ここから本文です

重力波検出のすごさ、子どもに説明できますか?

JBpress 2月20日(土)6時10分配信

  2015年9月14日9時50分45秒(世界標準時)、人類の観測装置が初めて「重力波」を捉えました。

アメリカ・ルイジアナとワシントンにあるLIGOの上空写真はこちら(JBpressのサイトに飛びます)

 アメリカにある2台のレーザー干渉計重力波観測装置「LIGO(ライゴ)」が、宇宙から到来した重力波を検出したのです。

 得られた重力波は、2個のブラックホールが衝突・合体した場合に予想される波形と合致しました。

 2個のブラックホールが13億年前に合体し、そのすさまじい衝突によって放射された重力波が13億年かかって私たちの銀河系に到達し、ごくわずかにLIGOを揺るがし、検出されたのです。世界の研究者は狂喜乱舞しました。

 さて、どこかの装置が奇妙な信号を受信したことが、どうして大ニュースなのか?  研究者はどこに興奮しているのか?  皆さんは子どもに聞かれたらどのように答えますか・・・。では、そのポイントを解説しましょう。

■ 驚きその1: アインシュタインすげぇ! 

 相対性理論は20世紀初めにアルベルト・アインシュタインが作り上げた重力理論です。

 相対性理論によると、私たちの住むこの時間と空間(合わせて「時空」)は、微妙に伸びたり、しわが寄ったりするのです。

 そのしわが寄った時空を物体が横切る際には、真っ直ぐ進めずに軌道が曲がり、すなわちこれが重力に引かれた物体の運動だというのです。

 時間と空間にしわが寄るとは、考えると脳にしわが寄りそうな奇妙な主張ですが、これは太陽の近くを周回する水星の軌道などをうまく計算できました。重力がきわめて強いところの物体の振る舞いは、ニュートンの万有引力の法則では説明できず、相対性理論が必要になるのです。

 相対性理論は、その後に見つかった中性子星、ブラックホール、超新星や、今回の重力波などの現象にも適用され、今なおその有効性は揺らぐことがありません。

 このような完成度の高い独創的な理論をほぼ独力で完成させた天才アインシュタインには改めて驚かされます。

■ 驚きその2:まさか重力波を検出できる日が来るとは! 

 重力波はきわめて微弱な波動です。LIGO は検出部の長さが4kmある巨大な装置ですが(写真参照)、重力波によって、この検出部の長さが“原子のサイズの100万分の1のそのまた1000分の1”程度変化します。重力波が検出部を通過すると、微妙に空間が伸び縮みし、検出部の長さの変化となって現れるのです。

 この、あるんだかないんだか分からないような、わずかな変化の検出には、非現実的なほどの超高精度が必要です。そのため研究者の誰もが「自分が生きてるうちは無理かな・・・」と思っていたのですが、それが本当に成功するとは!  というのが驚きです。

 重力波研究グループは、頑丈な地盤に巨大な実験施設をきわめて精密に建造し、振動をおさえ、低温に冷やして熱雑音を取り除き・・・その他限りない工夫をこらします。それでも発生する雑音の原因を探り、改善する作業を何年も行ない、次第に装置の感度を上げてきました。

 その果てしないとも思えた努力が今回の成果に実ったのです。

■ 驚きその3: ブラックホールは本当にあったんだ! 

 ブラックホールは、しばしばSFに登場するので名前は有名ですが、その正体は超強大な重力を持つ天体です。その強い重力のために光さえも脱出できず、真っ黒に見えます。これもまた相対性理論から導かれる常識外れの存在です。

1/2ページ

最終更新:2月20日(土)20時0分

JBpress

本文はここまでです このページの先頭へ

お得情報

その他のキャンペーン