【社説】開城工業団地の操業中断、国際社会も北の資金源を断つ措置を

 韓国政府は10日、開城工業団地の操業を全面停止し、現地に滞在している韓国人を迅速に撤収させることを決めた。南北交流のシンボルでもあった開城工団だが、北朝鮮による度重なる核実験とミサイル発射により、2004年の操業開始以来12年で事実上の閉鎖に向けた手続きへと入ることになった。

 韓国政府は「開城工団の操業が大量破壊兵器などの開発に利用されてはならない」とした上で「われわれの骨を削るような努力なしには、国際社会による制裁も難しいと考え、先立って制裁に踏み切った」とコメントした。中国を含む国際社会に厳しい制裁を促すため「まずは自分たちが率先垂範」という韓国政府の姿勢を示したものだ。これまで中国などから「韓国は開城工団を通じて北朝鮮にドルを支払っておきながら、他国に対して強行な制裁を求めるのはおかしい」といった指摘も確かにあった。今回の制裁はこれらの批判に対していわば先手を打つ形となった。

 開城工団は故・金大中(キム・デジュン)大統領在任中だった2000年の6・15共同宣言を受け、南北間の経済協力のシンボル的事業として準備が始まった。その後は総額1兆ウォン(現在のレートで約1000億円、以下同じ)以上の資金を投じて整備が進められ、昨年の生産額は5億7000万ドル(約646億円)に達した。現在は124の企業が北朝鮮の5万4000人の労働者を雇って操業を続けている。このような現状を考えると、工団の操業停止を決断するに至るまでの政府の苦悩は非常に深かったことだろう。しかし北朝鮮による核とミサイルの開発は絶対に容認しないとする毅然(きぜん)とした意志を国内外に示すには、やむを得ない選択だったと言うしかない。これまで北朝鮮労働者に支払われた5億6000万ドル(約635億円)の賃金のほとんどは、朝鮮労働党の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の統治資金、あるいは核・ミサイル開発などに悪用された可能性が高い。今回の措置にはこのような事実も大きく影響したはずだ。

 今後、韓国政府は現地に残る韓国人全員が無事に帰還できるよう、万全を期さねばならない。南北協力基金などを活用し、現地に進出している企業の損失を最小限に抑えることも重要だ。

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