福岡県築上郡上毛町下唐原の大池西古墳(6世紀後半~7世紀)から昨年出土したガラス玉のうちの1個が、メソポタミア(現在のイラクなど)地域産のガラスを使った可能性が高いことが分かった。ガラス玉は古代の装飾品として全国で多数出土しているが、ガラスの国産が始まる7世紀後半以前の遺跡から出土した外来産ガラスに関する調査・研究は、近年始まったばかり。現段階で意義付けは難しいが、町民らは「そんな遠くから渡来したとは」と古代ロマンに思いをはせている。
【写真】メソポタミアのガラス玉が見つかった古墳の石室
大池西古墳は、町営大池公園のため池西岸にある円墳。ガラス玉は昨年4月、町教委の発掘調査で、他のガラス玉など装飾品36点、馬具2点などとともに石室内で見つかった。中心が膨らんだ円筒形のガラス玉は、長さ5ミリ、直径4ミリ。中心に1ミリ径の穴が開いている。「全国でも200点ほどしかない、2枚貼り合わせの“重層ガラス”だった」(町教委)ため、奈良女子大古代学学術研究センター(奈良市)の大賀克彦特任講師に調査を依頼した。
大賀特任講師によると古代のガラス玉は、原料(二酸化ケイ素)に含まれる不純物や、原料の融点を下げるために混ぜる融剤の成分で、(1)南アジア系(2)メソポタミア系(3)地中海(ローマ帝国)系-に分類可能。今回のガラス玉は、融剤のナトリウムを得る材料に植物灰を使用したメソポタミア系と昨年秋、判明した。大賀特任講師は「調査が進んでいないだけで、大陸への窓口だった北部九州には多いと予想される」と話す。
町教委は「同時発掘の他のガラス玉には、南インド産もあった。町には他に首長クラスの古墳もあり、かなりの有力者の拠点だったことを補強する成果」としている。古代ガラスをめぐっては2012年、京都府の古墳(5世紀前半)から出土した重層ガラス玉が、ローマ帝国製と判明し話題になった。
=2016/02/17付 西日本新聞朝刊=
西日本新聞社
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