どう転んでも、一般論は書きようがないけれど、そこをあえて考えてみましょう。
前提
まずは、かねがね書いてるように、子ども自身を知ることからです。
該当する発達障害の簡単な入門書を何冊か読んで、その内容に当てはまる部分も当てはまらない部分もある、その子自身の特性の凸凹を知ることがスタートライン。
診断したお医者さんや、検査をした心理士さんなどと話しながらできるのが望ましいです。
いろんな事情で、診断したお医者さんや検査をした心理士さんとは直接相談がなかなかできないこともありますが、その場合は検査結果をもとに別の人に相談するのもありでしょう。
診断した人、検査をした人本人じゃないと見えにくい部分はどうしてもあるけれど、まずは誰かに聞けること。いざとなればネットも活用して。
こうやって、子どもの理解を深めてくのは年単位で時間がかかるので、同時並行で療育をスタートしていきます。
そのために、診断に至ったきっかけ、現在の子どもの日常生活での困りごとを洗い出していくことを。幼稚園・保育園・小学校などに通っているなら、そこでの客観的な状況をまず把握していけるとよいでしょう。
まどろっこしいようですが、この前提の部分なしで、ただ「療育を受けさせなくちゃ」というのは難しいです。
というのは、子どもの状態と、今の課題、療育の狙いが見えないと、どんな療育が受けられるといいかを考えることができないので。
どんな療育があるか
a. 公設の療育センター(児童発達支援センター)での通園療育
b. より小規模な児童デイ(児童発達支援事業所)での通園療育
これらは未就学児対象で、地域にもよりますが知的な遅れ(2〜3歳で未発語、あるいは言葉の遅れが目立つ)がある場合が主な対象かと思います。
また、
c. 児童発達支援事業所での個別療育
も都市部ではあるかもしれませんが、多分一杯でキャンセル待ちです。
就学後は児童発達支援が使えなくなり、
d. 放課後等デイサービス
が使えるようになりますが、ただの学童保育のようなところもありますので、中身の吟味が必要です。
「とりあえず療育を」「とりあえず放課後デイに」と焦って、何をやってるか意味のわからないところに入れてしまうのは避けたいところ。そのために子どもの理解と課題の整理が必要です。
このa〜dは「障害児通所サービス」として事業所登録してるので、自治体のHPにリストがあったりします。
これ以外には、医療機関で作業療法士(OT)さんや、言語聴覚士(ST)さんの個別療育が受けられることが、ごく稀にあります。
発達障害の支援を専門的にやっている病院で先生に診てもらって、その先生の指示があって院内で受けるようなものです。
さらに稀に、医療機関で小学生以上のデイサービスをやっているような事例も聞いたことがあります。
どちらにせよ、発達障害の主治医の先生探しとセットということになります。
専門医の先生を探すには、児童青年精神医学会の認定医リストや、小児神経科学会のリストを手掛かりに*1。
教育関係のサービスとしては通級指導教室や特別支援教室、教育委員会の巡回相談員さんあたりが可能性がありますが、この辺は
i. 学校を通して申し込み
ii. 直接、通級指導教室などに申し込み
iii. 教育委員会やその相談センターを通して申し込み
など様々。i.がダメでもHPなどを探して、ii.やiii.もトライしてみる価値はあります。
これ以外は…公的補助も効かない、医療機関でもない、教育関係でもない、個別のセラピスト派遣、なんてのも都市部ではありますが、補助が効かない分、比較的高額で、お金持ちの人向けです。
で、高いのでありがたみがありそうですが、高いからといっていい先生とは限りません。見る目が必要。
おおまかな目安
こんな風に、いろいろなところで療育的なサービスを受けられる可能性がありますが、何が子どもに必要かは、子どもによって変わります。
就学前、2〜4歳ぐらいで言葉の発達の遅れや自閉症特性が見られる場合には、まずは自治体の1歳6ヶ月児健診や3歳時健診を糸口に、児童発達支援センターや児童発達支援事業所への通所ができるか検討していきます。
幼稚園や保育園にすでに通っている場合は、時々検査や相談だけは専門機関でして、そこが所属園と連携をとるような形もありますし、あるいは児童発達支援に並行して通う、というやりかたもあります。
言語理解や集団行動への適応、お友達とのやりとりが苦手なことの底上げが目標になることが多いでしょう。
地域にもよりますが、「就学前にしか使えない相談機関」が珍しくないことと、上記のa.b.c.の「児童発達支援」の通所定員が一杯・長大なキャンセル待ちになってしまうことがあるため、発達の心配があるときには、いきなり通所するかどうかは決めなくとも、専門職・専門機関への相談だけでも早めにスタートすることがオススメです。
最初の一歩としては自治体の1歳6ヶ月児健診や3歳時健診の時が、小児科医師や保健師さん(+いれば、心理士さん)の意見を「予約せずに」聞ける数少ないチャンスです。
これを過ぎても電話で申し込めばたぶんいつでも相談を申しこめたりしますし、保健師さんに聞きそびれたり/何も言われなかったとしても、直接専門機関に相談の申し込みをすることもたぶんできたりします。
小学校以上は特別支援学級や通級指導などを使うかどうか+放課後等デイサービスを使うかどうかが主な検討ポイントになります。
知的発達がゆっくり、あるいは発達障害特性が強くて普通級で過ごすことの困難さが強い場合には、特別支援学級を検討。勉強は本人がつまづいているところまで戻って、本人が自信を積んでいけるように。
ただし、読み書き障害などの学習障害の場合には普通級(+利用できるなら通級指導)で合理的配慮を受けながら通える方が良いことも多いし、
軽いADHD傾向やASD傾向についても、同様に、普通級(+利用できるなら通級指導)が良いことも多い。
「診断=特別支援学級」ではありません
放課後等デイサービスは内容がピンキリなのでなんとも言えません。子どもの課題の部分とマッチしたことをやってるところがたまたまあれば…というぐらいに私は感じます。「なんでもいいから療育を受けさせなくちゃ!」という焦りだけで通わせるのは難しい面があります。
児童発達支援とくらべて、訳のわからないところが比率として高いので、よくよく見て選ばないと。
今の日本での「療育」について
ざざざーっと見ると、こんな感じです。
ちゃんとやってる人はすごくやってそうに見えるかもしれませんが、日本で受けられる「療育」ってこんなものじゃないでしょうか。
アメリカのように毎年個別支援計画を作るためにいろんな専門職が携わる、みたいなのと比べると、あまりにも限られている。
日本でも障害児相談支援を事業所に依頼してそこがサービス担当者会議を開催してくれればちょっと似たことはできるけど、そこに入ってくる専門職の顔ぶれも違うし、学校での個別支援計画とは無関係なものだし。
全然発展途上。WISCなどの知能検査をまともに受けることすら難しかったりする。
そんなこんなで、結局、多くの場合、「家での、子育ての中での、療育的なかかわり」がどうしても比重が高くなってしまいます。制度も事業所も専門職の育成も、どれもこれも整っていないので。ほんとに、怒っていいぐらい整っていない。
しかし、家でやらなくちゃいけない、「専門的な療育を受けられない」ということをそんなに悲観しないでも欲しいのです。
比較的恵まれた地域でも、専門的な療育を続けて受けることは困難で、かつ時間も限られています。
親御さんが療育の舵取りをすること
親御さんが子どもの理解を深めていって、本やネットから知識を得れば、そこらへんのヘンな専門職やヘンな学校の先生よりもずっと子どもの成長を引き出せることが決して珍しくないからです。そして、続ければ続けるほど、子どもの理解が深まるので、「療育任せ」にする場合とは大違いになってきます。
そうして子ども本人の理解を深めていくことは、本人への告知や、あるいは本人の進路を一緒に考えていくことにもつながってきます。
この辺は、なかなか他の人にしてもらうのは難しいところです。いや、もちろん他の人の手も借りられるだけ存分に借りてもらうとして、必ず親御さんの仕事が残る所。
ということで、「発達障害と診断されたらどんな療育を受けるといいか?」への短い答えは、
「どんな療育を受けるといいかを親御さん自身が考えられるようになることが大事」ということ。
具体化すると、「それを親御さんにも教えていってくれる所に通えると良いでしょう」ということ。
わかるようになるためには、自分で調べられることを調べて、問題意識・疑問点を持ち、それを聞ける時に聞いていく、というのが大事です。
残念ながら、説明が苦手で聞かれなかったら説明をあまりしない専門職もいますし、何も聞かなかったらまだ消化中と思われることもあります。
相談自体にせよ、その相談の中でにせよ、親御さんが一歩を踏み出すこと、「これを聞こう」と思うことが、とても大事なステップです。
受け身なだけでは、なかなか進まないかもしれません。
なんにせよ、子どもが一人一人みんな違い、私たちもみんな違うように、地域で受けられるものもそうじゃないものもみんな違います。
いろんな経緯で療育を考えるスタートラインやうけられる療育の違いがあったりするけども、いつからでも、遅すぎることはありません。
以上、ざっとした全体の見通しとして。
*1:リストに載っている先生がみんな素晴らしい先生とも限りませんし、リストに載っていない素晴らしい先生もいらっしゃいます。私が一番信頼している児童精神科の先生は認定医までは取っていません