防火地域・準防火地域・法22条区域で木造の家は建てれる?

建築基準法のイメージ画像byいくらチャンネル

あなたが不動産に関わるとき「防火地域」「準防火地域」「法22条区域」のいずれかの言葉を必ず聞くことだろう。

これはあなたの住む建物部分の建材などの制限を決める不動産において重要な決まりの一つだ。

当然不動産価格にも関わってくる。

用途地域の他に様々な地域地区があり、必要に応じて都市計画が定められており、ここでは建築基準法の防火地域・準防火地域・法22条区域について説明する。

 

防火地域・準防火地域・法22条区域とは?

都市を火災から守ることは都市計画の重要な役目の一つだ。市街地における火災の被害拡大を防ぐために「防火地域」・「準防火地域」が指定されている。建物の規模によって耐火建築物や準耐火建築物にする必要がある。なお、防火地域か準防火地域以外の地域でも市街化区域については「法22条区域」となっていることがほとんだ。

あなたの住んでいる地域が上記のどれに属しているかを知りたければGoogleYahoo!で「◯◯市 防火地域」と検索すれば調べることができる。

防火地域画像byいくらチャンネル

 

防火地域の制限

都市の中心市街地や主要な駅前、主要な幹線道路沿いなど、多くの建物や商業施設が密集し、火災などが起これば大惨事になりかねない地域では、建物の構造が厳しく制限されている。木造の建築物は小規模なものであっても、原則として建築することはできず、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造などの「耐火建築物」でなければならない。ただし、地階を含む階数が2以下で、かつ、延べ面積が100㎡以下の建築物は「準耐火建築物」でもよい。

「耐火建築物」や「準耐火建築物」については末尾で説明する。

商業地域では防火地域に指定されていることが多く、例えば駅近の商業地域で木造の建物を建てるための土地を探していてもほとんど意味がないということになる。防火地域内においても、一定の耐火性能を有するものとして国土交通大臣の認定を受けたものであれば、近年木造住宅などを建築することができるようになったが制限が厳しい。(枠組壁工法が平成16年4月、在来軸組工法が平成18年10月に認定されている。)そのため、事前に調査しておくことが必要だ。

耐火建築物または準耐火建築物としなければならない建築物
1階・2階(地階を含む) 3階以上(地階を含む)
延べ面積100㎡超 耐火建築物 耐火建築物
延べ面積100㎡以下 耐火または準耐火建築物

次に該当するものは、耐火建築物または準耐火建築物としなくてもよい。

  • 延べ面積が50㎡以内の平屋建ての付属建築物で、外壁および軒裏が防火構造のもの
  • 高さ2m以下の門または塀
  • 高さ2mを超える門または塀で、不燃材料で造り、または覆われたもの

 

準防火地域の制限

準防火地域は防火地域の外側の地域に指定されることが多く、防火地域よりも制限は緩やかになっている。準防火地域内では防火地域と異なり、木造の建築物でも延べ面積500㎡以下なら、一般的な木造2階建てや一定の基準に適合する木造3階建ても建てることができる。

耐火建築物または準耐火建築物としなければならない建築物
1階・2階(地階を除く) 3階(地階を除く) 4階以上(地階を除く)
1,500㎡超 耐火建築物 耐火建築物
500㎡超1,500㎡以下 耐火または準耐火建築物 耐火または準耐火建築物または技術的基準適合建築物
500㎡以下 規制なし

準耐火建築物を除く準防火地域内の木造建築物で、延焼のおそれのある部分の外壁や軒裏は、防火構造としなければならない。

防火地域、準防火地域に共通した建築制限は以下の通りだ。

屋根 建築物の屋根で耐火構造または準耐火構造でないものは不燃材料で造り、またはふかなければならない。
開口部 耐火建築物または準耐火建築物以外の建築物は、その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の防火設備を設けなければならない。
外壁 外壁が耐火構造の建築物は、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。

上記の外壁については、建築基準法65条のいわゆる「敷地境界線に対する特則」というものだ。民法の規定では隣地境界線から50cm以上離さなければならないとしているが、都市部で実際に住宅を見渡すと、隣地と隙間なく建てられているケースが見受けられるのはこの特則ということになる。あくまでも特則なので、無制限にオッケーということではなく、これにより隣地でトラブルにつながることも多いため注意が必要だ。

 

法22条区域(屋根不燃区域)の制限

建築基準法22条指定区域とは、準防火地域の外側にある地域で、建築基準法第22条に基いて特定行政庁が区域を定める。屋根を不燃材で造るか、または不燃材でふくことを義務づけられた区域で「屋根不燃区域」・「屋根不燃化区域」とも言われている。なぜ屋根なのかというと炎は上に上がるため、火事を防ぐための重要なポジションとなっている。法22条区域を簡潔に言うと、屋根に燃えにくい建材を使用している地域ということだ。

 

建築物が異なる地域にまたがる場合

建築物が、防火地域・準防火地域・法22条区域・これらの地域の指定がない区域にまたがる場合には、建築物全部は防火上の制限がもっとも厳しい地域の規制が適用される。ただし、制限の緩やかな地域に属する部分に防火壁を設けた場合は、厳しい地域の規制は適用されない。

 

防火用語について

防火に関する用語を以下にまとめた。

用語 意味
1 耐火建築物 主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根または階段)を耐火構造(鉄筋コンクリート造、れんが造等)とした建築物で、外壁の開口部で延焼のおそれがある部分に規定の構造の防火戸その他の防火設備を有するものをいう。
2 準耐火建築物 耐火建築物以外の建築物で、主要構造部を準耐火構造(耐火構造以外の構造で、耐火構造に準ずる規定の耐火性能を有するもの)または準耐火構造および耐火構造としたもの、ならびにこれと同等の耐火性能を有するものとして主要構造部の防火の措置等が規定の技術的基準に適合するもので、外壁の開口部で延焼のおそれがある部分(隣地または別棟の建築物が火災の際、燃え移る恐れのある部分)に規定の構造の防火戸その他の防火設備を有するものをいう。
3 防火構造 鉄網モルタル塗、しっくい塗等の構造で規定の防火性能を有するものをいう。防火構造は、延焼防止等の性能を持つものだが、耐火構造のように火災後の再使用を目的とはしていない。火災時にその拡大を防止することができればよいとしている。
4 延焼のおそれのある部分 隣地境界線、道路中心線または同一の敷地内の2以上の建築物(延べ面積が500㎡以内の建築物は1つの建築物とみなす)相互の外壁間の中心線から、1階にあっては3m以下、2階以上にあっては5m以下の距離にある建築物の部分をいう。ただし、防火上有効な公園、広場、川等の空地もしくは水面または耐火構造の壁その他これらに類するものに面する部分を除く。
5 耐火構造 鉄筋コンクリート造、れんが造等の構造で規定の耐火性能を有するものをいう。
6 準耐火構造 耐火構造以外(木造等)の構造であって、耐火構造に準ずる規定の耐火性能を有するものをいう。
7 不燃材料 耐火構造以外(木造等)の構造であって、耐火構造に準ずる規定の耐火性能を有するものをいう。
8 防火戸 建築物の外または建築物の内の開口部を閉鎖することによって他の部分とを区画し、相当時間火災を遮断し、延焼を防止するための扉や窓のことをいう。
9 主要構造部 防火の観点から建築物の骨格を形成している主要な部分で、壁、柱、床、はり、屋根または階段をいい、建築物の構造上重要でない間仕切壁、間柱、附け柱、揚げ床、最下階の床、廻り舞台の床、小ばり、ひさし、局部的な小階段、屋外階段その他これらに類する建築物の部分は除く。なお、主要構造部は「構造耐力上主要な部分」とは異なる。

余談だが、防火に優れているということはその分建材費用は高くなるということだ。そのため、火災保険が燃えにくい建材で使われている建物に対して安くなるのは、当然と言えるだろう。