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アンノン・ゲーム

自作小説とドラマ感想を。ときどき、ちょっと辛口に-

主婦だってクイズ女王になれる

自作小説

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イラスト素材 : 13-Thirteen

 

久しぶりに視聴者が参加できるクイズ番組がはじまった。

題名は「あなたも億万長者」という。

 

20個の問題があるが、正解率によって賞金は異なってくる。

 

芸能人同士のどうでもいいバラエティに飽き飽きしていた諒子(りょうこ)は、

夢中になってTV画面を眺めていた。

 

「優勝すると賞金が2000万か・・・」

 

札束の山を想像しながら、思わず使い道まで考える。

 

最新型のパソコン、水で調理できる電子レンジ、

乾燥機つきの洗濯機といった家電はもちろん、

バッグや化粧品、洋服もたくさんほしいのだ。

 

月々の生活はなんとか食べていけるくらいだから、

彼女が思い描くのは、身の程知らずの欲といえよう。

 

諒子は不本意ながら専業主婦をしている。

 

2人の姉や仲のいい友達は、仕事と家庭を両立しているのだが、

コミュ障っぽい諒子は、どの職場でも長続きしないのだ。

 

おまけに手先も壊滅的に不器用である。

 

製造業の最前線で働く娘には、

「あまり無理しないほうがいいよ」と言われてしまった。

 

慰めなのかダメ出しなのか、どちらとも取れる言葉だった。

 

だが、そんな諒子も、ひとつだけ他人に自慢できることがあった。

それは「雑学」にやたらと詳しいことだ。

 

TVでは若い大学生がスラスラと正解を出していた。

諒子にとっては、どれも簡単すぎる問題である。

 

大学生は順調に質問に答え、12問目まで来た。

すると司会が「足利幕府の13代将軍は誰ですか?」と聞いた。

 

福沢諭吉が創設したという大学に通う彼だが、

その問いには答えることができない。

 

「えっと・・・足利義昭でしょうか」

「残念。義昭は15代将軍ですよ」

 

諒子は口元を押さえてにやりと笑った。

すると、彼女の夫が横からくちばしを挟んだ。

 

「おまえ、気持ち悪い笑い方をしてどうしたんだ?」

「あのね、お父さん。お母さんはクイズの答えを知っているんだよ」

 

母親がバカにされたのかと思い、娘はそう言った。

 

「本当かい?」

 

夫の問いに諒子は頷いた。

 

「うん、私にはわかるよ。足利幕府13代将軍は義輝っていうの。

彼はね、家来筋に当たる三好・松永の・・・」

「ああ、わかった、わかった。もういいよ」

 

立て板に水を流すが如く、諒子が喋ると、夫と娘はストップをかけた。

 

(まったく、この無駄な知識が生活の役に立てばいいのね・・・)

 

「宝の持ち腐れだよ」とため息をつくと、娘が声をかけてきた。

 

「ねえ、ねえ、お母さん!」

「えっ?なあに?」

「お母さんってさ、どうでもいいってゆうか、

人の知らないような知識だけは人一倍持ってるよね」

「うん、まあ・・・そうだけど」

「だったら、この番組に出なよ。お母さんならいい線行くかもよ」

 

娘はそう言って、父親のほうを向く。

 

「まあ、そうだな。下手なギャンブルをやるよりは、

確率が高いだろう。ダメもとでやってみれば?」

 

そんなこんなで話がまとまり、

諒子は「あなたも億万長者」に出ることになった。


雑学に詳しいというのは大きな武器になり、

彼女は19問をひとつも落とすことがなかった。

 

いよいよ最後の20問目だ。

 

「では、杉浦諒子さん、これが最後の20問目です。落ち着いて答えてください」

「はい」

「全天には88星座ありますが、この4つの中でない種類はどれでしょう?」

 

①獣

②鳥

③花

④川

 

諒子はしばし考えた。

さすがにこれだけはわからなかったが、直感に賭けることにした。

 

「花ですね。ばら星雲というのは聞いたことがありますが、星座はないです」

 

30秒ほど沈黙が流れた。

 

次の瞬間-

 

「おめでとうございます!20問正解、パーフェクトです!

杉浦さん、あなたは今日から億万長者ですよ!」


華やかなファンファーレとともに、諒子は拍手喝采に包まれる。

 

自分には少しそぐわない場所だと感じつつも、

諒子は不思議な達成感で満たされた。

 

その後。

 

諒子がカリスマ雑学主婦として、

お茶の間の人気者になったのは多くの人の知るところだ。

 

生活もはるかに良くなった。

 

芸は身を助けるとはよく言うが、

彼女はいま、無駄だと思っていた知識に感謝している。

 

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「時空モノガタリ」に投稿した掌編で、

テーマはギャンブルでしたが、これを書いたあとに退会しました。

 

最優秀作品になると、賞金が5000円いただけたんですが、

私の実力がないためか、まったく評価ポイントがもらえず、

日に日に書くモチベーションが下がっちゃったんですよ。

 

しかも、プロの絵本作家さんやライターさんたちが多数参加しており、

一介のアマチュアには敷居が高いところでした。

 

また、ディスるわけではないですが、

投稿済みの作品を編集する機能がなかったですし、

カクヨムのように章立てすることもできませんでした。

 

「時空モノガタリ」はツイッターのフォロワーであったので、

その縁で参加したものの、馴染むことができなくて残念でした。

 

現在、はてなつながりでカクヨムを使っていますが、

老舗の小説家になろうも併用したいと考えています。

 

いまのところ、読むのがメインになってますが、

あるとき、縦書きで書かれた作品に出会い、すごくカッコいいなぁ・・・と思ったんです。

 

もちろん、小説は見た目じゃなくて文章で勝負するものなんですが。

 

なかなか自分語りから抜け出せず、

まだまだ精進しなければならない文の道です。

 

でも、諦めず地道に取り組みたいと思います。