志村英司
2016年2月21日08時46分
愛知県の知多半島沖に浮かぶ日間賀島(ひまかじま)が、20年前に始めた「とらふぐの本場」のアピールに本腰を入れている。国内有数の漁場である伊勢湾と三河湾に囲まれ、島の宿では市価より安く冬の味覚を提供してきた。トラフグは水揚げ量の波が激しいが、供給を安定させる「縁の下の力持ち」がいた。
■観光協会長「売り上げの6割はふぐ」
「福(ふぐ)来る!」。名古屋から1時間半、日間賀島の西港で高速船を降りるとトラフグののぼりが迎える。旬の今は平日もふぐ目当ての客でにぎわう。島の観光協会長の鈴木甚八さん(67)は「日間賀島はたこが有名で『多幸(たこ)の島』と宣伝してきたが、自分が経営する宿は年間売り上げの6割はふぐ」と話す。
島を拠点にするフグ漁は100年の歴史があるが、かつて料理を出す宿はわずかだった。転機は1989年の九州近海の不漁で、下関(山口県)はじめ各地から注文が殺到したことだった。「日間賀のふぐ」は島で観光資源として意識されるようになり、旅館やホテルはふぐを扱う調理師を育てだした。
沿線の「名物」を探す名古屋鉄道とのグルメ企画も始まった。「ふぐづくしプラン」は始まった96年に約2500人を集め、近年は約1万3千人台。名鉄沿線から日帰りの標準プラン(1万1800円)は「ほぼ料理の値段で鉄道と高速船も乗れ、リピーターが多い」(名鉄の担当者)。
■安定供給で集客アップ
集客が伸びた背景に東海の漁場からの安定供給がある。愛知、三重、静岡3県が10年以上前から、取れた小型魚を再放流するなど資源管理に取り組んでいた。
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朝日新聞社会部
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