17日付y net news は、「ISの神話、成功と損失」と題して、ISに関する解説記事を載せているところ、イスラエル紙は、同国の情報筋の情報に基づく記事を書くことが少なくなく、記事も面白い内容を含んでいると思われるので、記事の要点次の通り

ISはイスラエルのメディアには、数年前から登場しただけであるが、決して新しい組織ではない。
その前身はヨルダン出身のアル・ザルカウィが1999年、Jama'at al-Tawhid wal Jihadという組織を結成したことから始まる。いろいろと変遷があったのち、2003年の米国のイラク侵攻後、イラクのアルカイダとなって行動を続けた。
彼らがアルカイダの名前で活動しながら、残虐な方法を好み、アルカイダにとってはred line であるムスリムの殺りくを行い、指導部の怒りを買った。
アルザルカウィが2006年米軍に殺されたので、組織はAbu-Ayyub al-Masri に率いられたが、彼も4年後に殺され、その後指導者は、イスラム学博士のアルバグダディに代わったが、彼の別名はIbrahim Awwad Ibrahim al-Badri al-Samriである。
米情報筋は、彼は現在のアルカイダ指導者のザワヒリよりも、はるかに反米的で野蛮であるとしている。
このころから、組織はシリアへ広がり、名前もISIS(ISIL) となった。
彼の指導とともに、組織はよりグローバルで国家的性格を帯びることになり、2014年にはカリフ国家を宣言し、名前もISと変え、その目的がすべてのムスリムの支配であることを謳った。
それ以来ISはシリアとイラクの占領地で、国家的組織となり、行政制度、司法、金融、教育をつかさどることとなり、イスラム法を厳格に実施した。またこのころISは占領地の石油等潤沢な資金を得て、米財務省が世界で最も裕福なテロ組織と呼んだ。

ISはイラクとシリアの占領地に数個の油田地帯を有し、年間5〜6億ドルの収入を得ていた。
ISはシリア政府も含めて、石油を買いたいものには誰にでも石油を売ったが、そのビジネスではイラクのサッダムフセインが国連の禁輸を逃れるために作った、密売組織が大きな役割を果たした。
昨年10月からの有志連合の石油施設に対する攻撃で、ISは多くの石油インフラを失った。
かっては3〜8万B/Dを算出していたが、今では2・5万である。
米国財務省は、現在の石油からの収入は1億ドル程度であろうとみている。
石油インフラ喪失に加え、多くの技術者が殺されたり、逃亡したりしたことも大きな痛手で、ISは占領地からの税の徴収、文化財の密売、銀行強盗、性奴隷の売買等あらゆる手段で資金を獲得している。

世界で30の組織がISに忠誠を誓った・・例えばウズべキスタン、ナイジェリア、シナイ半島、フィリピン等・・が彼らは依然独立性を有し、地元の敵と戦うことに重点を置いている。
またほとんどのイスラム国家が、このカリフ国家を認めることを拒否した。
サウディは、最近30国からなる反ISイスラム国家連合を作り上げた。
大部分のIS支持者は、ISの占領地域からきている。
彼らはその前の5年間の混乱に比べたら、IS支配の安定と経済的メリット、更にスンニ派優位の政策を支持して来た。
彼らはスンニ派の部族、旧バース党員、旧イラク軍人、複数の過激派グループを含んでいる。
彼らの支持がISの戦闘力にとっては極めて重要であった。

昨年ISはパリでのテロ、ロシア機の撃墜等、国際的に活動を広げ、ますますグローバルなテロ組織となるかに見えた。
しかし、有志連合の攻撃は彼らに痛手を与えつつある。
彼らは3分の1〜半分の領土を失い、その指導者の3分の1はすでに暗殺され、特に2015年は有力な指導者・・ジハーディ・ジョンやリビアの指導者を失い、さらにイエメンの指導者も殺されたといわれる。
彼らの中央銀行も爆破され、石油資源の減少と合輪せて、IS戦闘員の給与が半減されるともいわれている。
現在ISは20000〜25000の戦闘員と軽火器から重火器まで各種の武器を保有しているが、その大部分は古いタイプのもので、ISが捕獲した航空機のように高度の兵器は使いこなせていない。
また戦闘員は使い慣れた軽火器を好む癖がある。

これを比較してみれば、イスラエル軍はISの30倍の規模で、米軍に至っては100倍の規模で、その装備は比較にならないほど優れている。
イスラエル国家安全保障会議は、ISはイラン、パレスチナ問題に次ぐ3番目の脅威であると規定している。
北部ではヒズボッラーの方がより直接の脅威で、南では「シナイ州」はエジプト軍と戦うのに忙しく、ヨルダンは比較的平静である。
一言でいえば、ISはあまりに深くシリアとイラクの泥沼に使っていて、現在のところ、イスラエルに対する脅威にはなっていない
http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4767576,00.html