生活には功罪両面あるだろうが言葉の印象からマイナス面が大きそう−。日銀が始めたマイナス金利政策に国民の多くが不安を感じている。日銀は独善的にならずに、もっと国民生活に目を向けよ。
日銀の黒田東彦総裁は、たとえ話が巧(うま)い。むずかしい金融政策だから、わかりやすく説明しようと努力しているのだろう。「デフレという慢性疾患を完全に克服するためには薬は最後まで飲みきる必要がある」というのも、その一つ。一年ほど前の講演で、長期に及んだデフレから脱却するには追加の金融緩和が欠かせないことに理解を求めたものだ。
ではマイナス金利についてはどうか。中身がわかりにくく、何より経済取引の常識を覆す政策である。漠然とした不安を抱く国民が多いのは各種の世論調査で明らかになっている。日銀はホームページにQ&Aも載せてはいるが、それでいいはずはない。
国会で黒田総裁は「預金金利がマイナスになることはおそらくない」と答弁した。確かに銀行同士の競争があるから表立ってマイナスにはしないかもしれない。しかし、振り込みなどの手数料引き上げや口座維持費の新設といった預金者への負担転嫁があれば、すずめの涙ほどの利息をすぐに上回り、事実上のマイナス金利だ。
低金利で運用難から生命保険料の引き上げもあり得る。預貯金や年金に頼る高齢者をはじめ国民への影響は幅広い。総裁はもっと真摯(しんし)に説明すべきではないか。
住宅ローンなどの貸出金利が下がったことはプラスだが、目先の動きだけで判断すべきでない。マイナス金利を導入している海外では逆に住宅ローン金利を引き上げた金融機関もある。
マイナス金利は、金融機関の利ざやを縮小させ、経営を圧迫する政策である。米格付け会社によれば、初年度に邦銀は本業のもうけが大手銀で約8%、地方銀は約16%も押し下げられるという。その結果、懸念されるのは、貸し倒れを恐れて中小・零細企業への貸し渋りが起こるなど最初に弱者へしわ寄せが及ぶことである。
異次元緩和という「薬」は、量も種類も増えるばかりだ。もうじき三年になるが一体、いつまで飲み続けるのか。副作用で倒れる前に処方箋を変えるべきである。
金融政策だけで物価を上げようというのがそもそもの間違いだ。賃金増や消費拡大を伴う正しい物価上昇を目指し、中間層を重視した政策に転換する必要がある。
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