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 マーシャル諸島で米国が1950年代に繰り返した核実験で被曝(ひばく)したとして、周辺海域にいた漁船の元乗組員らが「船員保険」の適用を求めて集団申請する。発症した病気が被曝によるものと認められれば、事実上の「労災」として扱われる。60年以上にわたって調査が放棄されたことへの疑念と憤り――。元乗組員らの間には、「闇に葬らせない」との思いも強い。

 市民団体「太平洋核被災支援センター」(事務局・高知県宿毛市)によると、船員保険を申請する意向を持つのは高知県内の80代の元乗組員5人と遺族2人の計7人。さらに数人増える見通しで、申請先は「全国健康保険協会」を予定しているという。元乗組員らはがんや心筋梗塞(こうそく)などを患ったとされ、被曝が原因と認められると、治療費の自己負担分がなくなるほか、遺族年金も支給される。

 岡山理科大の豊田新(しん)教授(放射線線量計測)が元乗組員5人のうちの1人の歯を分析したところ、最大414ミリシーベルトの被曝が確認された。71年前に広島に投下された原爆に当てはめた場合、爆心地から1・6キロでの被爆に相当する線量という。ほかの元乗組員らについても、白血球の減少を示す当時の血液検査結果が残っているという。

 一方で、被曝の線量が分かったとしても、放射線が病気や死因にどう関わっているのかを証明するのは難しい。すでに元乗組員は高齢になっており、生活習慣を含むほかの原因とされる可能性もある。