CubasisやAuria、FL Studio MobileにMultitrack DAW、そしてもちろんGarageBandとさまざまなDAWが揃うiPadのDTM環境。これでレコーディングしたいけれど、標準のマイクだと音質性能的にちょっと……と思っている人は多いと思います。もちろん、ここにオーディオインターフェイスを接続してマイクを取り付けることはできますが、結構大がかりになってしまいiPadのポータブル性が損なわれてしまいますよね。
そこに登場してきたのが、ShureのiPad/iPhone用の高性能なデジタル・コンデンサマイク、MV51という機材です。ラージダイアフラムを搭載し、繊細に音を捉えることができるのはもちろん、このマイク自体にDSPも搭載していてボーカル用、ギターアンプ用、アコースティック楽器用など、シチュエーションに応じた音作りがスイッチ一つでできてしまうのが特徴です。実際どんなものなのか試してみたので紹介してみましょう。
iPadやiPhoneと接続して高音質でレコーディングできるShureのデジタル・コンデンサマイク、MV51
ボーカル用のSM58や楽器を録るのに便利なSM57など、普段からShureのマイクを愛用している人は多いと思いますが、最近Shureはデジタルマイクにも力を入れてきており、MOTIVというシリーズ名でラインナップされています。

全面メタルボディーでずっしりとくる重さのMV51
全面メタルボディーでずっしりとくる重さのMV51
その中で今回取り上げるMV51は、全面メタルのビンテージデザインで見た目にもカッコいいのですが、持ってみるとかなりずっしりとくる重さです。ユニークなのは、卓上型のマイクとなっており、とくにマイクスタンドなどを用意しなくても、そのまま使え、必要に応じて設置角度も変えることができるようになっています。
卓上に設置できる形になっている
さらに、この後ろの支えの棒の底部分が取り外し可能となっており、これをとればマイクスタンドにも取り付け可能になっているんですね。

クルクルと回すと設置面のラバー部分が外れる、マイクスタンド接続が可能になる
だから自宅でレコーディングしつつ、外に持ち出してリハスタで使う……といったことも可能なわけです。気になるのは、その音だと思います。これでアコースティックギターを録ったものがあるので、ちょっと聴いてみてください。
クルクルと回すと設置面のラバー部分が外れる、マイクスタンド接続が可能になる
だから自宅でレコーディングしつつ、外に持ち出してリハスタで使う……といったことも可能なわけです。気になるのは、その音だと思います。これでアコースティックギターを録ったものがあるので、ちょっと聴いてみてください。
このオーディオデータはShureからもらったものではあるのですが、聴いてみてお気づきいただけたでしょうか?最初すごくキレイに、そうして高感度に録れているけど8~16秒目からちょっとノイズっぽくなり、音がくすんだ感じになっていますよね。実は最初と最後がMV51で録った音、間がiPad内蔵マイクで録った音になっているんで、その違いがハッキリと確認できると思います。では、もう少しシステム面について具体的に見ていきましょう。

マイクスタンドに取り付けるとこんな感じ
マイクスタンドに取り付けるとこんな感じ
このMV51、リアを見てみると、microUSB端子とヘッドホンジャックが搭載されています。このmicroUSB端子を付属のLightningケーブルでiPadやiPhoneと接続することでレコーディングできていたわけですが、実は普通のmicroUSBケーブルも付属しており、これでPCと接続すればWindowsやMac用のデジタルマイクとして使うこともできるし、Android端末と接続すれば、Android用としても使うことが可能。

リアパネルにはmicroUSBの端子とヘッドホン端子が装備されている
要するに、USBクラスコンプライアントなデジタルマイクというわけなんです。ただ、付属のLightningケーブルによって、Lightning-USBカメラアダプタ不要で使えるのは大きなメリットです。
リアパネルにはmicroUSBの端子とヘッドホン端子が装備されている
要するに、USBクラスコンプライアントなデジタルマイクというわけなんです。ただ、付属のLightningケーブルによって、Lightning-USBカメラアダプタ不要で使えるのは大きなメリットです。
このことからもわかるとおり、コンデンサマイクではあるけれど電源不要でケーブルからのバス電源供給だけで動作し、+48Vのファンタム電源も不要ですから、扱いがとっても簡単なんですね。
では、このヘッドホン端子は、何のためにあるのでしょうか?これはご想像のとおり、モニター用となっているんです。マイクから入力された音がヘッドホンへとダイレクトモニタリングされているので、レイテンシーなくモニタリングできるのです。

タッチパネルで入力レベルやヘッドホン出力レベル、ミュートなどの設定が可能
タッチパネルで入力レベルやヘッドホン出力レベル、ミュートなどの設定が可能
もちろんマイクの入力レベルの調整、ヘッドホン出力レベルの調整も、MV51のパネル面で行うことができます。このパネル面にあるボタンもレベル調整のスライダーもタッチパネル式なので、カチカチいって、マイクに大きいノイズが入ることがないという気遣いもいいですね。
CubasisなどのDAWでレコーディングしていくことができる
当然DAW側で再生した音も、このヘッドホンから再生されるので、バックトラックを流して、それを聴きながら新しいトラックにレコーディングしていくこともできるし、その新トラックにリバーブなどをかけてモニター状態にすれば、リバーブがかかった音でモニターバックすることができます。ただし、ダイレクトモニタリングはオフにならないため、ダイレクトモニターと重なった音でのモニターバックとなります。
エフェクトをかけた音もモニターバックできるが、ダイレクトモニタリングと重なる形になる。画面はAuria Pro
またマイク入力機能についてはミュートボタンも用意されているので、録った音を聴きたい場合は、ミュートした上で再生することで、マイクからの入力をカットしたキレイな音で聴くことができますよ。
さて、ここで面白いのが前述のDSP機能です。パネル面の中央にはmodeと書かれたタッチセンスのボタンがあり、これを切り替えることで、マイクからの入力音がずいぶんと変わってくるのです。具体的には以下の5種類です。

modeボタンを押すことでDSPによる5つのモードに切り替えることができる
modeボタンを押すことでDSPによる5つのモードに切り替えることができる
音は自分でいじりたい、という人はフラットを選択すればいいのですが、ボーカル用とか、アコースティック楽器用という設定が便利に使えるんですよね。コンプやEQがちょっとかかった音のようです。とはいえ、こんなブラックボックス的なプリセットに頼るのは納得いかないという人もいるはず。せっかくならもうちょっと細かく音の調整をしてみたいな……と思ったら、そのためのアプリがありました。

Shureが無料配布しているレコーディングアプリ、ShurePlus MOTIV
Shureが無料配布しているレコーディングアプリ、ShurePlus MOTIV
ShureがiOS用アプリとして無料配布しているShurePlus MOTIVというのがそれ。これ、基本的には単純なオーディオレコーダーなのですが、MOTIVシリーズを接続すると、それを認識するととおに、細かな調整ができるようになっているんですね。見てみると、リミッタのON/OFFを設定するスイッチがあり、コンプレッサはOFF-LIGHT-HEAVYの間で、調整できるようになっています。またEQについても、ここで調整できるので、自分なりの音作りができるはずです。

5つあるモードについて、より細かく設定できるようになっている
5つあるモードについて、より細かく設定できるようになっている
こうして設定した音で、ShurePlus MOTIVでレコーディングできるのはもちろんですが、設定したEQは電源を落としてもMV51が覚えておいてくれるので、後で改めてiPadを起動し、AuriaとかCubasisを起動して、そのEQ設定でレコーディングするということもできました。

Auriaとの組み合わせでも快適に使えるMV51
Auriaとの組み合わせでも快適に使えるMV51
iPadだけでなくiPhoneと接続して使うこともできるわけですが、ここでもう一つ気になるのがPCとの接続性ではないでしょうか?これについても試してみたので、紹介してみましょう。このMV51は前述のとおり、USBクラスコンプライアントなデバイスであるため、WindowsでもMacでも接続すれば、ドライバ不要で利用することが可能です。より正確にいえば、USB Audio Class 1.0対応だからWindowsでもドライバ不要なんですね。
Cubase付属のGeneric Low Latincy ASIO Driverで設定可能
Macであれば、とくに問題なくCoreAudioデバイスとして使えますが、Windowsの場合、ASIOドライバはないので、DAWで使うにはASIO4ALLなどをインストールして使う必要があります。もっともCubaseなどは、ASIO4ALLに相当する「Generic Low Latincy ASIO Driver」というものが入っているので、これを使えばOKです。

Cubaseの表示上は入力、出力とも40msecとなっているが、ダイレクトモニタリングが基本なのであまり気にしなくてもOKとはいえ、レイテンシーが気になるという人もいるでしょう。確かに、ソフトシンセを鳴らした音を、このMV51のマイクのヘッドホン端子からモニターするとなると実質50msec以上の遅れが出るので、まともに使えません。ただ、このマイクでレコーディングすることだけを目的と考えれば、もともとダイレクトモニタリングできているので、心配はいらないですよ。
このようにiPadやiPhoneでのレコーディングを高音質に行える一方、PCのDTM環境でも活用可能なデジタル・コンデンサマイクがMV51というわけなのです。最後に、これで録音したというShureのプロモーションビデオがあるので、ご覧になってみてはいかがでしょうか?
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