子宮頸がんワクチンの副反応に見舞われた少女たちの、今1/1

厚生労働省からワクチン副反応者を対象にした追跡調査の結果が報告されましたが、それは正しいものではありませんでした。子宮頸がんワクチンの副反応に見舞われた少女たちの声を交えてお伝えします。

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度重なる「摂取再開」の声を受けて、ワクチン接種の推奨を再開するかどうか判断するためにも厚生労働省がおこなった「子宮頸がんワクチンの副反応が出た、少女たち2584人への追跡調査」の発表。その内容実態とは異なっていたといいます。

全国で子宮頸がんワクチンの予防接種を受けた人数(約338万)のうち、けいれんなどの副反応の疑いがあるとして報告された数は2584人。内、現在も回復していない人は186人いることを15日、厚生労働省が発表しました。

子宮頸がんワクチンの副反応問題

2009年に子宮頸がんの原因となる「ヒトパピローマウイルス(HPV)」への感染を予防するワクチンが承認され、約338万人が接種。
内、10歳代の女性を中心に、ワクチン接種後から、けいれんや倦怠感、運動障害など体の異常を訴える人が出てきたため、厚労省では「ワクチンと副作用との因果関係が明らかになるまで、定期接種を積極的に勧めるべきでない」として、現在は任意になっている。

こうした接種中止の一方で、「ワクチンを摂取しないことで、将来の子宮頸がん発症率が高くなる」という懸念の声もあがっている。ワクチンを接種すべきかどうか、判断に迷う状況が2年以上も続いている。


厚労省が15日に発表した報告書によると、これまでに接種した人のうち、「副反応の疑いがある」と報告されたのは2584人となっています。

副反応の疑いがあった中で、1739人については発症日を特定。内、9割にのぼる1550人が、現在は通院しなくても良い状態まで回復しているといいます。今もなお、副反応の症状に苦しんでいる人は、186人との報告です。

未回復の186人のうち、最も多い症状は、頭痛66人、倦怠感58人、関節痛49人などで、中には自分の意思とは関係ない体の動きや、失神・意識レベルの低下などが見られる人もいて、月経不順や認知機能の低下を訴える人もいるとのことです。

こうした症状はひとつだけでなく、さまざまな症状を併発する人も多い傾向です。
186人のうち、入院していた人は87人、通学や通勤に支障をきたした人は135人、日常生活に介助を必要とした人は63人となっています(複数回答可)

副反応に苦しんでいる人たちは、今も薬物治療や認知行動療法などのリハビリを受けていますが、 「副作用の疑い」が報告された人たちのうち、病院が変わったり、転居などで経過が不明な人も845人おり、厚労省では引き続き追跡調査を進めています。

ワクチン副反応と闘う少女たち、その実態は発表された内容とは異なっている

厚生労働省から今回発表された「子宮頸がんワクチン副反応の追跡報告」と、「ワクチン副反応に苦しむ少女たちの実態」は、異なっているといいます。

現在大学一年生の酒井七海さんは、高校生のときに子宮頸がんワクチンを接種しました。
今も、右手・右足にしびれなどを感じ、自由に動かせない状態です。

追跡調査の後、厚生労働省から「現在も副反応が続いている」と発表された人数は、186人。

酒井さんは発表された186人に入っていませんでした。

酒井さんの父が、公表された資料を調べてみると、酒井さんは『既に回復した』ことになっていたといいます。治療も続けていたので、こういうことはあり得ないとビックリされたようです。

なぜ、「回復している」とされていたのか?

酒井さんはワクチン接種の翌日に突然湿疹が出て、40度近い高熱に襲われたため、病院を受診しました。このときに医師が作成した報告書にはこう記されています。

「症状は一日で治まり、回復」

ですが、実際には治まっておらず、彼女はその後、手足が痺れるなどの症状が現れたため、その都度、症状に応じた医療機関を受診しています。しかし、どの医師も新たな報告をあげませんでした。

その理由は、ワクチンの副反応報告用紙にあげられている『主な副反応例』に、酒井さんの訴えた症状がいずれも該当していなかったことがあります。

厚生労働省の発表と異なる人数

厚生労働省のワクチン副反応の追跡調査を受けて、全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会が、会員メンバーにおこなった「副反応に対するアンケート結果」は、厚生労働省のものとは異なっていました。

現在も症状が続いていると回答したのが、219人だったのです。

会員メンバーのみでこの数値であることから、いわいる『調査漏れ』の人たちは少なくないと推測されます。

これに対し、厚生労働省は「対象者すべてを調べることができなかった」と認めています。
酒井さんの例であった「7日以内に回復」とされていた1297人に対しては、追跡の必要はないと判断され、調査がおこなわれていなかったようです。

酒井さんは話します。

ワクチンが危険だって言いたいんじゃなくて、私たちの声、全部を含めて「こういうことが起こるかもしれません。それでも、やっぱりワクチンで防ぐ方がいいのかどうか」というのを、個人が判断できるだけの材料を国はまだまだ公表していないと思います。

副反応に対する問題が、何年も続く事態になってしまった理由は二つ考えられれる

ひとつは「報告体制が、医師の判断に委ねられている」ということ。多彩な症状が出ていれば、医師も判断が難しい場合があります。

もうひとつは、「データの収集体制が整っていない」ということです。

「誰が、どこで、ワクチンの接種を受けた」というデータは、予防接種対象として、市町村単位で管理されていますが、国レベルのデータベースとして管理ができていないのが現状です。また、引っ越しなどの理由で、消息が掴めなくなってしまうのも避けられません。

厚生労働省は、調査不十分だったとして、新たな調査を2016年秋頃から開始する構えを見せています。

その調査は、「ワクチンを接種したグループ」と、「接種していないグループ」とを分け、副反応を訴える人たちにどのくらい違いがでるかを調べる調査となる予定です。

アメリカにおける、ワクチンの副反応に対する仕組み

アメリカのジョージア州、アトランタにある疾病対策センター(CDC)では、新たなワクチンは、道の副反応を起こしうることを前提に、対処する仕組みを整えています。

報告には医師を介さなければいけない日本とは違い、メールやFAXなどで、個人が国に直接報告できるようになっています。また、IDを駆使して、引っ越しなどの問題にも対応します。

疾病対策センター・予防接種安全室のトム・シマブクロ次長は、副作用をより正確に把握するためにしっかりと追跡することがとても重要なのだと話します。

アメリカには9つの医療法人が連携、940万人分の電子カルテからなるデータベースが構築されています。そこでは疾患や予防接種の記録が閲覧できます。
報告により、想定外の副作用が疑われる場合。この膨大なデータベ−スを活用し、ワクチンの接種と非接種群とを比べ、副反応の発症率を最短で導きだします。

つまり、いつでもワクチンの副反応を調べる疫学調査ができる体制が整っているというわけです。

過去には、ロタシールドというワクチンが、腸の疾患である腸重積症の発症率をあげるとして、接種開始から4ヶ月で使用中止となった例もあります。
日本でも、見習うべき点は充分にあると考えられますが、体制強化はまだこれからなのでしょう。

アメリカの疾病対策センターの強み

・個人から副反応の報告ができ、迅速な察知ができる。
・いくつかの医療法人が連携。 ワクチンとの因果関係の科学的な分析ができるデータベースが構築されている。

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