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言語道断な丸山和也議員の「奴隷大統領」発言 現場で何が起きたのか

参議院憲法審査会筆頭幹事 風間直樹

 参議院憲法審査会(2016年2月17日)での丸山和也議員(自民)の「奴隷大統領」発言が問題になっています。 私は憲法審査会筆頭幹事として丸山議員の発言を現場で聞いていました。 発言は明らかに人種差別であり、オバマ大統領の尊厳を傷つけるものです。審査会で起きたことについて、正確な経緯を記しておきたいと思います。

 当日のテーマは「二院制:参議院と衆議院の関係(参議院として重視すべき役割)」。冒頭、お二人の参考人から20分ずつ意見を聞いた上で、希望する議員による自由討議(持ち時間1人8分間)の形で議事は進行。丸山議員の質疑は自民党質疑者の3番目で、審査会終了間際の15時20分頃でした。発言は「51番目の州に」というあたりからどんどん脱線。奴隷発言が出るに及び、私は「これはまずい」と感じました。速記録(未公開)を読むと、事後に丸山議員が主張する、奴隷制を克服した米国の歴史への敬意、オバマ大統領への畏敬は感じらません(大統領を「これ」と呼ぶなど)。自民党席から「暴言だ、やめろ」という野次が次々飛んだこともその証左です。質問を受けた参考人も当惑されたようで、荒井達夫参考人は答弁を留保しました。

 この日、丸山議員は様子が変でした。審査会に先立つ幹事会(同日)のこと。丸山議員も幹事(審査会運営上のいわば役員)として出席。私が愛知治郎筆頭幹事(自民)との合意事項として「審査会の審議が止まるようなことは避けたいので、発言には留意いただき円滑な運営に協力をお願いしたい」と報告すると、丸山議員が挙手し「風間幹事の報告の趣旨がよく分からない」。問題発言で審査会がストップしないよう配慮賜りたい趣旨だと回答すると、続けて江口克彦委員(おおさか維新)も「議事以外のテーマを発言することがないようお願いしたく、会長にも議事進行上ご留意いただきたい」と要望。こうしたやり取りをしていながら、丸山議員は問題となった発言を行うのです。

 米国ではこの発言がどう受け止められるか、米国在住の政治アナリストに尋ねたところ、発言のネット録画を見た上で次の返信がありました。『アメリカでは勿論、丸山議員の発したような言葉や言い方は「タブー」となっており、政治の世界でも一般社会でも口に出すことは赦されません。丸山議員の真意をただし、その答え次第で対応を検討されたらいかがかと思います』

 この事件を受け、憲法審査会幹事懇談会が急遽開催されました(2月18日)。丸山議員はその場に「真意の説明」に来たのですが、冒頭「皆さんにはご心配をかけ、お時間をいただき、ありがとう」から始まるその「説明」は謝罪でなく釈明でした。恐縮する様子もなく、発言を曲げて解釈をしている関係者にその誤りを正す、という姿勢。とりわけ「51番目の州」発言についての釈明は言っていることがよく分からず、更なる問題発言になりそうな気配。柳本卓治憲法審査会長(自民)が途中でこれを制止、会場を引き取らせるほどだったのです。

 報道によると丸山議員は『 幹事会後、野党の批判について「正直言って、あきれている。人種差別を乗り越えてきた米国は素晴らしいと言うことが批判されるのは不条理」と語り、議員辞職を否定した』(朝日新聞デジタル  2016年02月19日 08時56分 )。 それなら憲法審査会で「人種差別を乗り越えてきた米国は素晴らしい」と言えばいいのです。同席した与野党議員がそう解釈できない、明らかな人種差別発言だから問題になるのです。

 丸山議員が主張するように、発言が意図とは違い表現不足だったなら、誤解を与えたことに明確な謝罪をすべきです。しかし自身の思想と発言の乖離を理解できず、他者に責任を転嫁するようでは、国会議員としての責任・判断力を問われても仕方がない。「民主、社民、生活3党が議員辞職勧告決議案を参院に共同提出したことに対しても「良心において恥じることはない。受けて立つ」と言い切った」(毎日新聞2016年2月18日 22時14分)との報に至っては言葉を失いました。今後、憲法審査会幹事会で、丸山議員・自民党が求めている議事録発言削除が議題になりますが、こうした姿勢はその扱いに大きな影を落とすでしょう。

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