関根慎一、石川智也
2016年2月20日01時53分
東京電力福島第一原発事故で全住民が避難している福島県浪江町は、再び事故が起きた場合、国が定めた避難指示を出す放射線量の値より低くても町の判断で避難指示できるとする避難計画案をまとめた。隣接する南相馬市も国の避難指示前に避難指示を出せる計画を作った。福島県も両自治体の意向を尊重する。国の指針通りの計画ではうまく避難できない可能性があると判断した。
福島の事故後、国は原子力災害対策指針を改定。福島第一、第二原発を含む各原発30キロ圏にある135市町村に対し、指針に基づいて新たに避難計画を作るよう求めた。
指針は、原発で大事故が起きた場合の対応として、5キロ圏はすぐに避難する一方、浪江町のような5~30キロ圏は、まず屋内退避する。毎時500マイクロシーベルトに達したら数時間以内に避難し、毎時20マイクロシーベルトでも1日以上続いた場合は1週間以内に避難することを求めている。高齢者らは避難する方が体の負担になると考えるほか、原発により近い住民を早く逃がすため交通渋滞を防ぐ狙いがある。
毎時500マイクロシーベルトは、事故時に福島第一原発5キロ圏外では計測されていないほど高い値。浪江町は、福島第一、第二原発の使用済み燃料の冷却が災害やテロでできなくなるなど、実際に事故が起きればこの値に達する前に住民が避難し始めて混乱すると考えた。町が責任を持って避難場所や手段を確保するため独自に避難指示を出せるようにする。
実際、福島の事故では国からの情報提供が遅れ、事態の悪化に対応が追い付かず、避難は混乱した。
南相馬市も2013年12月に作った避難計画で、国の指示を待たずに市長が避難指示を出せると定めた。福島の事故で屋内退避指示が出た同市では、物流が途絶え食料などが不足し、約7万人のうち5万5千人が自主避難した。
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