2008年12月01日 (月)
こんにちは。
今回はリュカさんから、妊娠糖尿病についてコメント・質問をいただきました。
『先生いつもありがとうございます。妊娠糖尿病について教えてください。
私は第一子妊娠中期に空腹時血糖値が110と高めに出たので、家族歴(父が2型糖尿病)も考慮して検査を受けるように言われました。
結果はHbA1c4.9で、糖負荷試験の結果は糖尿病型でした。
その後健康な子供を出産し、産後は空腹時血糖値も82になっていました。
2年後に再び妊娠し、途中までは何の問題もなく経過していましたが、後期になるとどんどん胎児が大きくなってしまいました。
そこで9か月の終りにようやく検査しましょうと言われて調べるとHbA1cはなんと6.8もありました。
しかし「食事に気をつけなさい」としか言われず、前回が帝王切開であったため予定帝王切開で出産しました。
第2子は4500g近くもある巨大児で、出生後新生児呼吸窮迫症候群になり1か月ほどNICUに入院しました。
さいわい子供は特に異常はなく、脳への後遺症もなくいまは標準体型で元気に暮らしています。
また私も産後5日目に受けた糖負荷試験の結果は正常値(正常値の中ではやや高めですが)でした。
上記の検査結果から察するに、第一子を妊娠する前は糖尿病ではなく、二度の妊娠中に二度とも妊娠糖尿病になったと解釈すればよいのでしょうか?
恥ずかしながら体重がかなりありますので(産後すぐでBMI28ちょっとでした)医師は「標準体重まで痩せれば大丈夫だ」と言っていたのですが…今はスーパー糖質制限食で5キロ以上体重が減り、まだまだ目標まで遠いですがこのまま続けようと思っています。
それとHbA1c6.8というのは相当高い値だと思うのですが、通常その状態ではインスリン注射などの治療を行うのが当たり前ではなかったでしょうか?今となっては何を言ってもどうしようもないですが…(当時糖質制限食を知っておけば…と思っています)
by リュカ 2008/11/23 06:05』
リュカさん。コメントありがとうございます。
データからみてリュカさんの場合、ご推察通り、「第一子を妊娠する前は糖尿病ではなく、二度の妊娠中に二度とも妊娠糖尿病になった」と考えられます。
妊娠中、特に中期以降は、インスリン抵抗性が増すので、糖尿病を発症しやすくなります。
妊娠中HbA1c6.8%なら、仰有るとおり、インスリン注射をして血糖コントロールするのがセオリーとなります。通常のカロリー制限食であれば、インスリンを打たない限り血糖コントロールは困難です。
一方、糖質制限食なら、インスリン注射なしで血糖コントロールができる可能性がありますね。
5kg減量成功とのことですが、第三子を考えておられるなら糖質制限食を続けられて、標準体重を目指しましょう。
☆☆☆
<妊娠糖尿病> 再掲
今まで糖尿病でなかったのに、妊娠した後初めて糖尿病になる場合があります。これが「妊娠糖尿病」で、妊婦の約3%くらいにみられます。
肥満、糖尿病の家族歴、高齢、などが妊娠糖尿病のリスクとなります。もともとの糖尿病患者が妊娠することを「糖尿病合併妊娠」といい、二つはわけて分類されています。
妊娠すると、胎盤が形成され「母体・胎盤・胎児」がひとつのユニットとなります。この時、健常な胎児を発育・成長させるために胎盤や母体がヒト胎盤性ラクトーゲン(hPL)、成長ホルモン、グルカゴン、カテコラミン、糖質コルチコイドなどのホルモンを分泌し、それらによりインスリン抵抗性(インスリンの効きが悪くなること)がでてきます。
これらのホルモンは、妊娠の進行とともに増加しますから、特に妊娠中期以後にインスリン抵抗性が増加して、血糖値が上昇しやすくなります。
正常の妊婦は、インスリン抵抗性が増強する時期には、インスリンを多く分泌して血糖値が上昇しないように対処します。しかし、必要なだけのインスリンを分泌することができない体質の妊婦は、血糖値が上昇し妊娠糖尿病を発症します。
妊娠糖尿病は、通常は妊娠期間が終わったら、糖尿病の症状は消失します。しかし、約2%は出産後も糖尿病が続きます。
現在では妊娠糖尿病は「妊娠中に発症もしくは初めて発見された耐糖能低下をいう」と定義されています。
このため、お産が終わって、6~12週間後に経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行って、正常型、境界型、糖尿病型に分類します。
なお日本では、若い女性の2型糖尿病が少し増えています。従って、可能性として、「糖尿病が既にあったのに検査していなくて見過ごされていて、たまたま妊娠して検査したら糖尿病が発見された。」というパターンがあり得ます。
この場合は、「妊娠糖尿病」ではなくて「糖尿病合併妊娠」の見逃しになります。高血糖に由来する奇形の発生は、妊娠7週までに規定されることが明らかになっていますので、妊娠機会のある女性は、糖尿病や境界型の有無を調べておくのがお奨めですね。
なお妊娠許可の条件として
HbA1c6%以下が設定されています。
妊娠中は
HbA1c5.8%以下が目標です。
血糖値の目安としては
妊娠前
食前血糖100mg/dL 以下、食後2時間血糖120mg/dL 以下、
妊娠中
食前血糖100mg/dL 以下、食後2時間血糖100mg/dL 以下、
となっています。
江部康二
今回はリュカさんから、妊娠糖尿病についてコメント・質問をいただきました。
『先生いつもありがとうございます。妊娠糖尿病について教えてください。
私は第一子妊娠中期に空腹時血糖値が110と高めに出たので、家族歴(父が2型糖尿病)も考慮して検査を受けるように言われました。
結果はHbA1c4.9で、糖負荷試験の結果は糖尿病型でした。
その後健康な子供を出産し、産後は空腹時血糖値も82になっていました。
2年後に再び妊娠し、途中までは何の問題もなく経過していましたが、後期になるとどんどん胎児が大きくなってしまいました。
そこで9か月の終りにようやく検査しましょうと言われて調べるとHbA1cはなんと6.8もありました。
しかし「食事に気をつけなさい」としか言われず、前回が帝王切開であったため予定帝王切開で出産しました。
第2子は4500g近くもある巨大児で、出生後新生児呼吸窮迫症候群になり1か月ほどNICUに入院しました。
さいわい子供は特に異常はなく、脳への後遺症もなくいまは標準体型で元気に暮らしています。
また私も産後5日目に受けた糖負荷試験の結果は正常値(正常値の中ではやや高めですが)でした。
上記の検査結果から察するに、第一子を妊娠する前は糖尿病ではなく、二度の妊娠中に二度とも妊娠糖尿病になったと解釈すればよいのでしょうか?
恥ずかしながら体重がかなりありますので(産後すぐでBMI28ちょっとでした)医師は「標準体重まで痩せれば大丈夫だ」と言っていたのですが…今はスーパー糖質制限食で5キロ以上体重が減り、まだまだ目標まで遠いですがこのまま続けようと思っています。
それとHbA1c6.8というのは相当高い値だと思うのですが、通常その状態ではインスリン注射などの治療を行うのが当たり前ではなかったでしょうか?今となっては何を言ってもどうしようもないですが…(当時糖質制限食を知っておけば…と思っています)
by リュカ 2008/11/23 06:05』
リュカさん。コメントありがとうございます。
データからみてリュカさんの場合、ご推察通り、「第一子を妊娠する前は糖尿病ではなく、二度の妊娠中に二度とも妊娠糖尿病になった」と考えられます。
妊娠中、特に中期以降は、インスリン抵抗性が増すので、糖尿病を発症しやすくなります。
妊娠中HbA1c6.8%なら、仰有るとおり、インスリン注射をして血糖コントロールするのがセオリーとなります。通常のカロリー制限食であれば、インスリンを打たない限り血糖コントロールは困難です。
一方、糖質制限食なら、インスリン注射なしで血糖コントロールができる可能性がありますね。
5kg減量成功とのことですが、第三子を考えておられるなら糖質制限食を続けられて、標準体重を目指しましょう。
☆☆☆
<妊娠糖尿病> 再掲
今まで糖尿病でなかったのに、妊娠した後初めて糖尿病になる場合があります。これが「妊娠糖尿病」で、妊婦の約3%くらいにみられます。
肥満、糖尿病の家族歴、高齢、などが妊娠糖尿病のリスクとなります。もともとの糖尿病患者が妊娠することを「糖尿病合併妊娠」といい、二つはわけて分類されています。
妊娠すると、胎盤が形成され「母体・胎盤・胎児」がひとつのユニットとなります。この時、健常な胎児を発育・成長させるために胎盤や母体がヒト胎盤性ラクトーゲン(hPL)、成長ホルモン、グルカゴン、カテコラミン、糖質コルチコイドなどのホルモンを分泌し、それらによりインスリン抵抗性(インスリンの効きが悪くなること)がでてきます。
これらのホルモンは、妊娠の進行とともに増加しますから、特に妊娠中期以後にインスリン抵抗性が増加して、血糖値が上昇しやすくなります。
正常の妊婦は、インスリン抵抗性が増強する時期には、インスリンを多く分泌して血糖値が上昇しないように対処します。しかし、必要なだけのインスリンを分泌することができない体質の妊婦は、血糖値が上昇し妊娠糖尿病を発症します。
妊娠糖尿病は、通常は妊娠期間が終わったら、糖尿病の症状は消失します。しかし、約2%は出産後も糖尿病が続きます。
現在では妊娠糖尿病は「妊娠中に発症もしくは初めて発見された耐糖能低下をいう」と定義されています。
このため、お産が終わって、6~12週間後に経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行って、正常型、境界型、糖尿病型に分類します。
なお日本では、若い女性の2型糖尿病が少し増えています。従って、可能性として、「糖尿病が既にあったのに検査していなくて見過ごされていて、たまたま妊娠して検査したら糖尿病が発見された。」というパターンがあり得ます。
この場合は、「妊娠糖尿病」ではなくて「糖尿病合併妊娠」の見逃しになります。高血糖に由来する奇形の発生は、妊娠7週までに規定されることが明らかになっていますので、妊娠機会のある女性は、糖尿病や境界型の有無を調べておくのがお奨めですね。
なお妊娠許可の条件として
HbA1c6%以下が設定されています。
妊娠中は
HbA1c5.8%以下が目標です。
血糖値の目安としては
妊娠前
食前血糖100mg/dL 以下、食後2時間血糖120mg/dL 以下、
妊娠中
食前血糖100mg/dL 以下、食後2時間血糖100mg/dL 以下、
となっています。
江部康二
先生ありがとうございました。
第三子の予定はないのですが、健康のためにもこのまま頑張って標準体重まで痩せたいと思います。
第三子の予定はないのですが、健康のためにもこのまま頑張って標準体重まで痩せたいと思います。
2008/12/01(Mon) 22:05 | URL | リュカ | 【編集】
はじめまして。
先日の中野の講演会に出席させていただきました。質問が時間切れでしたので初めて投稿させていただきます。
60歳男、糖尿歴20年以上、長い間割合安定してましたが、今年初めHbA1cが7、2時血糖が350になりあわてました。女房が先生のブログと本を見つけてくれて、早速糖質制限食を実践しました。3ヵ月程でA1cが5.9、食前血糖が98になりました。それまではメルビン3錠、アマリール1錠ボグリボーズ3錠飲んでましたが主治医も結果を見て、ボグリボーズ以外は中止しました。
ところが最近、前夜酒も飲まず熟睡した朝の血糖が140、お酒を飲んで4-5時間の睡眠不足で体調も悪いような日には110ぐらいです。先生の指摘している糖新生のせいと思うのですが? HbA1cも薬をやめたせいか最近は6.5です。やはり薬を再開させるべきなのか、何かいい方法がありますでしょうか?
また千葉市在住ですが糖質制限食を実践している医療機関をご紹介いただきたいのですが。
先日の中野の講演会に出席させていただきました。質問が時間切れでしたので初めて投稿させていただきます。
60歳男、糖尿歴20年以上、長い間割合安定してましたが、今年初めHbA1cが7、2時血糖が350になりあわてました。女房が先生のブログと本を見つけてくれて、早速糖質制限食を実践しました。3ヵ月程でA1cが5.9、食前血糖が98になりました。それまではメルビン3錠、アマリール1錠ボグリボーズ3錠飲んでましたが主治医も結果を見て、ボグリボーズ以外は中止しました。
ところが最近、前夜酒も飲まず熟睡した朝の血糖が140、お酒を飲んで4-5時間の睡眠不足で体調も悪いような日には110ぐらいです。先生の指摘している糖新生のせいと思うのですが? HbA1cも薬をやめたせいか最近は6.5です。やはり薬を再開させるべきなのか、何かいい方法がありますでしょうか?
また千葉市在住ですが糖質制限食を実践している医療機関をご紹介いただきたいのですが。
2008/12/03(Wed) 23:33 | URL | 還暦 太郎 | 【編集】
還暦太郎さん。
講演会ご参加、ありがとうございました。
ボグリボース(ベイスン)とメルビンは
膵臓に負担のないお薬です。
A1Cも6.5%とほぼ良好ですので、メルビンまで再開して、
糖質制限食を続けられては如何でしょう。
下記は東京で糖質制限食の指導可能な医療機関です。
ひめのともみクリニック
〒141-0022 品川区東五反田1-17-1 第二昭和ビル3階
℡03-3445-0766 Fax03-3445-0838
ホームページ:http://himeno-clinic.com/
牧田善二先生
AGE(エー・ジー・イー内科クリニック)
〒104-0062
東京都中央区銀座1-4-3 第6工業ビル5階
電話03・3538・4001
講演会ご参加、ありがとうございました。
ボグリボース(ベイスン)とメルビンは
膵臓に負担のないお薬です。
A1Cも6.5%とほぼ良好ですので、メルビンまで再開して、
糖質制限食を続けられては如何でしょう。
下記は東京で糖質制限食の指導可能な医療機関です。
ひめのともみクリニック
〒141-0022 品川区東五反田1-17-1 第二昭和ビル3階
℡03-3445-0766 Fax03-3445-0838
ホームページ:http://himeno-clinic.com/
牧田善二先生
AGE(エー・ジー・イー内科クリニック)
〒104-0062
東京都中央区銀座1-4-3 第6工業ビル5階
電話03・3538・4001
2008/12/04(Thu) 08:00 | URL | 江部康二 | 【編集】
ありがとうございました。
もうひとつ質問ですが、アルコールについてですが、先生のご指摘の通り焼酎を飲んでいますが、少々なら飲んだ方が血糖値は低いのですが、毎日アルコールを飲むのも問題だと思いますが、この辺はいかがなのでしょうか?
もうひとつ質問ですが、アルコールについてですが、先生のご指摘の通り焼酎を飲んでいますが、少々なら飲んだ方が血糖値は低いのですが、毎日アルコールを飲むのも問題だと思いますが、この辺はいかがなのでしょうか?
2008/12/05(Fri) 07:03 | URL | 還暦 太郎 | 【編集】
還暦太郎さん。
蒸留酒か赤ワインを、
肝臓に響かない程度の量なら
毎日でも大丈夫です。
コントロール良好の糖尿人において、
米国糖尿病協会では、アルコール24g(30ml)/日を食事と共にとるていどなら適量としています。ビール350ml缶を2本、ワイン150ml×2杯、ウイスキー45ml×2杯です。
勿論休肝日があるのも好ましいですよ。
蒸留酒か赤ワインを、
肝臓に響かない程度の量なら
毎日でも大丈夫です。
コントロール良好の糖尿人において、
米国糖尿病協会では、アルコール24g(30ml)/日を食事と共にとるていどなら適量としています。ビール350ml缶を2本、ワイン150ml×2杯、ウイスキー45ml×2杯です。
勿論休肝日があるのも好ましいですよ。
2008/12/05(Fri) 16:32 | URL | 江部康二 | 【編集】
ご回答ありがとうございました。お酒は楽しくたまにお休みします。
2008/12/07(Sun) 15:15 | URL | | 【編集】
はじめまして。
もう少しで33週に入る妊婦です。私も妊娠性糖尿病と言われて、大きな病院に紹介され、行ってみました。 今の赤ちゃんの状態は産婦人科での検診では順調とのこと。大きさは1900グラムちょっといくくらいみたいです。誤差を入れたとしても、まぁまぁ、平均的くらいと言われたんですが、大丈夫でしょうか?
後今は病院から家で自分で血糖値をはかるように言われて、食事にも気をつけているんですが、その日によって血糖値の値が高かったりで…。野菜中心の食事にしたりして。もっと体も動かした方がいいんでしょうか??
今は一般の産婦人科での出産を希望してるんですが、大きな病院での出産にかえたほうがいいですか?? できればインスリンはしたくないんですが、血糖値が高いと必要なんですよね。
赤ちゃんは元気に動いてて、順調と言われてるので大丈夫であってほしいんですが、まだまだ油断はできないんでしょうか??
はじめてて、不安だらけです。
先生の意見聞かせてください。
もう少しで33週に入る妊婦です。私も妊娠性糖尿病と言われて、大きな病院に紹介され、行ってみました。 今の赤ちゃんの状態は産婦人科での検診では順調とのこと。大きさは1900グラムちょっといくくらいみたいです。誤差を入れたとしても、まぁまぁ、平均的くらいと言われたんですが、大丈夫でしょうか?
後今は病院から家で自分で血糖値をはかるように言われて、食事にも気をつけているんですが、その日によって血糖値の値が高かったりで…。野菜中心の食事にしたりして。もっと体も動かした方がいいんでしょうか??
今は一般の産婦人科での出産を希望してるんですが、大きな病院での出産にかえたほうがいいですか?? できればインスリンはしたくないんですが、血糖値が高いと必要なんですよね。
赤ちゃんは元気に動いてて、順調と言われてるので大丈夫であってほしいんですが、まだまだ油断はできないんでしょうか??
はじめてて、不安だらけです。
先生の意見聞かせてください。
2008/12/19(Fri) 08:22 | URL | はつママ | 【編集】
この記事へのトラックバック
| ホーム |