衆院定数減、先送りせず…「15年国勢調査で」
安倍晋三首相は19日午前の衆院予算委員会の集中審議で、衆院議長の諮問機関の答申に盛り込まれた定数10削減について2015年の簡易国勢調査に基づいて実施する考えを表明した。自民党は20年の大規模な国勢調査以降に実施する事実上の先送り案をまとめていたが、首相指示で大幅に前倒しされる。これにより与野党協議が進み、関連法案が今国会中に成立する可能性が出てきた。【野原大輔】
首相は「15年国勢調査に基づく区割りの見直しを行う際に合わせて10の削減を実施する」と述べたうえで、「20年の国勢調査まで先送りすることは決してない。これが自民党総裁としての私の方針だ」と強調した。自民党の田村憲久氏への答弁。15年の国勢調査の速報値は26日に公表される。
定数削減を巡っては、削減対象となる地方の地盤が強い自民党内で反発があった。自民党は、定数を10削減する方針を打ち出す一方、党内の異論を封じ込めるため、20年国勢調査結果を受けて実施する案をまとめていた。選挙区割り作業や周知期間などを踏まえると、削減実現は早くても22年後半になるとみられていた。
このため、野党が「改革の先送りだ」と批判。定数削減は12年の党首討論で、当時の安倍総裁と民主党の野田佳彦首相が約束し、自民、民主、公明の3党合意が交わされた経緯がある。事実上の先送りとなる自民原案では国民の理解も得られず夏の参院選にも影響する可能性があると判断した。
首相は18日、首相官邸で谷垣禎一幹事長、選挙制度改革担当の細田博之幹事長代行とそれぞれ会談しており、定数削減の時期を早めるよう指示した。
谷垣氏は19日午前の記者会見で、首相が定数削減の前倒しを表明した理由について「12年の党首討論の記憶が気持ちの中にあるのではないか」と述べた。また、細田氏は記者団に「今度の国勢調査の結果を見ながら格差2倍を是正し、定数削減を併せて行う」と語った。高村正彦副総裁は19日午前の党役員連絡会で「できるだけ総裁の意思に沿って党内のとりまとめがはかられるようにお願いする」と述べた。
また、3党合意の当事者である民主党の野田佳彦前首相は19日午後、衆院予算委で質問に立った。野田氏は「13年の通常国会で定数削減をやると約束したはずだ」と追及。首相は「(できなかったのは)3党の責任だ。私は責任を感じ、第三者機関(衆院議長の諮問機関)を作った」と強調した。
◇定数削減の3党合意◇
民主党政権だった2012年11月の党首討論で、野田佳彦首相が、安倍晋三・自民党総裁(当時)と、衆院解散の前提条件として定数削減を約束。自民、民主、公明の3党が、定数削減を含めた選挙制度改革について13年の通常国会までに「結論を得た上で必要な法改正を行う」と合意した。13年の通常国会では衆院小選挙区の1票の格差を是正する「0増5減」の改正公職選挙法が成立したが、抜本的な定数削減は実現していない。