2016年2月18日11時02分
◆「サンプラザ」公演希望集中
JR中野駅前のランドマーク、中野サンプラザ。
地上21階、地下3階。三角形を組み合わせたような外観のビルは、1973年に開業した。当時の雇用促進事業団が建設。現在は中野区が全額出資する株式会社の子会社が運営する。
10階より上は宴会場やホテル、レストランで、5~9階は事務所や研修室。地下にボウリング場やトレーニングジムなどもある。ただ、その名を高めたのは1~4階を占めるホール(2222人収容)だ。
山下達郎、松任谷由実……。国内の人気アーティストがコンサートを開き、70~80年代にはロックバンド「ポリス」や「TOTO(トト)」など海外アーティストの来日公演もたびたび行われた。
サンプラザのホール・ロビーサービス課長、佐藤千春さん(50)は「年間公演数は約300。稼働率は80%を超える」。都心のホールは閉鎖や改修が相次ぐ。昨年は五反田ゆうぽうと(品川区)が閉鎖し、渋谷公会堂(渋谷区)も建て替え工事で一時閉館した。このためサンプラザに公演希望が集中しているという。
ここ十数年で目立つのは公演の約3割を占めるアイドルやアニメ声優のコンサートだ。中でもアイドルグループ「モーニング娘。」などが参加する「ハロー!プロジェクト」の公演は、冬と夏の年2回開かれる。
「1月2日から始まる冬の公演は1年のスタートを切る意味合いがある。特別な会場だ」。公演を取り仕切るアップフロントプロモーションの企画制作・営業部長、舟橋優さん(49)はそう話す。「ステージの間口が広く、大きな舞台装置や大人数での演目に向いている」
一方、小平市出身のピアニスト塩谷(しおのや)哲(さとる)さん(49)は、97年から毎年12月に少人数の公演を続けている。ピアノとゲストの歌が基本のアコースティックなライブだ。「お客さんの熱気や反応がステージにしっかり伝わってくる。それでいて、お客さんに近すぎず、ピリッとした緊張感も保たれる。そのバランスが良くて演奏しやすい」。肩ひじ張らず、ふらっと来られる――。中野の街を、そう表現する。
◆小劇場のお笑いライブ 若手の登竜門
サンプラザに近い区社会福祉会館2階にも、熱気と歓声に満ちた空間がある。
なかの芸能小劇場。
開場は95年。座席数110席の小さな劇場では落語や日本舞踊のほか、お笑いライブも開かれる。毎月行われている「東京ビタミン寄席」は、所属事務所の垣根を超えた若手芸人の登竜門だ。カンニング竹山、ダンディ坂野、小島よしお、スギちゃん……。ここから巣立った芸人は数多い。
「若手には小さなゴールがあることが大事。この舞台に出て、ここでお客にウケる。それがプロとしての第一歩になる」。寄席を主宰するお笑いコンビ「ブッチャーブラザーズ」のリッキー(本名・岡博之)さん(57)は言う。舞台に立ちながら若手を指導する。
駅前の好立地。その割に利用料金は安かった。「2万円ほど出せば、月1回の定席(じょう・せき)ができる。よっしゃ、始めようと」。入場料は800円。97年から始めた寄席は、今月25日で229回の歴史を重ねる。
「この10年ほどで客層が変わった」。それまで多かった高校生がいなくなり、勤め人や地元商店街の大人が増えたという。「本当の寄席みたいになってきた。周りが変わっても、ぶれずに続けていくことで価値が出る。サブカルチャーと並ぶ中野の『両輪』として、お笑いを発信し続けたい」
(鬼頭恒成)