札した「1者応札」が22件と7割超を占めていることが毎日新聞の調査で分かった。14年に外部識者の委員会が競争性の確保を求めたが、15年度は逆に全4件とも1者応札だった。専門家は「国は複数業者を競争させる工夫が足りなかった」と指摘している。

     環境省の入札関連資料によると、12年度は本格除染9件中6件で複数のJVなどが競争したが、13年度以降の20件では福島県富岡町内の1件を除いて1者応札(入札表明後辞退含む)だった。また、除染が行われた11自治体のうち、自治体内を区域分けするなどして9自治体で複数回の入札があったが、富岡町を除く8自治体ではいずれも同じゼネコンが幹事のJVが落札していた。落札率(予定価格に占める落札額の割合)は99%以上が12件に上り、平均は97.6%で、同省発注工事全体の一般競争入札の落札率(14年度平均88.5%)に比べて高かった。

     大学教授や弁護士ら5人で構成する同省の入札監視委員会は14年7月に1者応札と高落札率について「もう少し競争性の確保できる取り組みを検討すること」と意見した。

     同省福島環境再生事務所によると、入札方法は一般競争入札の総合評価方式で、金額のほか、工法や地域貢献などを点数化して決める。同事務所は1者応札が多い理由を「不明」としつつ「工事の内容や現場の特殊性などが考えられる」としている。高落札率については「初めての事業で工事の見積もりが困難と考え積算基準などを公表したので、高い精度で予定価格を類推できる」と話した。

     一方、除染を実施しているゼネコンの関係者は1者応札の多さについて「除染では地元と良い関係を築いたところが評価点も高い。頑張って入札に参加しても無駄になる」と自治体ごとのすみ分けを示唆した。JV幹事のゼネコン各社は取材に、「わからない」などと答えた。

     除染の費用は、環境省が肩代わりした後、東京電力に請求する。国への返済には、国が1兆円を出資した東電株の将来の売却益が充てられる。株価が低迷すれば、電気料金の値上げなどで賄われる電力各社などの負担金が注入される可能性がある。法政大大学院の武藤博己教授(行政学)は「除染は特殊な機械や専門技術を必要としない。入札までの準備期間を長くしたり、業者に入札に参加するよう要請したりして、何らかの対策を講じるべきだった」と話している。【関谷俊介、小林洋子】

    ことば【 国直轄の本格除染】

     除染の効果的な方法を探るため実施したモデル除染の後、2012年度に始まった。対象は福島第1原発に近い11市町村。市町村ごとに策定した計画に基づき環境省が実施する。帰還困難区域を除いて6市町村で完了し、残り5市町村でも来年度中に完了する方針。落札額は29件で計約6100億円。

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