ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇(法王)とロシア正教会のキルリ総主教が2月12日、キューバで会談をしたのを受け、朝日新聞は13日付朝刊国際面で「東西教会 分裂越え初会談」と見出しをつけた記事を掲載した。しかし、ローマ・カトリック教会とロシア正教会のトップ会談は初めてだが、ローマ・カトリック教会と東方正教会のトップ会談は過去にもあり、見出しは誤りだったとして、16日付朝刊で訂正した。在京6紙のうち、読売を除き、毎日、産経、日経、東京の各紙も、朝日と同様に「東西教会トップ初会談」と見出しをつけた記事を掲載していた。
正教会(Orthodox Church)はキリスト教の教派のひとつで、最高位の聖職者は「総主教」と呼ばれるが、一人だけではなく、各地にある独立した正教会ごとに存在する。ローマ教皇とロシア正教会総主教(モスクワ総主教)との会談は初めてだが、ローマ教皇とコンスタンティノープル総主教の会談は過去に何度も行われている。ローマ教皇とルーマニア総主教の会談も行われている。したがって、「東西教会のトップ初会談」という表記は誤りとなる。
文中では「カトリック教会とロシア正教会のトップ会談は初めて」といった記載をしている記事が大半だったが、見出しは「東西教会のトップ初会談」が目立った。読売だけが見出しでも「ローマ法王・露正教会総主教会談」と表記していた(ただし、大阪版では13日付夕刊に「東西教会初会談」との見出しあり)。
なお、日本のカトリック教会はトップの正式名称を「教皇」と表記しているが、日本政府・外務省は「法王」と表記しているためメディアも「法王」と記している。
(※ ニコライ堂司祭クリメント北原史門様に情報提供の協力をいただきました。)
朝日新聞2016年2月14日付朝刊国際面(左)、毎日新聞2016年2月13日付夕刊1面 (※産経、日経、東京は略)
朝日新聞2016年2月16日付朝刊第2社会面
教皇フランシスコの聖墳墓教会でのエキュメニカル礼拝における講話
聖地巡礼の2日目にあたる2014年5月25日、エルサレムの聖墳墓教会で教皇フランシスコは、東方正教会コンスタンチノープル総主教バルトロマイ一世と共にエキュメニカル礼拝を行いました。これは、1964年に同じくエルサレムで行われた、カトリックと東方正教会との和解の歴史的会談を記念したものです。その当時会談に臨んだのは、カトリックから教皇パウロ六世、東方正教会からはコンスタンチノープル総主教アテナゴラスでした。
この礼拝の前、教皇フランシスコとバルトロマイ一世は会談し、中東におけるキリスト者の困難な状況に憂慮を示し、諸宗教感のさらなる対話と和解を呼び掛ける共同宣言を発表しました。(以下、略)
カトリック中央協議会(2014/5/29)
- カトリック教皇とコンスタンチノープル総主教の会談例
- ローマ教皇・ヨハネパウロ2世のルーマニア訪問(ルーマニア総主教と会談) (ルーマニア国営通信AGERPRES 2014/5/7)
- ルーマニア総主教のバチカン訪問 (ローマ教皇庁 2002/10/13)
主教
主教は正教会が使徒継承の教会であることの生きた証人です。使徒からの繋がりをもつことが正教会の生命ですから、主教なしには教会は存在しません。逆に主教は教会の民と共にいなければ主教たりえませんので、信徒なしには主教は存在できません。それ故、正教徒は必ず誰かの主教の許にあり、主教は必ず何処かの管轄区をもっています。
…(略)…
主教は、修道士もしくは独身者の中から選ばれます。主教には、指導的主教を意味する「大主教」、複数の主教の管轄区をまとめる「府主教」、完全独立の教会を監督する「総主教」というタイトルがあります。日本正教会
- 「ローマ法王」と「ローマ教皇」、どちらが正しい? (カトリック中央協議会)
- (初稿:2016年2月20日 06:15)