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 日本銀行が16日から始めた「マイナス金利政策」で、市場金利の低下が進んでいる。ただ、実際に物価や賃金の上昇をもたらし、景気回復につながるのかはまだ見えていない。新政策の効用と限界について、金融政策に詳しい東大の渡辺努教授にきいた。

 ――金融機関が日銀に持つ預金の一部にマイナス0・1%の金利をつける「マイナス金利政策」は、これまでの大規模な金融緩和と比べ、効果に違いがあるのでしょうか。

 「これまでの大規模な緩和政策では、日銀がどの程度国債を買う量を増やせばどれほど効果が出るのか、誰にも分からない。一方、マイナス金利政策は金利の上げ下げであり、伝統的な金融政策だ。過去の研究の蓄積があり、どの程度の利下げをすれば投資が伸びるとか効果が見積もりやすいため、マイナス金利の方が効果を見通しやすい」

 ――具体的にどんな効果を見込んでいますか。

 「市場の金利体系をおしなべて引き下げる効果がある。銀行の企業向けの貸出金利や住宅ローンの金利も下がり始めた」

 「ただ、日銀が金利をプラスの領域からマイナスの領域に下げたからといって、天地をひっくり返すような効果があるとは思えない。冷静に考えると、引き下げ幅はプラス0・1%からマイナス0・1%のわずか0・2%幅だ。一般的に金利がプラスで、ある程度高い状況で金融緩和をするときは0・5%幅など、もっと大きく下げる場合もある。その意味では引き下げ幅が小さく、消費や景気に与える影響は限定的だといえるだろう」

 ――住宅ローン金利が下がる一方で、金融機関の預金金利も下がるなど、一般の生活者からは歓迎の声ばかりではないようです。

 「金利低下が預金者をないがしろにしているという議論は、金融緩和で金利が下がるときには常にあり、マイナス金利に特有な話ではない。また、金融機関の一部では緩和局面ではどうしても損が出る。『マイナス金利』という名称が刺激的で、久しぶりの金利の操作による金融緩和なので、反応が過剰に出ているのだろう。もう少しで落ち着くと思う」

 ――自分たちの預金口座までマイナス金利にならないか、という心配も出ています。