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本当の豊かな生活は自分の「寛大さ」でつくられる
成功する一番の方法は最初に誰かを助けることだ、と言われています。友達の頼みを聞いてあげたり、経済的に苦しい人の勘定を払ってあげたり、人にしてあげることは些細なことで構いません。そういうことでも恩返しをされることがよくあります。そのような懐の深さや寛大さが成功につながります。
(この記事はラミット・セティのブログ「I Will Teach You to Be Rich」に最初に投稿されたものです)
寛大と言えば、私は「The New Yorker」に載っていた、ホテル経営者のスティーブ・ウィンの話が大好きです。
ウィンは、自身が購入した1億3900万ドル(約159億円)のピカソの絵画を売ることを決めていました。(当時の金額で美術品に付けられた最高額でした)その週末、ウィンは友達を招いてピカソの絵を披露しました。絵のそばに立って説明をしていたところ、思いもよらないことが起こりました。
ウィンは、網膜色素変性という周辺視野に影響のある目の病気を患っており、時々近くにある物の距離感がわからなくなることがあり、そのせいで絵があることに気付かず、話しながら1~2歩後ろに下がったのです。ウィンは言いました。「それから、ジェスチャーで右手を上げたときに、右肘が絵に直撃したんです」。はっきりと何かが破れる音がしました。ウィンは振り返り、絵の右下を見ました。「5センチほどの小さな亀裂がありました。その場にいる全員が凍りついていました。"こんなことをするなんて信じられないよ、まったく。何だよ。"と言いました」
ウィンは再び振り返ると、絵にあいた穴に小指を突っ込み、カンバスが戻るのを確認しました。
そしてゲストにこう言ったのです。「しかし、これをやったのが自分でよかったよ」
これは、今まで私が聞いた言葉の中で、もっとも印象的に残る優しい言葉です。ののしるのでも、怒り狂うのでもなく、ただ「これをやったのが自分でよかった」と言ったのです。つまり、穴を開けたのがほかの人ではなく、少なくともこの絵を買える(弁償できる)自分でよかったということです。
私の思う「豊かな生活」というのは、高価な洋服を着たり、豪勢なマンションに住んだりすることではありません。時間とお金に余裕があるということだと思います。小さな手助けが、時には1万ドルのお金に勝ることもあります。
スティーブ・ウィンの言葉は、寛大であるということに関して多くのことを教えてくれました。若かりし頃、私はまったく寛大ではありませんでした。私は"自分の分を負担する"ことについては考えていましたが、そのことで今の自分が一番大事にしている寛大さが身についたわけではありません。
ある小さな出来事が、寛大になるということについて教えてくれました。私が学生だったとき、ビジネスマンやCEOにお願いして、昼食をとりながら話す機会をもらいました。そして、そういうときは社会人が必ず支払いをしました。必ず。こちらがお願いして呼んでいるにも関わらず、学生の分も払ってくれました。私はそのことを決して忘れません。今、私が若い学生と会うときは、必ず支払いをするようにしています。
昔、困っていた仕事のスタッフを助けたときに、その人から簡単な手書きのカードをもらったことがあります。私はいつもそのことを思い出します。また、ニューヨークで職探しをしている人を手伝って、数カ月後に仕事を探してあげたこともあります。その相手がまたメールをしてきて、別のことを頼んできたとき、私はそれを無視しました。
私は人に小さなプレゼントを贈って、反応を見るのが好きです。Amazonで見つけた本や、地下鉄で見かけた面白い落書きを撮った写真のこともあります。そのような小さなプレゼントを贈ると、相手はあなたが自分のことを考えてくれているのだとわかります。
皮肉なことに、私は寛大になるにつれて、さらに成功するようになりました。これは人との関係にも表れており、誰かを助けると、その人がまた誰かを紹介してくれたり、突然国民的なテレビ番組に呼ばれたりすることもありました。
またあるときは、寛大さのおかげで思わぬことが起こりました。数年前、友達とクラブに行ったときに私の1000ドル(約12万円)のジャケットが失くなりました。友達はジャケットを探すのを手伝ってくれましたが、私たちのテーブルの周りにはないとわかってがっかりしました。
肩をすくめながら「ほかの誰かじゃなくて自分のジャケットでまだよかったよ」と言ったら、友達はそれを信じず「嫌な気分にならないの?」と聞かれました。もちろん嫌な気分にはなりました。しかし、私は新しいジャケットを買えます。数年前に、本当に経済的に困っていたおかげで、こういうときも冷静でいられたことに感謝しています。
今では、特に理由がなくても友達にプレゼントを贈ったりもします。食事の支払いをするのも大好きです。お金に余裕ができる前からやっていたので、今でもそれを続けています。
自分が気前良く寛大になれる方法を考えてみてください。必ずしもお金をかける必要はありません。
通りを歩いていて、何か友達を思い出させるようなものがあったとします。それを写真に撮って「君みたいじゃない?」とメッセージと一緒に送りましょう。お母さんの好きな本を見つけたら、その表紙の裏に「いつもありがとう」とメッセージを書いてお母さんに送りましょう。受け取ったら、きっと喜んでくれます。
一度、正しい靴ひもの結び方がわからなくなったことがあって、父に聞きました。すると、父は爆笑しながら手本を見せてくれました。次に靴ひもを結んだとき、写真を撮って、父に「ありがとう」と送りました。自分の息子にそんなことをされたら、どんな気持ちになるか想像してみてください。
また、人とのつながりでも寛大さを感じることはあります。友達のニックが、彼の家でやる面白い人が集まるイベントに招待してくれたことがあります。別の友達は、ニューヨーク・タイムズ紙で記事を書くときにコツを教えてくれました。できるだけたくさんの友達とつながり、愛情を分かち合いましょう。
お金は、豊かな生活のほんの一部でしかないと、何度も言ってきました。本当に心からそう思います。どうすれば出世できるのか、どうすればビジネスの収益を最大にできるのか、そんなことばかり考えてほしくないのです。
私は、成功や達成のことしか考えていない人間から、本当に価値があると思うものの別の側面について考える人間になりました。そして、寛大さは自分で自分を誇りに思うものの1つです。
あなたに何かを売りつけようと思っていません。行動を起こしてもらおうとも思っていません。ただ、自分の友達が自分に対してどういう風に言うかを考えてほしいのです。「寛大だ」「懐が深い」「気前が良い」そんな言葉が、あなたを表する言葉の上位に入るでしょうか? 入ってほしいと思いますか?
そのことを考えてみてください。
Most generous thing I've heard in a long time|I Will Teach You to Be Rich
Ramit Sethi(原文/訳:的野裕子)
Photo by PIXTA.
- 豊かな心で豊かな暮らし
- 小林正観廣済堂出版