たまには仕事の話をしようか。
みんなは「退職金」って知ってるかな。会社に長く勤めているともらえるお金のことだよ。その額はときとして数千万円にのぼる幻のビックマネーだ。
その一方で、僕たちが暮らすインターネットには、「会社を辞めると幸福になる」という標語がいたるところにある。この世界にいたら一度は目にしたことがある新興宗教の看板だ。
ネット宗教と退職金
勘の良いひとは、もう気がついたと思うけど、会社を辞めてしまうと、退職金がもらえないんだよ。もちろん、今の世の中は、昔みたいな終身雇用じゃないから、退職金すら盤石ではない。
だからと言って、退職金が無くなるのかと言えばそうじゃない。ちなみに公務員の退職金は2,000万円オーバーだよ。大卒の平均的な退職金も同じくらい。当たり前だけど、入社のハードルが高い企業になると、その額はさらに大きくなる。
ところが「会社を辞めると幸福になる教」に入信してしまうと、それは全部パーになる。お金が幸福の基準になるのかは、人それぞれだけど、数千万の退職金は、確実に失うことになる。
僕の見た退職金の現実
僕は正社員だから退職金はもらえるよ。だけど、35歳から勤めた小さい会社だから、60歳の定年まで働いたとしても、300万弱しかもらえない。
派遣社員はゼロらしいから、まだマシなんだと思わなきゃならないね。もちろん「会社を辞めると幸福になる教」の信者よりもね。
ところが、周りの話を聞いてがく然とすることがある。近所の会社に勤めている事務のおばちゃんなんだけど、来年、退職金1,000万円もらえるんだって…。
従業員200人くらいの会社だから、大きいと言えば大きいけど、特別すごくなんてない。やってる仕事だって単純な事務だよ。むしろ小さい会社の事務員さんの方が、よっぽど大変そうにみえる。
ただ、漫然と働いていた事務のおばちゃんが、1,000万円もらえる。それが退職金の圧倒的ポテンシャルなんだ。
安易に辞めるまえに
インターネットには「会社を辞めると幸福になる教」とか、社畜、ブラック、スキルアップ、なんて、会社を辞めたくなったとき、背中を押してくる甘い誘いで溢れている。
もちろん、本当に辞めた方がいい会社もあると思う。どんなに退職金が良くても、病気になってまで働くのは間違っていると思う。
だが、ちょっと待ってほしい。
もしも今、仕事がキツかったとしても、安易に辞めてしまうまえに、不確かな未来に舵をきるまえに、退職金を計算してみてはどうだろうか。
嘘だらけの世の中で、まとまったお金がはいってくる退職金は、一筋の希望になりはしないだろうか。
人が老いるのは、思ったよりずっと早い。