(英エコノミスト誌 2016年2月13日号)
欧州各国の銀行は、金融界で発生した新たな嵐の真っただ中にいる。
2016年の幕開けを世界各国の株式市場にとって絶望的だったとすれば、銀行株はまさに大惨事と言うべき状況だ。金融株の株価は年初から米国で19%下落している。他の国の落ち込みはさらに激しい。日本の銀行株は年初から36%と急落した。イタリアの銀行株は31%マイナスとなり、ギリシャの銀行株に至っては60%という恐るべき下落を見せている。
欧州全体の銀行株指数は24%のマイナスとなり、2012年夏の急落時に記録した最低値に迫りつつある。
2012年当時は欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁がユーロを救うために「必要なあらゆる措置」を取ると言明するまで、ユーロ圏が崩壊の瀬戸際に立たされているように見えた。
脆さが露呈した欧州の銀行
欧州での株安は、中小の銀行だけでなく、大手銀行をも巻き込んでいる。影響を受けている銀行の中には、ソシエテ・ジェネラルやドイツ銀行のようなユーロ圏内のメガバンクも含まれる。両行の株価はともに、2月の第2週に数時間で10%下落する場面があった。また、バークレイズ(英国)やクレディ・スイス(スイス)など、ユーロ圏外の大手銀行も株価が落ち込んでいる。
欧州各国の銀行については、ここ数年で資本増強と規制の厳格化という2つの施策を通じた体質強化が図られており、それだけに今になってこれほどの脆弱さを露呈していることは、残念と言うほかない。
ユーロ圏の銀行は世界金融危機が始まった2007年からECBが銀行監督を統括するようになった2014年にかけて、2500億ユーロ以上の新株発行を実施している。ECBは銀行監督業務の開始に先立ち、ユーロ圏の130の有力銀行について財務状況をチェックしたが、この時点で判明した資本不足はごくわずかなものにとどまっていた。