[PR]

■経済学者・松井彰彦さん

 メンバー5人の生放送番組での「謝罪」によって、SMAPの解散が回避された。TVでの街頭インタビューは「解散しなくてよかった」とのコメントで埋め尽くされた。菅義偉官房長官も記者会見で「メンバーの皆さんが一堂に会して解散しないことを表明したということで、本当によかったのではないか」と述べた。同じころネットでは、同じ「謝罪」場面を「公開処刑」と評する書き込みや、独立を阻止する事務所の行動を批判する声が目立った。一連の騒動を、共同体と市場のせめぎ合いの問題として読み解いてみたい。

 日本ではタレントは多くの場合、特定の事務所に所属し、芸能活動を展開する。芸能界は厳しい。あるお笑い芸人の話によると、3千人くらい活動中のお笑い芸人がいるとして、自活できるのは200~300人だという。いわゆるタレントと呼ばれる人たちも大同小異であろう。稼げるタレントが所属事務所にお金を落とし、稼げないタレントの食い扶持(ぶち)を賄う。このようなしくみを所属型システムと呼ぼう。

 稼げるタレントに独立されてしまっては、事務所の存続、ひいては所属型システムが根底から揺らいでしまう。そこで、意図的か自然発生的かはともかく成立しているのが、「事務所から独立した芸能人は干される」という慣行である。

 この慣行は比較的閉鎖的ないし組織化された共同体では存続しやすい。閉鎖的な共同体で「裏切り」行為をした個人は、裏切った相手だけでなく、共同体全体から「村八分」にされる。それによって「裏切り」行為を抑止する。