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今日の社説

2016/02/19 00:48

敦賀以西ルート 早期延伸と速達性が最重要

 北陸新幹線の敦賀以西ルートを協議する与党検討委員会で、京都府の山田啓二知事が福井県小浜市付近と京都府北部の舞鶴市を経由して京都駅へ乗り入れ、関西国際空港(関空)につなげるルートを要望した。

 舞鶴市を中心とした京都府北部の5市2町は人口が約30万人に達し、福井市並みの経済規模を持つ。遠回りになっても小浜付近から西へルートを延ばす価値は十分にあるとの主張である。

 京都府は、京都市への人口集中率が約55%に達し、経済的に豊かな南部と、所得水準の低い北部との「南北格差」に悩んでいる。京都府知事の目からみれば、新幹線ルートによる南北直結は格差解消の切り札のように映るのだろう。

 その気持ちは分からぬでもないが、あくまで一地域の事情であり、国家的プロジェクトとして建設される整備新幹線のルートを大きく左右するようなことがあってはならない。東京と大阪を結ぶ北回り新幹線の実現に向け、半世紀にわたって運動してきた北陸の関係者にとって、舞鶴経由は想定すらしたことがなく、唐突で違和感が強いルートである。

 最有力とみられる小浜-京都駅のルートに比べると、舞鶴経由は運行距離が長くなるうえに、建設費が大幅に増え、料金も高くなる。大阪までの早期延伸がさらに遠のき、速達性も失われる。舞鶴経由は、京阪神と北陸をできるだけ最短で結ぶという大目標に反し、受け入れ難い。

 将来的に関空につなげる案についても、まず大阪延伸を確実にするのが先決であり、真正面から議論するのは早すぎる。整備新幹線の財源について、野党や中央の一部メディアに、厳しい意見があることも忘れないでほしい。

 関西広域連合は、これまで建設費が安いとされる米原ルートでの整備を国に求めてきたが、井戸敏三兵庫県知事は米原駅での東海道新幹線への接続が困難として、従来方針の見直しを表明した。

 現状では米原駅で東海道新幹線への乗り換えが必要になるなど不便極まりなく、当然の変更といえよう。事実上、小浜-京都駅のルートを支持する発言と受け止めてもよいのではないか。

北朝鮮へ不正輸出 制裁の骨抜き防がねば

 北朝鮮に日用品を不正に輸出したとして、東京都内の貿易会社社長が外為法違反容疑で逮捕された。核実験に続き事実上の長距離弾道ミサイルを発射した北朝鮮に対し、政府は独自制裁の強化を決めたが、制裁を骨抜きにする不正な輸出入防止へ取り締まりを強化する必要がある。

 逮捕された会社経営者は、制裁措置で輸出入が全面禁止されている北朝鮮に、第三国のシンガポールの会社を経由して衣料や食品、日用品などを輸出した疑いが持たれている。京都府警などの合同捜査本部は貿易会社のほか、関係先として在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)傘下の経済団体「在日朝鮮合営経済交流協会」も家宅捜索した。不正輸出のルートや背後関係なども含めて事件の実態解明を急いでもらいたい。

 2006年の禁輸措置以降、規制をすり抜けて北朝鮮に不正輸出する事犯が後を絶たない。特に深刻なのは、高性能の日本製品が北朝鮮の兵器などに利用される事例が相次いでいることだ。国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会・専門家パネルは先にまとめた報告書で、日本製レーダーアンテナが朝鮮人民軍の艦船に使われていることを指摘し、日本の民生品の軍事転用に警鐘を鳴らしている。

 報告書は、国連の制裁対象に指定されている北朝鮮の船舶管理会社の子会社に日本国籍を持つ人物がおり、同人所有の会社を隠れみのした制裁逃れの可能性が強いことも指摘している。

 こうした事例の前にも、北朝鮮の核関連装置に日本製の真空ポンプが転用されていたケースや、東京港に寄港したシンガポール船籍の貨物船から北朝鮮の核施設での使用が疑われるアルミ合金が見つかった問題、韓国に墜落した北朝鮮の無人機に日本製カメラが取り付けられていた事案などが明らかになっている。禁輸下でも、日本がなお北朝鮮への資材供給源になっている疑いが強いことを示すものであろう。政府は制裁の実効性が失われないよう、国際機関とも連携して不正輸出入の捜査、取り締まりを一段と厳しく行わなければならない。