編集委員・清川卓史、森本美紀
2016年2月21日11時48分
「あらゆる手を尽くしたがうまくいかず、私の心がおかしくなりそうだった」。千葉県の保育士の女性(48)は、レビー小体型認知症の義父(75)が車の運転をやめてくれず、苦しんだ。
義父は、女性の家から車で1時間半ほどかかる農村部で一人暮らしだった。最寄りのコンビニまで約2キロ、スーパーまで約4キロ。バスは不便で、買い物や農作業のため、乗用車と軽トラック、トラクターの3台を使っていた。
症状が出始めたのは2012年の年末、義母が亡くなった後だ。認知症の薬を処方され、医師に「絶対に運転しないと約束して」と言われると、義父は「はい」と答えた。だが実際にはやめなかった。それを医師に伝えて強く説得してもらっても「運転できる」と言い張った。
そのうちレビー小体型認知症の特徴である幻覚が出た。女性が訪ねると、軽トラの前後がへこんでいた。他人の敷地の木に衝突して折ったこともある。
「もうやめてください。誰かを巻き添えにしたらどう責任をとるんですか」。夫(49)といさめるたびに義父は激高した。「うるさい。田舎は車がなかったら生活できないんだよっ」
廃車や売却を役場で相談すると、無断での処分は無理だろうと言われた。自動車工場では「バッテリーかタイヤを外すか、鍵を隠すしかない」と言われた。
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朝日新聞社会部
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