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相次ぐ放言 政治家の軽すぎる言葉

 信じられないような政治家の放言が与野党で相次いでいる。いずれも「軽率だった」「誤解を招き陳謝して撤回する」だけでは済まされない発言だ。各党はもっと深刻に受け止め、猛省すべきである。

     まず、自民党の丸山和也参院議員の「今、米国は黒人が大統領になっている。黒人の血を引くね。これは奴隷ですよ」という発言だ。

     憲法のあり方を議論する参院憲法審査会で丸山氏は唐突に「日本が米国の51番目の州となることに憲法上どんな問題があるのか」と提起して「日本州出身が米大統領になる可能性が出てくる」とも語った。

     後に「米国は人種に関係なく大統領になれる国だと言いたかった」と陳謝したが、人種差別的な発言と受け取られるとは当初は思いもしなかったようだ。しかもオバマ氏は奴隷の末裔(まつえい)ではない。日本が米国の州の一つになるという話も荒唐無稽(むけい)というほかない。

     一方、民主党の中川正春・元文部科学相の発言も看過できない。

     現金授受問題で閣僚を辞めた甘利明前経済再生担当相が「睡眠障害」のため1カ月の自宅療養が必要と診断されたとの報告を受け、党の会合で「いよいよ攻勢をかけていく時だ。(安倍晋三)首相の睡眠障害を勝ち取りましょう」と呼びかけた。

     冗談のつもりで軽々しく口にしてしまうのが、むしろ問題だ。睡眠障害で苦しんでいる人や、その家族らはどんな思いで聞いただろう。

     両氏に共通しているのは、自らの発言がどう受け止められるか、配慮や想像力を著しく欠いている点だ。自分の立場や発言の場もわきまえていない。その発言の基となる知識も中途半端で、思いつくままに語っているとしか見えない。

     その意味で丸川珠代環境相が除染などによる年間の追加被ばく線量の長期目標について「何の科学的根拠もない」などと語って撤回したのも同じような放言といっていい。

     麻生太郎財務相の答弁も見過ごせない。「軽減税率の導入で廃業する零細事業者が出るのでは」との野党の質問に対し、「そういった例がないとは言わない。一つや二つ、100、1000あったとかいろいろ出てくると思う」と答えた。これも後に訂正したが、廃業が出ないよう努力すべき担当閣僚として乱暴な答弁だ。

     仮に官僚が同じような発言をしていたら政治家側は直ちに厳しい処分に乗り出すのではなかろうか。言うまでもなく政治家が最も大切にしないといけないのは言葉だ。身内の放言に対し、所属政党が毎回、厳しく対処すべきである。そうでないとますます政治家の劣化は進み、その存在自体が軽いものとなっていく。

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