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EU離脱賛否問う国民投票 英の世論二分する議論に
2月21日 4時30分

イギリスのキャメロン首相は、イギリスが、EU=ヨーロッパ連合から離脱すべきか賛否を問う国民投票を、ことし6月23日に実施することを決め、みずからはEU残留を訴えていく考えを明らかにし、イギリスの世論を二分する議論となりそうです。
イギリスは、EUのほかの加盟国からの移民の急増に対する国民の不満などを背景にEUに改革を求め、19日にEU首脳会議で採択された改革案では、移民を抑制するため、移民に給付する社会保障費を制限できることや、EUの進める統合政策の対象にならない特別な地位を持つことが認められました。
これを受けキャメロン首相は20日、EU離脱の賛否を問う国民投票をことし6月23日に実施することを決め、「大きな決断の時が近づいている。イギリスは、改革後のEUの中でより安全で強く、豊かになるだろう」と述べ、みずからはEU残留を訴えていく考えを示しました。
一方、離脱を支持する人たちについて、「統一市場との自由な貿易を続けられるか、雇用は確保されるか、明らかにできていない」と述べ。けん制しました。
イギリスの最新の世論調査では、EU離脱と残留の支持率はきっ抗していて、今後、EUの将来に影響する可能性もある国民投票に向けて、イギリスの世論を二分する議論となりそうです。

残留か離脱か 英国民は

国民投票についてEU残留支持の男性は「大きなグループの一員であることは、経済や貿易面だけでなく政治面でもよいことだ」と話していました。
一方、離脱支持の男性は「イギリスからEUへの多額の拠出金を払わずに済み、それをイギリスのために使えるようになる」と話していました。

国民投票 その背景は

イギリスは、EUの加盟国でありながら、国の主権を保とうとする意識が強く、EUが進める通貨や市場の統合などに、一定の距離を保ってきました。通貨は国家経済の要だとして単一通貨ユーロを導入せず、ポンドを継続して使用する例外をEUに認めさせていることなどがその一例です。
3年前、キャメロン首相は、EU離脱を巡る国民投票の実施を表明しました。この時強調したのも、EUでのイギリス独自の立場を守ることでした。当時、ヨーロッパ経済は、ユーロ危機の影響がくすぶり、その克服のため、EUの統合をさらに進めて対処しようという議論が勢いを増していました。与党・保守党でEUに懐疑的な議員たちは、こうした議論に警戒感を強め、対応を迫られたキャメロン首相は、EU離脱か残留かの議論に政治的な決着をつけるため、EUに改革を求めたうえで、直接国民に問うことにしたのです。
ただ、その後焦点となったのは、東ヨーロッパなどEUのほかの加盟国からイギリスに来る移民の問題でした。EUは、ヨーロッパに統一した市場を作るため、「域内での人の移動の自由」を原則に掲げていて、いち早く景気回復を果たしたイギリスにはEUのほかの加盟国からの移民の流入が加速し、毎年20万人を超える水準で推移するようになりました。去年のイギリスの総選挙を前に、「移民規制」を掲げる右派政党が支持を広げたこともあり、キャメロン首相は支持をつなぎ止めようと、移民の抑制策についてもEUとの協議を迫られました。
総選挙後、EUとの協議を本格化させたキャメロン首相は、移民急増への対応策や、イギリスがEUの政治・経済の統合政策の対象にならないことなどが盛り込まれた改革案が、EU首脳会議で採択されたことを受け、ことし6月に国民投票に踏み切ることを決めました。

難民流入 本格化する夏場を前に実施

キャメロン首相が、ことし6月23日を国民投票の実施日に決めた理由の一つが、内戦が続くシリアをはじめ中東などからヨーロッパへの流入が続く難民の問題です。
イギリスのEU離脱を避けたいキャメロン首相は、夏場に気候が安定し、難民の流入が再び本格化する時期を前に、国民投票を実施しようと考えたとみられています。
国民投票で焦点となるのは、ほかのEU加盟国からイギリスに来る移民で、中東などからの難民の問題とは直接関係はありません。ただイギリスの世論は、去年、大量の難民の流入を招いたEUの難民や移民政策に批判的で、こうした見方が、国民投票でEU離脱を支持する方向に作用することを警戒したとみられます。
また、キャメロン首相率いる保守党は、去年5月のイギリスの総選挙で議会下院で単独で過半数を獲得し、勝利しました。キャメロン首相としては総選挙の勝利からおよそ1年と、政治的な求心力のある間に国民投票を実施して、EU残留に導きたい考えです。
今月行われた6つの世論調査によりますと、EU残留支持は平均51%、EU離脱支持は平均49%で、ほぼきっ抗しています。
国民投票で国民が重視する項目では、EU加盟国からの移民の問題が最も関心が高く、イギリスの法律の優先など国の主権に関わる問題、経済への影響などが続きます。このうち移民の問題については、農場や工場、医療現場などで移民の働き手が欠かせない現状がある一方、移民に職を奪われたり、学校や公営住宅など公共サービスへの負担が増したりしいるという不満や、地域社会の急激な変化を招いているという不安の声があり焦点となっています。
経済の問題では、EUのさまざまな規制が企業の競争力を奪っているという批判がある一方、人口およそ5億というEUの巨大市場との自由な貿易を評価する声があります。イギリスをEUの巨大市場への窓口と位置づけて進出する外国企業も多く、日本からも1000社以上がイギリスに進出していて、国民投票の結果は、国の内外から注目されています。

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