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【経済裏読み】
豪腕! テリー・ゴウ劇場第1幕…急かす鴻海、なだめるシャープの攻防戦 ビミョーな発言変化に波乱の予感
経営再建中のシャープが台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業傘下に入る交渉を本格化させた。5日には英語名でテリー・ゴウと呼ばれる郭台銘会長が、大阪市阿倍野区のシャープ本社を電撃訪問して、高橋興三社長とトップ会談。契約条件を誠実に協議し、提案の有効期限を29日にする合意書を締結した。郭会長が「優先交渉の権利にサインした」と文書を報道陣のカメラにかざすと、シャープが「優先交渉権を与えた事実はない」と否定する一幕も。テリー・ゴウ劇場は、急かす豪腕と防戦一方のシャープという印象を残した。(松岡達郎)
早くサインしたい
「6日からの春節前後の連休前に自らが契約を加速させる」
シャープが鴻海の提案に重点を置いて交渉する方針を固め、高橋社長が郭会長に伝えたのが4日午後。電話会談はシャープの決算会見が始まる直前まで45分続いたといい、シャープが交渉担当者約10人を台湾に派遣することを提案すると、郭会長は「こちらから訪問した方が早い」とシャープに乗り込む姿勢を示し、実際にその日の夕方には飛行機に飛び乗った。
郭会長は4日夜にも高橋社長との協議する意向だったが、高橋社長は、決算会見が開かれた東京にいたため半ば強引に翌5日朝からトップ会談を設定。このため高橋社長は当初の予定をキャンセルするなどして対応した。
5日午前9時すぎ、郭会長はワゴン車でシャープ本社に到着。思い入れのある黄金色の“勝負スカーフ”をまとい、詰めかけた報道陣に「隠れて本社に入ろうと思ったのになぜ報道陣がいるんだ」と言葉とは裏腹の笑顔で余裕の表情。「きょう来た理由は早く契約にサインしたいからだ。主力取引銀行も含めて午後2時には討論を完結し、午後3時には契約したい。また午後3時によろしく」と言い残して本社に入った。