北海道の増毛町。「ぞうもう」ではなく「ましけ」と読みます。どちらにせよ、お父さん世代には頼もしい名前のついた町に向かいました。
ここには日本最北の酒蔵「国稀酒造」があり、観光地としても人気があります。しかし、今回の舞台はその向かいで営業するラーメン屋さん。
なんと、酒粕を贅沢に使ったラーメンがあるそうなのです。さらに増毛町は毎年お祭りが開催されるほど「甘エビ」が有名な町でもあります。
増毛、日本酒、甘エビ、ラーメンとお父さんが大好きな単語が並ぶ町に潜入です!
晴れ渡る日本海がお出迎え
JRに揺られてガタンゴトン。水平線を眺めながら缶ビールをゴクリ。外は快晴で海がキラキラと輝いています。
増毛町は札幌市から電車でおよそ3時間となかなかの距離。人口も4700人ほどの小さな町です。正直、交通の便が良い場所ではありませんが、だからこそグルメ魂に火がつきます。
北海道の広さを改めて実感します。
留萌本線の最終駅なので、「よし、行くぞ!」と思わない限りなかなか辿り着けない増毛町。しかし、この絶景が日々の雑踏を忘れさせてくれます。
確認の意味もこめて。重い一眼レフカメラで無理矢理の自撮り。せっかくの増毛町ですから、願いを込めてシャッターをきります。
衝撃の光景です。
道路に「ホタテの貝殻」が落ちています。
例のセクシー水着を作っても一枚余ります。
こんなものが平気で落ちているところも北海道の魅力です。
長い道のりを経て目的地に到着!
ここが日本最北に位置する酒蔵「国稀酒造」です(参照:Wikipedia)。
北海道内にもファンが多く、増毛のみならず、札幌市や旭川市など北海道内あちこちの居酒屋で提供されています。
そして、こちらが今回の目的地。酒蔵の向かいで営業している「麺屋 田中商店」さんです!こちらも蔵のような作りですが、何か関係があるのでしょうか。
期待に胸が膨らみます。
昼下がりでちょうどお客様も落ち着いていたので、ご主人の田中さんに色々とお話を聞くことができました。最初に伺ったのはお向かいの「国稀酒造」との関係です。
──国稀直営とか、親戚とか、そういう感じですか?
「いいえ、もともとは全く関係ありません。」
見るからに美味しそうなラーメンを作りそうな店主の田中さん。もともとは隣町の留萌市の製麺会社で商品開発などを担当されていたそうです。
独立し、ラーメン店を始める前から「お土産用」として開発を進めていたのが、現在の名物・「酒蔵ラーメン」だそうです。
田中さんは「国稀酒造」の酒粕に惚れ込み、店舗を持たない頃から、ここの酒粕を使用していたそうです。「国稀酒造」もそんな田中さんを全面的にバックアップ。週末は店内に試食ブースを設けてくださったそうです。人気店になった今では、「国稀酒造」の正式なロゴも使用できる関係を築いています。
それでは「酒蔵ラーメン」をお願いします!
早速作っていただきました。こちらが酒蔵ラーメンの味噌味(770円)です。甘く、芳醇な香りを感じます。
田中さんは、鍋や豚汁に酒粕をいれると、味わいが深くなることから、秘めた魅力を感じたそうです。しかし、酒粕は入れすぎると、お酒の風味が強くなり、反対に少なすぎると、出汁に個性を消されてしまうという難点もあったそうです。絶妙の配合は門外不出、店主のみが知るブレンドです。
アルコールは完全に飛んでいるので、大人から子どもまで食べられます。甘酒や漬物にも酒粕を使いますが、それらとは全く違う、深い味わいです。
正直、酒粕と聞いてドキドキしていましたが、計算しつくされた味わいに脱帽です。
大吟醸の酒粕、純米酒の酒粕と、お酒の作り方が変わると、酒粕の風味にも変化が。どの酒粕を使うか、研究に研究を重ねたそうです。
芳醇でフルーティーさも感じさせる風味で、一口飲めば、次の一口が強烈に欲しくなる、そんな魔性のスープです。
人気の酒蔵ラーメンですが、実は最近、こっちのラーメンの方が出るんだよと田中さん。うわっ! どんぶりがそこにある時点で香ってきます。
エビですね!
甘海老ラーメン820円が登場です。何といってもここは増毛町。海の幸に恵まれた北海道においても、増毛の甘エビは「ブランド」です。
作り方は難しく、とにかく手間をかけてあげないと、生臭くなってしまい、エビの風味を抽出することはできないそうです。
エビラード、エビ出汁、エビパウダー。どれも時間をかけて作り、それを絶妙なブレンドで配合するそうです。
ズズズとすすれば、エビの風味があとから、あとから押し寄せます。
増毛町まで来て良かった!
「国稀酒造」の酒粕を使った酒蔵ラーメンに甘海老ラーメン。どちらもなかなか味わうことのできない個性的なラーメンです。ハマる人が続出する理由も頷けますね。
最後に田中さんがこっそり教えてくれました。
なんと、酒粕で作るスイーツも研究中だそうです。それ、絶対美味しいやつじゃないですか! 日本最北の酒蔵の向かい、田中商店の挑戦は続きます。
明日はどっちだ!
お店情報
麺屋 田中商店
住所:北海道増毛町稲葉町1丁目16-2
電話番号:0164-53-3680
営業時間:11:00〜18:00
定休日:火曜日
書いた人:
裸電球
北海道を拠点に食べ歩き。CATVでグルメ番組のレポーターを担当したことをきっかけに、ハシゴ酒が趣味となる。入りづらいお店に突撃するのが大好き。現在はフリーで、映像制作とライターの仕事をしている。
- Twitter:@hadaka_denkyu
- ブログ:「裸電球ぶら下げて」