レトロゲームってどこからレトロなの?
珍しくこのブログ開設当初から続いているシリーズに「レトロゲーム回顧録」がある。自分が昔遊んで、面白かったりつまらなかったり、とにかく印象に残った思い入れのあるゲームを紹介するシリーズだ。
大学生の頃は年間50本とかゲームを買っていたゲーム馬鹿なので、紹介したいゲームは山ほどある。でも、タイトルを「レトロゲーム」にしてしまったせいで、中途半端な時代のゲームは紹介できない。
でも、レトロゲームってそもそもどれくらい古いものをレトロゲームっていうの?という疑問もある。
これは本当に人によって違いが出てくるだろう。例えばファミコン以前の電子ゲームなどをそう思う人もいれば、初代プレイステーションのあのカクカクのポリゴンをレトロだと感じる人もいる。
自分は、この「レトロゲーム回顧録」を書くにあたって決めた勝手な基準に従っている。それは「リリース後20年を迎えたゲームをレトロゲームと呼ぶことにする」だ。つまり、今年でいえば1996年リリースのゲームまではレトロゲームと言う事にしようという勝手な基準である。
だから、今回紹介するゲームは、その基準からすれば「レトロゲーム」ではない。だが、どうしても色んな意味で印象深いので紹介したかった。
そのゲームとは「グラディウスジェネレーション」である。
GBAで遊べるグラディウス。
「グラディウスジェネレーション(以下グラジェネ)」は、2002年にゲームボーイアドバンス(以下GBA)で発売された。
知っている人は知っているが、ゲームボーイで出ていたグラディウスシリーズは、海外版の名称を用いた「ネメシス」だった。なぜなのかはハッキリとはわからない。ゲームボーイがリージョンフリーだったから、海外と同名のソフトを日本でも売ったほうがコストが低く済んだんだろうか?
とにかく、携帯ゲーム機のグラディウスといえば「ネメシス」だと思っていたので、GBAでは「グラディウス」の名を冠して発売されることに驚いた。しかも、ファミ通なんかでみたグラフィックスは素晴らしいの一言で、これが手のひらの中で動くのかと感動し、発売日を指折り数えて待っていた。
※グラディウスジェネレーションのスクリーンショット。実に美しい。
いよいよ発売日になり、仕事が終わった後、急いでゲーム屋に行って買ってきて、待ちきれずにとりあえず車の中で開封して、持ってきていたGBAにカセットを差し込み、電源を入れた。
これまでのシリーズの歴史が流れるデモ画面。なかなかいい雰囲気じゃないか。どうでもいいが、自分はゲームを買ってきたら、とりあえずデモ画面は一通り見る派だ。あと、説明書もちゃんと読む。
迫力のあるタイトル画面が表示された所で電源を一旦切り、家路につく。正直言ってその数年前にリリースされていたグラディウスIVは、個人的にはひどく不満だったので、今回のグラジェネには期待していた。劣化グラIIにしか見えなかったIVからは随分と変わっているように見えたからだ。
家に着き、飲み物とお菓子を用意して再びGBAの電源を入れる。
お馴染みのパワーアップセレクト画面を経て、いざ参る!
恐怖のパペパプーグラディウス。
「スタァート…」
お、なんかコンピュータ音声っぽいバリトンボイスが今回はスタート時に喋るのか。ですとろいぜもー的なアレみたいなもんか。なんか気が抜ける感じだがよかろう。
と、思った次の瞬間、自分の耳に飛び込んできたのは2002年にGBAで発売されたゲームとは思えない音楽だった。
ブーブーぺぺッペッぺぺッペーペーラリーラリーラリー…
な、なんだこれは…
これじゃまるでゲームボーイのゲームじゃないか。これはアドバンスなんだぞ? 全然アドバンスってないぞ!(謎怒)
正直言って、カセットが上手く挿さってないんじゃないかと心配して一度電源を切った。そして、念入りにフーフーして(ホントは意味ない)もう一度挿し直し、スタートする。
ブーブーぺぺッペッぺぺッペーペーラリーラリーラリー…
変わらん!
ま、まあいい。空中戦の音楽だけがアレなのかもしれないし…と、自分に言い聞かせて進めてみる。
ちゃんとパワーアップ時には喋るし、グラフィックスはいい感じだ。始まったステージ1はグラディウスの1面っぽい感じだが、途中で隕石?が上下に激しく移動していたりしてなかなか凝っている。音楽は… まあ80年代っぽいドラム音が入ってきてちょっとはマシになったかも知れないが、正直沙羅曼蛇レベルだ。
ボス戦になると、またなんか音が貧弱になった。プーペーポプップッーッて感じ。
グラディウスっていうより、なんかロックマンとカービーを足して3で割った様な音楽。なんだろうこの違和感は…
2面はグラディウスIIのクリスタル面をもっとパズルっぽくした感じのステージだった。背景の雲に時々走る稲光が美しい。だが、音はやはりプーペーポーな感じで気が抜ける。クリスタルが砕ける効果音なんかは「シャリーン」と気持ちいい感じの音が鳴るのに、肝心のメインBGMがプーペーポーなのがなんなイマイチ乗りきれない。結構いい感じのメロディなのに、プーペーポーなのが…
そして、問題の3面である。なんか空中戦の音楽もちょっと暗い雰囲気に変わって、なにかここから本気だすみたいな意気込みを感じた。だが、その次の瞬間に耳に入ってきたのは、予想の遥か斜め上を行くBGMだった。
タカタカタッタカタカタッタカタッ!ラリラリラリラリラリ!
パペプッパペプッパペプッ!タリラリタリラリタリラリ!
こ… これは酷い…
なまじグラフィックスが良いだけに、このギャップは思わず笑いが出てしまうほどだ。どうしてこうなってしまったのか…
グラディウスシリーズといえば、そのゲームの面白さのみならず、爽快感があつたり荘厳な雰囲気のBGMがウリなのに、これはあまりにも酷すぎる…
GB音源で鳴っていたBGM。
後から知ったのだが、このゲームは音源の割当のバランスがおかしかったらしい。
基本的にGBAの音源は矩形波×2、波形メモリ×1、ノイズ×1、PCM×2という構成になっている。矩形波はピコピコ音。波形メモリはゲームボーイ特有の通称GB音源と呼ばれるもので、主にベースとして使われる。ノイズは効果音なんかに使われるが、ドラムなんかにも使われる。そしてPCMはいわゆるサンプリング音源だ。PCMを上手に使うとBGMがリッチになる。
だが、グラジェネはあろうことかこのPCMの2チャンネルを効果音とドラムに割り当ててしまった。つまり、メロディを鳴らす部分は実質ピコピコ音とGB音源のみとなってしまったのだ。パペパプーになって当たり前である。
グラフィックスに力を入れすぎた結果のメモリ配分の関係上、そうせざるを得なかったとも言われているが、とにかくこのグラジェネはコナミも黒歴史だと思っているのか、後に発売された「GRADIUS ULTIMATE COLLECTION」というコンプリートボックスにも、グラジェネの楽曲は収録されなかった。
だが、あまりにも衝撃的すぎるこの3面の音楽を、ちゃんとした音源で作ればカッコイイのではないか?と考えて、 それを実践した人がいる。それが以下の動画だ。
VRC6というのは、ファミコン末期にコナミがよく使っていた優秀な拡張チップで、名曲を多く残したことで知られている。こうやって聞いてみると悪くはない曲なのだが、いかんせんGB音源でやられるとなんとも言えないヤバさが漂ってくる。
なんかもっと大胆にアレンジした人もいるけど、こっちはもうなんか原型を留めていない感じがして「ファルコムか!!」といいたくなってしまう。
他にも音楽的に色々問題はある。このゲームには隠し要素として「モーニングミュージック」が収録されている。モーニングミュージックとは、グラディウスファンなら誰でも知っていると名曲で、自分も朝のアラームをこれにしているくらいお気に入りの曲なのだが、この曲が明らかに間違っている。なんかところどころ音が外れているのだ。
※原曲じゃないけど、グラジェネのモーニングミュージックを再現したもの。なんかおかしい。
※こっちが本物。朝の目覚めには最高です。
とまあ、ある意味妙な愛され方をしてしまったグラジェネではあるが、ゲームとしてはなかなか面白い出来だった。全8面とボリュームもあるし、過去作品からのオマージュがいろいろなところに散りばめられていて、しかも難易度も激ムズという程でもなく、頑張ればクリアできる常識的なレベルに抑えられていた。ヒントモードがあって、いわゆる「復活」のやり方を学ぶことが出来るのも面白い試みだった。
それだけに、このBGMのショボさは本当に残念だった。あと、いくら外注だったとはいえ、自機である「ビックバイパー(Vic Viper)」を、ついに公式で「ビッグバイパー(Big Viper)と誤植してしまったのもこの作品だった。
まあ、コナミは自社をコンマイ(Konmai)って表記したこともあるから…(震え声)
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- 出版社/メーカー: SMD itaku (music)
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