東京電力福島第1原発事故から5年となるのを前に、原子力規制委員会の更田豊志委員らが19日、同原発を視察した。更田委員は視察後、炉心から溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)について「70年、80年たってもまだやっていますという状態を望むのか。非常に大きな苦労をして取り出すのがいいか、議論がある」と述べ、取り出さない選択肢もあり得るとの見解を示した。
規制委員が燃料デブリを取り出さない選択肢に明確に言及したのは初めてとみられ、政府と東電の廃炉工程の見直しに影響する可能性がある。
燃料デブリの状態について更田委員は「(外部に)飛んでいくような放射性物質は抜けきっているし、発熱量もほとんどない」とし「取れるだけ取って残りは固めるなどいろいろな選択肢がある」と述べた。
また1986年にウクライナで起きたチェルノブイリ原発事故とは状況が異なるとし、同原発で実施している原子炉建屋全体をコンクリート製の構造物で覆う「石棺」は「現実的ではない」と述べた。
東電が進める汚染水対策の「凍土遮水壁」については「投資に見合う効果があるのか」と疑問を呈した。
視察には田中知委員も同行した。規制委は事故から5年がたつのを前に、田中俊一委員長ら全委員が13〜19日に現地を視察。この日が最終日だった。