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南シナ海の島で、射程200キロのミサイルが空に向かって、にらみを利かせ…
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南シナ海の島で、射程200キロのミサイルが空に向かって、にらみを利かせている。これはきわめて危うい事態である。
パラセル(西沙)諸島で中国軍が地対空ミサイルを配備したことがわかった。スプラトリー(南沙)諸島での埋め立てを含め、南シナ海での最近の中国の行動は無責任すぎる。
中国はただちにミサイルを撤去すべきである。南シナ海をこれ以上、緊張の海にしてはならない。
スプラトリーと同様にパラセルも、中国とベトナムなどが領有権を争っている。しかし中国は徐々に支配海域を広げ、1974年までに全域を占拠した。
ミサイルの現場とみられるのはパラセル最大の島、ウッディ(永興)島だ。50年代から中国が実効支配しており、他国から脅かされる状況ではない。
中国政府は自らの領土と主張し、「防御施設を配備する権利がある」としている。だが、ミサイル配備は明らかに防御目的ではなく、周辺国や航空機に強い脅威を与えるものだ。
習近平(シーチンピン)国家主席は昨秋の米中会談で、スプラトリーでの埋め立てについて「軍事拠点化するつもりはない」と明言した。
埋め立て自体、容認されないが、ましてや軍事化はあってはならない。パラセルであれ、どの国の支配海域であれ、軍事拠点化しないルールを南シナ海全域で各国が適用するべきだ。
米国と東南アジア諸国連合(ASEAN)は今週の首脳会議で、航行の自由と紛争の平和的解決をうたう宣言を出した。「中国」「南シナ海」の文言を避けたのは、中国に配慮する国々の言い分をくんだためだ。
とはいえ、ASEANの多くの国々は、中国の影響力が急速に高まることを心配し、米国の関与の継続を望んでいる。
中国は、南シナ海で「航行の自由」作戦を続ける米軍を排除したいのだろう。だが、周辺の国々がいま不信の目を向ける先は、米軍ではなく、中国の振るまいであることを悟るべきだ。今回のミサイル配備も、中国への信頼をいっそう傷つける。
南シナ海は、屈指の重要な海上交通路でもある。その安全を損ねることは、中国自身にも不利益をもたらす。
島の帰属の問題は平和的に話し合いを続けるほかなく、海上は自由な航行が確保されなくてはならない。
米国はじめ日韓、豪州、ASEAN諸国など関係国は、南シナ海の安定化を共通の利益として中国に認識させる外交努力を強めるべきだろう。
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